ホワイトハウスがあるワシントンDC。
これに隣接する形のメリーランド州。
東側は大西洋に面しますが、大きな湾のChesapeake Bayを擁しています。
荒波を受けないことから、水の流れが穏やかで、カヤック、レガッタなどの競技が盛んに行われることでも有名です。
ヨットやボートなどを繋養するドックがあちこちにあります。
しかしここではやはり、新鮮なシーフードを語らない訳にはいきません。
カキ、アサリ、エビなどの宝庫ですが、とりわけ、ここ独自の種類のカニが、全米にその名をとどろかせています。
いわゆるソフト・シェル・クラブ。 つまり甲羅が柔らかいものですが、爪の部分が鮮やかな青い色をしているのが大きな特徴。
「メリーランド・ブルー・クラブ」と呼ばれます。
カニ釣りのベストシーズンは夏。
日本のカニのように「冬のもの」というイメージはあまりなく、年中メニューに載っています。
例えば「クラブ・ケーキ」。
カニの身をほぐしてハンバーグにしたものをフライパンで揚げるのですが、まるでカニの身だけのコロッケ。
つなぎの素材で、スパイシーなもの、マヨネーズ味のものなどバリエーションが多く、この地では前菜として、そしてメインディッシュとして、最もポビュラーな一品です。
空港のお土産物屋さんでは、冷凍したものも売られています。
ここで取れたてを食べるとすれば、カニをスパイスにたっぷりつけて丸ごと蒸したもの。
大人数のグループがやってきては、みんなで、ハンマーで殻を叩き割って食します。
カニの倉庫の横、水辺のレストランなど、いろいろなロケーションのシーフード・レストランが点在し、大きなカニの看板がドライバーの目を引く。
そんな光景がメインの道路沿いの名物です。
日本人にとって、カニ料理といえば、しゃぶしゃぶや鍋などをついつい考えがちですが、こちらではこうしたスープは朝食のもの。
といっても、クラムチャウダーのようなクリームスープの中にカニの肉がほぐしたものがたっぷりと入っているものです。
朝は氷点下と冷え込むこの時期には、やはりドロリとして、熱々が持続するこの種のスープがたまりません。
もちろんお隣の首都ワシントンDCでも、この種のメニューを出す洗練されたお店はたくさんありますが、車でほんの1時間弱。
郊外のアナポリスなどまでやってきて、
「清麗な海水の湾に面した水辺のシーフード・レストランで、カニづくし」
やはりこれがアメリカ食文化の奥深さを、かいま見ることができる醍醐味です。