今週は、充電池の使用量を飛躍的にのばした「エネループ」の開発秘話。
プロジェクトチームが破った「充電池の常識」とは果たして?
2005年の夏。
三洋電機株式会社では、熱い議論がかわされていました。
そこに集まっていたのは、充電池「エネループ」のプロジェクトチーム。
発売は2ヶ月後に迫っていましたが、この時点では「エネループ」という名前も白地に青い文字が浮かび上がるあの特徴的なデザインも決まっていなかったのです。
特に今回のエネループという商品では、デザインをこれまでの充電池からガラッと変えて全く違った商品に見えるくらい変えているんですよ。
それまでの慣習をかなり変えています。セルひとつとっても、これまでの充電池は容量をアピールしてきていたんですよ。
2,300、2,500、2,700と、電池の容量を表す指標なんですけど。それと、充電池というのは、電池のまわりにまいているチューブのデザインにしても、別にルールじゃないんですけど電池業界の慣習として下の方に帯がついているとか、そういったものが浸透してきていたんですけど、そういったのはもうやめようと。
開発コンセプトの大きな柱は「これまでの充電池の常識を破ること」。
当時、充電池の使用目的は その多くがデジタルカメラ用でした。
「なぜ、他の用途に使ってもらえないのか?」
この疑問こそが、エネループを開発するきっかけだったのです。
乾電池と充電池について、ユーザーが、その使い勝手をどう感じているのか調査が行われました。
まず乾電池への不満は、一回しか使えないと。それと使用済みの乾電池の処理にみなさん困られている。使ったあとの処理が面倒だとか、そういう不満が多いというのが乾電池には多い、というのが分かりました。
これは充電池にとっては、すごく意味のある不満っていうか。。。
乾電池は1回使い切りで、使用後は廃棄しなければならない。
一方、充電池は繰り返し使うことができる。
つまり、地球にもやさしい存在です。
充電池には、潜在的な需要があったのです。
しかし、問題がひとつ。
乾電池と違い、充電池は充電しても放っておくと使えなくなってしまいます。
ここをクリアしないかぎりは、前に進むことはできない。
技術者たちの挑戦が始まりました。
SANYOが開発した充電池「エネループ」。
これまでの充電池に対してユーザーが持っていた不満、
「充電しておいても、そのまま置いておくと使えなくなるので、いざという時に役にたたない」
この声に答えるべく、開発が進められました。
必要とされたのは、電池の内部に存在する「プラスの物質」と「マイナスの物質」が使用していないときに 勝手に反応するのを防ぐこと。
実際、開発の段階で試作電池を作るんですよ。
いろんな割り振り、構成、中の構成を変えたり、物質を変えたり、5,000種類くらいを作るんですよ。
その中で一番いいものを選んでいくというね。ですから、電池って結構、地道な技術でね、技術自体はシンプルなんですよ、だけど、中の物質をちょっと変えるだけで大きく変わりますしね。
決め手となったのは 超格子合金という物質。
これを使うことで、放電を抑制することができました。
フル充電すると、半年後でもその90%、2年後でも80%のエネルギーが蓄えられる電池が完成しました。
そして、もうひとつの大きな課題。
電池のデザイン、そしてパッケージはどうするのか??
もっとおしゃれなものにしたほうが、見ていただけるんじゃない?とか、興味を持っていただけるということで、チューブも真っ白な素地に。
そしてネーミングもしたんですね。エネループという。それからパッケージなんですが、今までは電池というと紙の板に電池を並べてプラスチックでおさえこむというのが当たり前だったんですが、今回は、ケース上にして、まわりにガイアブルーという色なんですけど、実は中身がほとんど見えないんですよ。これは最初、実は営業からクレームされたんですけど。
2005年11月、ブルーのパッケージに入ったエネループが店頭に並びました。
開発にたずさわった 三洋電機の下園浩史さんは、最後にこんなことを話してくれました。
もともと僕らが求めていた、これまで乾電池を使っていた人が充電池を使い始めたと。
僕らが胸に秘めているのは、世界中の乾電池を充電池に変えたいと。
これによって節約できる資源とか膨大なんですよ。日本だけで1年間に22億本の乾電池が消費されてゴミになっています。世界では400億本です。
このエネループですと1,000回使えますので、資源も節約できるし、経済的にもいい。環境にも配慮された商品ということで自信を持っているんで、市場が伸びているのは、そういう想いが受け入れられているからだと思います。
目指すのは、世界中の乾電池を充電池に変えること。
ものづくりの情熱の奥底には、地球環境への想いがありました。