イベリア半島の先端、ポルトガルの首都、リスボン。
丘の上から市街地を見下ろして、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。パンとコーヒーの朝食を食べよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
別名「七つの丘」と呼ばれる街、リスボン。
紀元前の古代から港町として栄え、フェニキア人、ローマ人、ムーア人など、さまざまな民族に支配された歴史を持ちます。
海洋貿易の要所として、地政学的にもちょうど中心となった街です。
街には路面電車が行き交い、テージョ川の対岸に架けられた橋は、ゴールデンゲートブリッジと建設した会社が同じせいかそっくり。
アップダウンの激しい丘を中心とした市内の風景も相まって、姉妹都市サンフランシスコの情緒が感じられるでしょう。
今でもポルトガル最大の都市で、人口の1/4が集中しますが、全土でおよそ1,000万人ということでいえば、のんびりした印象。
クリスマスの喧騒も、ここでは他のヨーロッパの都市に比べるとおとなしい印象かも知れません。
もちろんポルトガルの代表料理ともいえるのは干しダラのバカリャウを使ったもの。
この干しダラは街中のいたるところにぶら下がっています。
代表的なのはコロッケですが、それ以外にもグラタンなどもよく作られます。
クリスマスのシーズンでは、七面鳥ではありません。 このタラのクリームグラタンが主食です。
カトリック文化圏では、12月は肉食を避けることも多く、遠く中南米までその習慣は浸透しています。
しかし朝食はあまりこってりとしたものは食べずにあっさりと。
このあたりはフランスやイタリアと通じるかも知れません。
朝のカフェは「パステラリア」。 つまりスイーツが多いバール、というのが人気です。
牛乳がたっぷり入ったコーヒーの「ガラオ」と一緒に食べるのはPão de Deus。
「神ゼウスのパン」という名のこのパンは、ブリオッシュ生地でバターがたっぷりしみて柔らかい歯ごたえ。
日本流に言うならば「菓子パン」の一種です。
ココナッツの風味を聞かせたパンで粉砂糖がふりかかっていたり、卵の黄身が色濃く出ているカスタードクリームがかかっていたり。
表面がパリパリしていて中はフワフワでしっとり味。
そしてガツンと来る甘さに脳天が目覚めます。
黄色いカスタードクリームといえば、エッグタルトですよね。
これも実はポルトガル生まれ。
日本にはマカオから、香港などを経由して最近ちょっとしたブームになっていますが、このタルトの生地の部分が、丸ごとブリオッシュになったものと想像して下さい。
もともと日本には、江戸時代から長崎出島を中心とした九州西部に、砂糖を使ったスイーツがたくさん入っていますよね。