2009/10/2 「発電床」の開発秘話

今週は、大きな可能性を秘めた技術。
その上を歩くだけで発電できるという「発電床」の開発秘話。
若き研究者の情熱に迫ります。

2008年12月、渋谷のハチ公前広場で、ある実験が行われました。
街を歩く人、待ち合わせをしている人が作る振動によってどのくらいの電力を 生み出すことができるのか?
地面に「発電床」が埋め込まれ、そのパワーが試されたのです。

この実験をしたのは、「音力発電」という会社。
音の力で発電する、と書いて「音力発電」。
実は「発電床」の原点には、「音で発電する」という発想があったのです。

うちの会社の名前になっている音力発電。音を使った発電の研究から始まったんですよ。 音って、空気を振動させているわけですので、音以外のものにも応用できるだろう、ということで、振動力発電もその応用として研究していたんです。 振動力発電のひとつが発電床なんです。 人が歩いたり、車が通ったりすることで床面に生じる振動で発電する、という。

株式会社「音力発電」の代表取締役、速水浩平さんが「音によって、発電できないか」そう思ったのは、なんと、小学生のころ。
その想いを抱いたまま、速水さんは慶応義塾大学に入学、大学2年のとき、ついに その研究に着手します。
しかし、周囲の目は冷ややかでした。
「そんなもの、うまくいくはずがない」

企業の技術者、研究者はほとんど「そんなの無理だよ」と言うんですよね。 音というのは、音が持っているエネルギーが小さいので、そこから発電できるエネルギーも小さいよ、という定説があったんですね。 私は、運良く、その定説を知らずに3ヶ月間研究するんですが、小さい頃からず〜っと音力発電をやりたいと思っていたところに、無理だとか、やめたほうがいいと言われても、あきらめないんですよね。 むしろ、そういうむずかしいことを成し遂げたらこれはすごいんじゃないかと、励みにして、より頑張るんですけども。

それから3ヶ月後に発表した 音力発電の研究成果は、企業の技術者を「すごいじゃないか」と うならせるものでした。
そして このとき同時に発表したのが、振動力発電装置。
発電床の原型となるものでした。

音は、空気を振動させる。
その「音」で発電ができるのなら、「何かを振動させること」によって、より大きな電力を作ることができるのではないか?
当時、大学2年の速水浩平さんは 振動による発電に取り組みます。
問題は、揺れを効率よく電力へと変える方法でした。

分かりやすくいうと、下敷きがあるじゃないですか。 あれをピンとじくと、びよびよびよと揺れますよね。

でも、紙だったら、揺らしてもぺろっとなって終わりですよね。
紙と下敷きの何が違うかというと、振動させているんですよね。
1回のはじいた振動を、振動板、下敷きを使えば、何回も何回も往復できるんですよ。
そして、揺れているあいだ、振動が伝わるという仕組みにしておけば、その分、発電し続ける、という。

この原理にたどりつくまで およそ1年。
その後、小型で、耐久性があって、より発電効率のよいものへ。。。
今なお 改良が続いています。
さらに、驚くべき開発も進行しています。

床ではないんですけど、リモコンを作っていて、テレビのリモコンと思ってもらっていいんですけど、発電するパネルを、振力電池といって、振動の振に力に電池で、振力電池なんですが。 振力電池を床に内蔵すると発電床になってリモコンに内蔵すると、発電するリモコンになるんですよ。 床は踏むと発電できますが、リモコンは指で押して、その力で発電させることができて、乾電池を使わない、環境にやさしいリモコンができると。

リモコンのボタンを押す力を電力にかえることができる。
ならば、携帯電話のボタンを押す力も 電力にできないか?
ランニングシューズに内蔵すれば、走りながら聞く 携帯型音楽プレーヤーの電力をまかなえるのではないか?

二酸化炭素排出の問題、温暖化の問題がありますが、今、太陽光と風力、ふたつが大きく注目されていますが、私は第3のクリーンエネルギーとして発電床、振動力発電がくるんじゃないかと思っていますね。 振動というのは、全体の5分の1くらいはまかなえるんじゃないかなと思ってますね。 日本で使う電力の。

電気自動車との組み合わせも今はやってますね。
電気自動車自体もサスペンションがあって、タイヤなどが揺れていますので、振力電池を内蔵して、少しでも燃費効率を上げようという取り組みもやっています。

すべての振動を電力にできれば、
これはまさに、究極のクリーンエネルギーです。
そして、それ世界中に広がれば。。。夢は広がります。
    
最後にうかがいました。速水浩平さんの仕事の哲学とは?

好きなこと、というのが重要なことで。研究開発というのは、うまくいかないことのほうが多いんですよね。 うまくいかないことが続いて、うまくいくことがちょっとあって。 うまくいかないときというのは、嫌になっちゃったりすると思うんですけど、それが人から与えられたテーマじゃなくて、自分で選んだものだったら、頑張れるんじゃないかなと。

これは仕事にもあてはまると思っていて、仕事も与えられたものじゃなく、自分で選んだものがいいと。
そのほうが頑張れるし、もちろん楽しい。

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