北海道、小樽。 運河沿いの古い倉庫街の夜明け。
空の明るさとともに消えるガス灯を見て、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。 港で朝ごはんを食べよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
小樽の中心部の歴史は古く、運河が完成したのは1923年。
ガラス工芸が盛んで、ノスタルジックな景観が魅力的なため観光客が後を絶ちません。
石油ランプ、ガス灯などなど、電気の普及によって、他の街ではあまり見られなくなった当時の面影をしのばせるアイテムは、もともと漁業に使う
ガラスの浮き玉に由来するそうです。
北海道の金融都市として開拓時代には重要な位置づけであったため、レンガ造りの歴史的建造物も多く、白い蛍光灯の「あかり」ではない、暖かな雰囲気には、オレンジ色の「ともしび」が印象的です。
人気の少ないこの時間帯ですが、ここから車でおよそ10分。
祝津の港は、朝日に染まり活気を帯びています。
石狩湾に面し、古くはニシン漁で栄えた街の祝津。
大正時代、巨万の富を得た網元が建てた豪邸は「にしん御殿」と呼ばれます。
今なお「小樽貴賓館」として、当時の栄華もそのままに、立派な屏風や襖絵などが展示され、観光名所となっています。
しかし、もちろんお目当ては港の食堂。
朝7時からオープンしているのは「青塚食堂」。
漁師さんの奥さんがはじめたという食堂ですが、店の前で串に刺したニシン、イカ、ホタテなどを焼いているとあって、ランチタイムには行列ができる人気店。
宿泊施設もあって、朝ご飯の時間には、焼いた魚の匂いがあたりにたちこめ、食欲がかき立てられます。
何よりも、その日の漁の魚が水揚げされてそのまま届く、というのが一番のウリ。
豪快に盛りつけられた海の幸に舌鼓。
やはり海に囲まれた日本ならではですね。昭和20年以降は収穫量が大幅に減って、衰退の一途をたどっていたニシン漁も近年は徐々に回復。
年が明けるとまた漁がはじまります。
しかし最近の小樽ブランドといえば、実はシャコなんです。
焼いたシャコや、汁物だけでなく、押し寿司やパエリアなど新しいメニューも開発され、去年からスタートしたシャコ祭りが今年も先月末に行われ、大盛況だったようです。
ウニをおしげもなく使うどんぶりはその量に圧倒されます。
また、八角と呼ばれる深海魚などは、一見グロテスクですが、脂が乗って焼き魚にするか刺し身するかで迷います。
しかしやはりニシンがまるまる一匹焼き魚として出てくるのがなんとも贅沢。