今週は・・・日本で最も長い歴史をほこる動物園、上野動物園の園長さんの情熱物語。
5月5日こどもの日。台東区の小学生およそ80人が上野動物園を訪れました。先週、天に召されたジャイアントパンダリンリンとのお別れ会がひらかれたのです。
1992年に、北京からやって来たリンリン。動物園の園長をつとめる小宮輝之さんは人気者の死を特別な気持ちで迎えました。
22歳というとかなりの高齢ですし、8月くらいから元気がなかったので覚悟はできていました。死に顔をみたら、安らかに仰向けになって寝ていました。プールの水が抜いてあるところがあるんですけどそこが好きだったんで、ハンモックに寄っかかって寝ていたんで、苦しんでなかったのでホッとしました。展示場が彼の一番好きな場所だし。
小宮さんは まるで昔からの親友のことを語るように、少し寂しそうにリンリンについて 教えてくださいました。リンリンは 上野動物園にとって 8頭目のパンダ。1972年にやって来たカンカン、ランランに続いて1980年代に来日したフェイフェイとホアンホアンはチュチュ、トントン、そしてユウユウ、、、3頭のパンダを産みました。このユウユウと交換されたのが、北京動物園にいた リンリンでした。リンリンには、トントンとのペアで 繁殖が期待されていました。
フェイフェイとホアンホアンは繁殖に成功したでしょ。トントンも何回か巣にこもって 子供を産むんじゃないかと何度か泊まり込んだんですが、結局繁殖にいたらなかったのは孫をとれなかったのは、残念でしたね。 繁殖する個体は限られているみたいですね。あの当時、いろんな国にパンダが配られましたが、増えたのは日本とメキシコとスペインだけでしたし。今でもだから、このときにおっぱいがとれて、それを森永に渡してパンダミルクを作ったんですよ。今、中国のパンダセンターでたくさんパンダが繁殖できているのはこのミルクの力もあると思います。
乳製品メーカーと協力して、ホアンホアンの母乳から、パンダ用のミルクを開発。実はこのことが、世界のパンダの繁殖に 大きな手助けとなっていたのです。そしてこのミルクは、小宮さんがそれまでにつちかってきた経験によって生まれたものだったのです。 現在、上野動物園の園長をつとめる小宮輝之さん。そもそも、動物園の仕事を始められたのは、パンダが初めて日本にやってきた1972年のことでした。「飼育係」として最初に入ったのは、多摩動物公園。日本の動物・・・ヤギ、シカ、イノシシ、ロバ、キツネ、クマなどを担当されました。そして、この時期に小宮さんが作ったのが、「クマ・ビスケット」。
それまでは芋をにて、そこにふすまをかけるというものだったんですね。でも、これも人工飼料なんですよね。野生のクマはドングリとか、、、いろんなものを食べてますでしょ。それを芋のでんぷんだけにしちゃうっていうのは、人工飼料ですからね。だから30種類くらいいろんなものを混ぜて作りました。今はこのクマ・ビスケットを全国で使っています。
20代の若い飼育員がメーカーとともに試行錯誤の末に作ったクマ・ビスケット。このときの経験が のちに パンダのためのミルクの開発に、さらに、トキの人工飼料の開発にもつながりました。そして、こうしたエサによって動物たちの繁殖率も格段に上がったのです。 小宮さんが これまで一貫して大事にしてきたのは、フィールドに出ること。自然をじっと見つめることにこそヒントがあると言います。
新しいクマ舎を造ったんですが、テーマは冬眠なんですよ。冬眠のクマを展示するのは世界初です。僕もしょっちゅう富士山行ったり、フィールドが大好きで動物を見てるんですけど、、、クマ舎を造るには、日本の自然を見ようと。 クマが冬になると冬眠することはみんな知ってるのに、なんで、動物園では冬でもクマを起こしてるのかな、と。だから0度くらいまで下がる冬眠穴を造ったり。 それから、自然のなかでは、美味しい木があるところにはいろんな動物がくるでしょ。だから、今度のクマ舎では、クマといっしょにほかの動物も飼おうと。だから、タヌキとクマがいっしょで、ヒグマとキツネがいっしょで。マレーグマとカワウソとハクビシンが一緒にいるんです。
クマが寝床に入る「夜」には、大きなスペースをタヌキに開放して自由に動けるようにする。逆に「昼間」は、タヌキは安全地帯で暮らす。これによって、あたりにタヌキのにおいがついてクマは昼間元気に動き回ります。より自然に近い形で暮らせるのです。そして、活発な動物を見れば、動物園を訪れる子供たちも大きな声をあげます。
かわいいとかきれいだとか感動してほしいのはもちろんですがそれぞれいろんな意味があっていろんな動物がいる、ということに気がついてほしいです。時間を決めて動物がよく動く時間をつくったり。タヌキとクマがいてなぜ大丈夫なのかなとか。我々もみなさんに説明していかなきゃいけないし、と思っています。
中高生のころ、月に一度は上野動物園に通っていたという小宮輝之さん。動物園を誰よりも愛する園長さんのもと、500種類以上の動物が 毎日人々を迎えています。