2009/3/13 スチームオーブンレンジ開発チームのHidden Story

今週は、最新型のスチームオーブンレンジを手がけた開発チームのHidden Story。

パナソニックのスチームオーブンレンジ「三ツ星 ビストロ」。
入社以来25年間、電子レンジ一筋に開発を行ってきた技術者が「最高のものができました」と 自信を持って語る商品です。

開発のヒントとなったのは、消費者の声。
商品企画グループの井上広美さんはこう話します。

業界的に、スチームを使ってヘルシーな調理ができる、というのが高額商品の売りになっていたんですが、実際にお客様の声を聞いてみますと、スチームを使ってヘルシー、という機能をどれだけ使ってらっしゃるかというと、それほど使用頻度が高くなかったんですね。 その理由は、スチームでの調理は加熱時間が長くなるという欠点があったんです。

そこで、私自身も家庭で料理をしますが時間がない毎日なので、購入された方も、早くおいしく仕上げたい、というニーズがあるんだろうということで 開発を始めました。

早くて美味しくてヘルシー。

これが開発にあたっての目標でした。
スチームに頼っていると、調理時間がどうしても長くなる。 何か他の熱源はないだろうか?
研究所からひとつのヒントが差し出されました。
「アルゴンヒーターを使ってはどうか?」

研究所でいろんな熱源、いろんなヒーターの中からアルゴンヒーターを選んだわけなんですけど。。。波長を可変することができるんですよ、アルゴンヒーターは。
なぜそれがいいかと言いますと、スチームが出てくると、光の波長が吸収されてしまいます。蒸気が出ているところへ光の熱源が加わると、蒸気が邪魔してこげなくなるという現象があるんですよ。それで研究所が調査しまして、蒸気に影響されない波長というのを見つけたんです。

これならば調理時間が短縮できる。

技術グループの山崎孝彦さんは手応えを感じていました。
しかし。。。その行く手にはいくつかの壁が立ちはだかります。
問題はどこにあったのか? そしてそれをどうやって乗り越えたのか?

光ヒーターシステムと呼ばれる仕組みを導入したスチームオーブンレンジ「三ツ星 ビストロ」。
開発チームがぶつかったのは、ポイントとなる技術=「アルゴンヒーター」を取り付ける部分の強度を確保すること。 さらに、手入れを楽にするために搭載された「セルフクリーニング機能」に耐久性はあるのか? 
より快適な調理のための技術を実現できるかどうか。 それは、乗り越えられそうで、なかなか乗り越えられない壁だったのです。

(井上さん)すごくいいもんやなとは思っていたんですけど、汚れであるとか破損であるとか、そこは重要な課題だとみんな認識していたので、できそうだけれどできないのかな?夢は夢なのかなと横で思ってました。

(山崎さん)耐久性についても心配していたので、今回はかなり見たんですよ。塩がついて割れたりしないとかね。これは実際に調理してみないと分からないので、サバを並べてね、朝から晩まで焼いて試しました。 40年相当くらいまでやりましたが、セルフクリーニング機能のところは、さらさらでしたね。ヒーターのほうも問題なくいったんで、
これはすごいなと。

光ヒーターシステムの取り付け部分に、バネのような構造を取り入れることで強度を確保することもできました。
技術的には、これでオーケー。
「夢で終わるかもしれない」と思ったことは、現実となったのです。

(山崎さん)今回、光ヒーターを入れることで、合わせ技というのをやったんですけど、上で肉料理、下で野菜料理が同時にできます。 本来なら、鶏をやって、野菜をやって2回かかるところを1回でできるので、時間短縮になって、エコですよね。

(井上さん)庫内を2つの部屋に仕切ってしまって、焼く部屋と煮る部屋を同時に進行するってことができているんですね。 ふたつの別々の調理をひとつにまとめながら、目的は、できたてあつあつを同時に食卓に出したいなっていうことと、ヘルシーっていうのは、脂を落とす、塩を落とすだけじゃなく、バランスよくいろんなものを家族に出したいなという想いが強かったので、それだったらここに両方入れて、できましたよってさっと出せるという。
それは今回の光ヒーターでできたことです。

電子レンジを作り続けて25年。 山崎孝彦さんは、「あきらめないこと。そして 少し見方を変えることが大切だ」と語ります。
そして、井上広美さんが大事にしているのは、 主婦としての目。

(井上さん)家庭の調理というのは、毎日毎日、絶えることがないもので、手を抜きたいなと思うこともありますが、反面、家族とか子供を見ていると、もっと元気に育ってほしいなとか、これ食べさせたいなと思いますよね。 それが今の女性は毎日ジレンマに陥っていて、自分には時間がないけれど、家族のためにはちゃんとしたいなという。
実際、売り場で、これ買ってよかったよって言われるとすごく嬉しいので、大変なことは山盛りですけど、仕事は楽しいです。

よりよいものづくりは、よりよいライフスタイルを作ること。
開発に取り組む人々の挑戦は今日も続きます。