2009/1/2 「サッカー日本代表ユニフォーム」のHidden Story

今週は、今年が勝負の年! ワールドカップ出場へ アジア最終予選を戦うサッカー日本代表。 そのユニフォームのHidden Story。

澄み切った空を表す やや薄いブルーを基調にしたホーム用。
アウェイ用は、戦いに挑む真摯で純粋な姿勢を意味するホワイト。
2010 FIFAワールドカップ South Africaを目指す サッカー日本代表が身にまとうユニフォームです。
去年2月のアジア3次予選 タイ戦で初めて使われたこのユニフォーム。
アディダスが開発を始めたのは、この戦いからさかのぼること2年以上。。。2005年後半のことでした。
     

最初は、アディダスのフットボールとして、世界的にどういったアプローチをしていくのか、ヨーロッパでは2008年のユーロ、こちらではオリンピック、それぞれの大きな大会に向けて、機能はどうする?デザインのコンセプト、全体的なコンセプトはどうしていくのか、主要国が集まって会議をしました。

ヨーロッパ、南米、アジア、世界各地からアディダスのスタッフが、アディダス本社のある村。 ドイツのヘルツオーゲン・アウラッハに集まりました。

いろいろな意見、マーケットはそれぞれ持っているんですけど、特に我々が主張したのはその国らしさ。 国の独自のところを何で出すのかというのをテーマにしないと、いくらブランドがブランドでも、それぞれの国には想いがありますので、それを出して行かないと、というのが僕の主張だったんで。
アディダスとしてベースを決めて。
で、変な話。 それを色を変えていくだけじゃなく、その国独自のニーズがありますので、その想いをどう形にしていくのかというのがテーマでした。

「それぞれの国の想いを形にしていこう」
アディダス・ジャパンの山下崇さんによる提案が世界のアディダスの方向性となりました。
日本へ帰国後、社内でも一部の人しかアクセスできない極秘プロジェクトがスタート。
しかし、山下さんが主張した「想いを形にすること」。
これがのちに大きな壁となるのです。

ワールドカップ予選を戦い抜く サッカー日本代表のユニフォーム。
世界的なベースを軸に それぞれの国がその国らしさ、想いを形にする。
そんなコンセプトを受け、アディダス・ジャパンの開発チームの中で激しい意見交換が行われました。

歴史的に2002年のワールドカップの時は富士山だったり、2006年のワールドカップのときは、戦いに行く侍から日本刀からインスピレーションされた刃紋が入ったデザインでした。
今回は、どういう風にしようかと。コンセプトは日本魂というところで、大和魂というところからイメージする侍とか刀に行くんじゃなく、あくまで日本らしさを新しい形で表現していこう、というのが固まりまして。
やっぱりその、具体的なものが多かったなかで、今回はどちらかと言うと「想い」というか、日本代表が舞っていく様、チームの「飛翔」というデザインテーマになっていますので、日本らしく勝って行く、レベルが上がって行く、というデザインコンセプトの中で、デザイナーと数十パターン、協議しながら。。。

最終的に決定したユニフォームにはブルーの生地に、ゴールドのラインが下から上へ広がるように入っています。
数十パターンを検討し、最後に残ったのがこのデザイン。
さらに、同時に進められたのが、テクノロジー面の開発です。
アディダス・ジャパンが最も重視したのは「汗の処理」。

アパレルっていうのは、靴に比べると差が出にくいんですね。
「それをどう乗り越えるんだ」というところで、20%の軽量化と汗の処理。 汗の処理というところで、汗がたまると熱がたまって選手のパフォーマンスを落としてしまう。 その対策が大きなテーマになっていまして、これはヨーロッパではないんですね。
ヨーロッパと日本の湿度は全然違いますので、彼らは湿気はあまり気にしていないんです。 でも、アジアで戦うなかで、特にワールドカップ予選でアウェイの厳しい戦いがあるなかでは、これが大きなテーマだったんで。

アディダス・ジャパンが開発したのは「ファブリック・エックス」という新素材。
裏側の繊維がポンプのようになっていて、選手がかいた汗は皮膚から瞬時に吸収しされ ユニフォームの表面へ。
そして、その水分はすぐに乾きます。
この技術が 汗の処理をスムーズにしました。

さらに、風の通り道を作る工夫。
生地は、サッカーという競技独特の動きをしやすくするため立体裁断。
と、さまざまなアイディアが詰め込まれました。
    

「前回、2006年のワールドカップに作ったジャージ」これをベストと思って世に送りだして、そのベストをどう乗り越えるんだ、というのが僕らがぶつかる壁なんですよね。一度飛んだバーをどう上げていくんだ? 特にテクノロジーは、一度やりきったものを越えていくというのはかなり高いハードルでした。

アスリートを支えるのは、常にベストを更新することに挑む開発者たちの想い。さまざまな想いを背に、戦いは続きます。