2009/10/16 i-MiEVの誕生秘話

今週は、話題のエコカー!
三菱自動車が開発した電気自動車「i-MiEV」の誕生秘話。
MiEVの開発にたずさわった橋本徹さんが明かすHidden Story。

三菱自動車が 電気自動車を本格的に開発することを発表したのは2005年5月のことでした。

当社の場合は、1960年代の半ばから電気自動車の開発はずっとやっているんですよ。 だから、40年近い歴史があります。そのなかで、1990年代のはじめごろから、リチウムイオン電池というものが、今、パソコンであるとか、携帯とかに使われていますが、いち早く自動車に適応させようと取り組んでいましたね。 それまでは電池というと、鉛電池。大きさの割りにエネルギーが貯められないんですよ。 それを電気自動車に使うと、車の半分くらいが電池で埋まってしまうと。

本格的な開発を公表するずっと前から、開発は着々と進んでいました。
三菱自動車は、リチウムイオン電池にいち早く注目。
この電池を自動車に適応させる研究が続けられていたのです。
そして21世紀。
「自動車メーカーが環境問題にどう対応するのか」
これが問われ始めます。
社内で議論が交わされました。三菱自動車は、どんなエコカーを作るべきか?
ハイブリッドカーは作らないのか?

いろいろ議論はありましてね、環境にどう貢献するのかと侃々諤々の議論がありました。 当時は、トヨタさんのプリウスに代表されるように、すでに本格量産に入られまして、技術的にも先に行かれていますのでね、そこを我々が追いかけていくよりも、いっそ、CO2ゼロ、排ガスもゼロ。 石油の使用量も極めて少ない。 究極の環境対応という意味では、ハイブリッドよりも電気自動車だろうと。

「環境対応車として、電気自動車を作る。」
方向は定まりました。

しかし、プロジェクトは、そう簡単には進みませんでした。


開発を本格的に、生産に向けてやりましょうとなったときに電気自動車は認知されていないものですから、部品を一緒に作っていただけるパートナーを探すのに苦労しました。
電池がキーコーポネントですが、リチウムイオン電池については非常に高い技術をお持ちのGSユアサさん、それから リチウムという資源を入手していただける三菱商事さん、そして、そのリチウムイオン電池を自動車に適応させる我々。 3者で、リチウムエナジージャパンというジョイントヴェンチャーを設立しまして。


地球環境のために 一肌脱いでくれないか。
この言葉に応えて、スペシャリスト達が集まりました。
あとは、肝心な車の本体。 
どんな車を作るのか?
しかも、短期間で市場に出すためにはどうすればいいのか?

開発チームの挑戦が 始まりました。

三菱自動車が開発した電気自動車「i-MiEV」。
開発のスタートから比較的早いタイミングで完成したのには理由があります。


専用車にすると、全く違う新しい車にする、ということも考えたんですが、やはり早く市場に提供したいと。
しかもより安く提供したい、ということで、これまでにある財産のなかから「i」という車が非常に電気自動車にするには有利な車でしたので、これでやりたいと。

電気自動車のために 全く新しい車を開発するのではなく、すでにあるガソリン車「i」を使って 電気自動車を作る。
この選択が 大きな結果をもたらします。

電気自動車自体は、コンパクトであればあるほど効率がいい。 我々技術者に要求されるのは、コンパクトな車の中にいかに大きな電池を搭載するかといったことです。 通常ここが非常に難しいんです。 ところが、iの場合は、前の車輪と後ろの車輪の間が大きなスペースがありまして、専門用語でホイルベースというんですが、この距離がiの場合は、2550ミリメートルあります。 一つ上のクラスのコルトだと2500ミリメートルですので、それよりもまだ広いと。 全長は軽自動車ですからコンパクトでありなら、車輪の間隔が長いと。

これは電気自動車にとってみると、コンパクトで、さらに大きな電池を積むことができると。
非常に大きなメリットがあるんですね。


偶然と言えば偶然。
しかし、それは、積み重ねてきた歴史があったからこそ生まれた偶然でした。
「i」という車には、前の車輪と後ろの車輪のあいだに、電池を搭載するためのフラットで広いスペースがある。
さらに、こんな利点もありました。

電池自身も衝突に備えてプロテクトしなくてはいけませんので、そのプロテクトも容易に対応できました。 車というのは縦と横に基本的な骨が通っているんですけど、そのど真ん中に電池をすっぽり入れ込めています。 従って前からも横からも基本骨格が守ってくれる。 それから電池自身、車両につけるために、ちょうど、みこしを想像していただければいいんですけど、みこしをかつぐときに、骨組みがありますよね、井桁という。 その骨組みがさらに守ってくれると。

「i-MiEV」には、ちょうどVHSのビデオテープくらいの大きさのリチウムイオン電池を88個、搭載できました。
そして、今年、いよいよ大量生産をスタート。
ガソリン車から電気自動車へ。
時代の節目に大きな一歩を刻んだのです。


最後にうかがいました。
開発者、橋本徹さんの、仕事の哲学とは?



一言でいうと、継続は力なり、ですね。

技術者というのは、新しい技術にチャレンジしないといけないです。
新しい技術にチャレンジしようとすると最先端にいないといけません。

でも、その最先端には簡単にはいけないんですね。
それまでずっと最先端にいないといけないんです。
そして、最先端にいる人だけが次の景色が見える。

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