今週は、世界でも屈指の 低い漏水率を誇る、東京都の水道を支えるプロ。
人呼んで漏水ハンターの Hidden Story。
水道の蛇口をひねると出てくる「水」。
この水が浄水場から運ばれてくる間に、水道管から漏れてしまう割合 = 漏水率。
世界の大都市では10%前後とされるこの漏水率。 東京は、わずか3.3%。
水を漏らさず運ぶ技は、世界に誇るべき 優れたレベルに達しています。
そして、その低い漏水率を支えるプロがいます。
漏水というのは、地上に出てくる地上漏水と、地下にしみ込む地下漏水に分けられます。
目で見て分かる、また都民の方から通報をいただいて分かるのが地上漏水。。。地上漏水についてはすぐ修理できます。
主に我々が重用視しているのは地下漏水です。
地上に出てこないので、例えば、1日出ることがあれば、5年出ることもあると。
この春まで、杉並区と中野区の漏水防止業務を行われてきた、杉田一郎さんによると、「問題なのは、地下漏水」。
例えば、一日にペットボトル1本分しか漏れなくても、地下で発生しているため 発見できないまま月日が過ぎて、結果として大量に漏れてしまう。
これを防ぐため、日夜、パトロールが行われているのです。
地下っていうのは、器具を使わないと見つけられないんです。
漏水調査方法には電子式漏水発見機を使うものがあり、これはお医者さんの聴診器と同じで、漏水の上を通ると音がすると。
ただ、音が同じように聞こえまして聞き取りが難しいんですね。 風の音、人の話す声、車の音、いろんな音がします。
昼間はものすごく音が多いので、夜の騒音が少ない時期にやっています。
聴診器のような機械を道路に当てながら、夜、騒音の少なくなった道を歩く。
音の聞こえ方、響き方が違っていたら、その地下で漏水が起こっている可能性がある。
地道な一歩一歩が、低い漏水率を支えているのです。
水道の漏水防止にたずさわって29年。
水をもらさずに蛇口まで届けるためのプロフェッショナル、杉田一郎さん。
水道局に入局されたころ、主に使われていたのは、鉛の水道管でした。
鉛の管は、長い年月を経ると劣化します。
さらに、道路工事の影響、重量オーバーの車がたびたび通ることによる振動も原因となって漏水が起こります。 かつて、東京の漏水率は。。。
私が入ったときは、16〜17%あったんですけど、目標は9割、漏水率10%で、5%にするのは不可能と言われていたんです。
当時不可能と思われていた5%をはるかに上回る3.3%になっているんですね。
これは、技術と、あと管の材質もあると思います。
鉛の水道管から、ステンレスの水道管へ、材質が変わりました。道路の下の水道管については、ほぼ全てが新しくなりました。
これも、漏水率を引き下げた大きな理由です。
しかしそれでも、「どこかで水が漏れていないか?」
作業は続けられています。
東京都の地下に埋まる水道管の総延長は、およそ2万6,000キロ。
漏水ハンターが、今日も地面に機械を当てて調査を行っているのです。
ひとつひとつ、水道管の口径、管の種類、傷の形、地下の舗装種別も砂とか砂利とか、舗装の厚さも違いますね。 そういうのを加味しますと、漏水というのは決まった周波数がないもので、自分の耳に記憶させるんですね。これは下水だ、これは電気だ。
これはひとつひとつ経験して、自分の耳と記憶と、これしかないんですね。
人間の五感は機械以上のことがあるんですね。
頼りのするのは、積み重ねた経験。
そして、胸にひめるのは、重い使命感。
漏水というのは、水が全く無駄になってしまいますよね。 見つけるのは我々の技術しかないんで。 表面に出たものは分かりますけど、地下漏水は我々しか分からないので、これは使命感ですね。 私たちがあきらめてしまうと、修理する人がいませんから。我々が最終ラインだと思っています。