ドイツ西部、ノルトライン・ヴェストファーレン州のドルトムント。
冷たい朝の空気に真っ白な息を吐いて、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。 ライ麦パンの朝ご飯を食べよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
工業地帯のルール地方の代表的な都市のドルトムント。
デュッセルドルフの北東約50キロに位置します。
石炭や鉄鉱石が豊富にとれることから、産業革命以降は炭坑と鉄鋼、そしてビール生産が主要産業となり、第二次世界大戦後の復興にも大きく寄与した工業都市です。
しかしエネルギーの石油への転換や、新興国の発展で、炭坑は全て閉山、2つの大きな製鉄所も生産を停止し、ビール工場も統合されて、ミュンヘンとは知名度で大きな差がついてしまいました。
それでもビールの産地として、また今はハイテクの街として再生をめざしているところ。
のんびりした緑豊かな土地柄の地方都市です。
ライ麦の粗挽き全粒粉で作られた、ヴェストファーレン地方の伝統的なパンがプンパーニッケルです。
古くから伝わるレシピでは、熱湯でふやかした全粒粉を型に閉じこめ、200度で一度焼く。
そして、約100度で半日から1日蒸し焼きをして作ります。
そのとき、穀物に含まれるデンプンが焦げてキャラメル状になり、独特の黒い色とほんのり甘い風味が加わるのです。
見かけはまるでチョコレートケーキのスポンジの部分のよう。
しかしイーストやサワー種を加えないため、ずっしりとして固く穀物系のほのかな甘みとかすかなほろ苦さが、感じられるパンです。
モルトのエキスがしみていて、ウイスキーの味わいと言う人もいます。
たいていの場合、トーストなどよりも薄く、クラッカーぐらいにスライスして食しますが、それでももっちりとした食感は、十分な食べごたえがあり。
オープンサンドなどに適しています。
チーズやコーヒーにとてもあうので、そのままでももちろん十分に食べられるのですが、ニシンの酢漬け、サーモンなどのシーフードを乗せると、北欧風になり、マスカルポーネなどのチーズを薄く伸ばしたり、ジャムやはちみつと合わせると、また違った趣でいただけます。何よりも有機栽培が基本で、ビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含んでいて胃腸によいパンですから、特に「一日のスタートにはたっぷりの水分とともに」という人がドイツでは多いようです。
白い小麦粉のパンに慣れた人にとっては、なかなか馴染みがない黒パンですが、「ポンパニッケル」などともいう名前で、直輸入のパックを売っている食材屋さんもあります。
1年くらい日もちするので、保存食としても使えます。
日本流に食べやすくアレンジされたものをパン屋さんのメニューに載ることもありますが、ライ麦100%が基本です。