2008/11/28 「野菜ソムリエ」の誕生秘話

今週は・・・今や、広く知られる存在となりました、「野菜ソムリエ」の誕生秘話。「野菜ソムリエ」、、、そもそもの発端は、1990年代後半、商社の食品部門に勤務していた ひとりの男性に宿った ひとつの想いでした。その男性とは、現在、日本ベジタブル&フルーツマイスター協会の理事長をつとめる福井栄治さん。忙しく働く日々の中、福井さんはこんなことを考えていたのです。

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当時僕は有機食品、今でいうオーガニックの食品を担当していまして、仕事柄、いろんなスーパーや食品メーカーに対して、オーガニックというのはどんなものなのか、というのをプレゼンテーションしていたんです。当時、有機農産物というのは単に並べれば売れるものではないじゃないですか。このにんじんはこういう風に作られていて、こうして食べるとおいしいですよ、と伝えないと売れないんですよ。なのに、僕がプロだと思っていた人は、そういう知識も情報も持っていない。じゃあ、物事の価値を伝えるにはどういう仕組みを作ればいいだろう、と思ったのが野菜ソムリエの発端なんですよね。

当時、「食に関する資格」というべきものは 国内にはほとんど見当たりませんでした。では、海外にはないだろうか?もしどこかの国にあるのなら その日本支部を作ればいい。。。しかし、福井さんがイメージしたようなものは見つかりません。これまでにないモノをゼロから作りあげる。熱いディスカッションが始まりました。

僕らが当時議論していたのは、今理想の人っていないよねと。例えば、青果会社の人は産地情報は持っているけど、栄養情報は持ってない。スーパーのバイヤーさんは商品の価格変動は知っているけど、調理したことがないねと。だったら、生活者の視点で見たときに、本当に生活者が欲している情報を伝えることができるんだろうか?また、知っていることと伝えることには大きな差がありますよね。

野菜について、「人々が必要な情報を、分かりやすく伝える」、、、そんな仕組みを作りたい。構想は固まりつつありました。中心においたのは、「食品メーカー」でも「生産者」でもなく、「生活者の視点」。野菜ソムリエ誕生の日は、すぐそこまで来ていました。

2001年の8月、日本ベジタブル&フルーツマイスター協会が設立されました。「野菜ソムリエ」、、、初めて世に出たこの資格、、、理事長の福井栄治さんが予想していたのとはまったく違う反応が返ってきました。

当初の想定とやってみたら全然違っていたんですよ。何が違ったかというと、当時の僕たちの仮説では、この資格は食べ手の生活者というよりは、産業界の人たち、生産者なのか、仲卸さんなのか、食品メーカーなのか、分からないけれど、売り手の人が受けるんでしょと。売り手の人に対して、生活者の人が知りたい情報を整理してあげて、それを伝える仕組みを作りましょうと、思っていたんですよ。でもふたをあけてみたら、9割がOLさんとか主婦の方とか、業界外の人だったんですよ。

受講者の9割が、食を仕事にしていない人。この状況を受けて、当初は ひとつしかなかった資格を細分化。一般の生活者として 日常生活で野菜やフルーツを楽しむことをゴールとする「ジュニアマイスター」。人へ伝えることを目標とする「マイスター」。さらに、社会で活躍できる「シニアマイスター」。この3つのコースができました。広く門を開き、多くの人に資格をとってほしい。そこには、理事長、福井栄治さんの 食に対する想いが込められています。

ベジフル協会というのは、8割が運動体なんですよ。僕はなんでそもそも商社をやめてこんな活動をやっているかというと、理想の社会を築くためなんですね。僕の理想の社会というのはふたつあって、ひとつは農業を次の世代に引き継いでいける社会。もうひとつは、食を日常的に楽しめる社会。残念ながら今の日本はこのふたつからどんどん離れていますが。この社会を作るために僕はこの組織を作っているつもりなんですよ。

農業を次の世代に継承し、食を日常的楽しめる社会、、、そんな 当然のことのように思えることを しっかり実現できるかどうか。野菜ソムリエの役割は今後 ますます大きくなっていくのかもしれません。

コミュニティーって言って卒業生の会が全国にあるんですよ。修了生の方にいろんな働きかけをするんですよ。それはね、どんな人でもひとりが1万歩動いても社会は変わらないです。でも、1万人がその人の考えで一歩を踏み出せば社会は変わるんですよ。

日本ベジタブル&フルーツマイスター協会の設立から7年、、、「野菜ソムリエ」の資格をとった人の数は2万人に到達しようとしています。