2010/3/12 蒸気レスIHジャー炊飯器

今週は、炊飯器です。
現在ヒット中、三菱電機が開発した、蒸気が外に出ない炊飯器のHidden Story。

JK蒸気が外に出ない炊飯器を作りたい。
その想いは、家電メーカーが以前から持っていたものでした。
開発チームのメンバー、赤石都良さんは開発の「きっかけ」をこう振り返ります。

新しい日本のキッチンの提案、ということで、キッチンのなかに組み込むビルトインタイプというのがあるんですが、ああいう形で、炊飯器をキッチンに収納してしまうことで新しいキッチンを提案できないかと。

そのときに蒸気をどう処理するのかっていうことで、何とか蒸気を回収する方式ができないだろうかと、これは開発のきっかけです。
蒸気が出ない炊飯器というのは、我々炊飯器を開発するメーカーにとっては、一度は思い描く、アイディアがあれば「作ってみたいな〜」という想いは各メーカー持っていたんじゃないかなと思います。
ただ、図面におとしていくと、大きくなってしまうっていうことが想定されまして、「具体的に試作品のところまで辿り着かなかった」「アイディア止まりだった」ということはあったかもしれませんね。

炊飯する際に出る蒸気については、以前から、不満の声が存在していました。
炊飯器の上の家具がぬれる。子どもが やけどをする恐れがある。
密閉性の高い部屋なので臭いが気になる。
かつて、その意見にこたえようとしたメーカーもありました。

一時期、あるメーカーさんでは「蒸気を軽減する、蒸気カット」ということで出したメーカーさんもあったんですが、そのメーカーがやられていたのは蒸気を軽減するために、火力を落としていたんですね。
でも、美味しくご飯を炊くためには強い火力じゃないとだめなんですね。
火力を落としてしまうと味が落ちてしまうということで、広まらなかったんじゃないかなと想定しています。

蒸気は少なくできても、火力を弱めてしまうのは、本末転倒。
そこで、三菱電機が考案したのが、「水冷式」、水で冷やす方式でした。

通常の炊飯器をイメージしていただくと、必ず蒸気が本体の外にあるカートリッジを経由して、蒸気が外に出て行くのがイメージできると思うんですが、今回の蒸気レスIHジャー炊飯器は、外にあるカートリッジを内蔵化。 中に入れてしまいまして、カートリッジの中に入るんですけど、カートリッジの最終的な蒸気口が水タンクにつながっていて、蒸気がタンクに入って行くと。 タンクには冷たい水が入っていますので、気体の蒸気が液体の水に戻って行く、という仕組みになっております。

三菱電気が開発した、蒸気レスIHジャー炊飯器。
蒸気を外に出さないことで、美味しさの面でもいい影響がありました。

何とか味についても今までにない、業界初の提案ができないだろうかと考えた結果、ごはんを美味しく炊くというのは、火力を上げて炊くのが一番なんですが、今までの家庭用の炊飯器ですと、蒸気が出るときにあまり火力を上げすぎますと、おねばといいまして、かまど炊きをイメージしていただくと、かまど炊きの外にノリのようなのふきこぼれた跡がつきますよね。 あれをおねばと言うんですけど、蒸気と一緒におねばも飛び散ってしまうと、お部屋を汚してしまったり、やけどをしてしまったりという心配もありますので、火力を上げなくてはいけないところで、ギリギリに火力をおさえているんですね。それが今までの家庭用の炊飯器だったんですね。

「はじめちょろちょろなかぱっぱ」と歌があるんですが、今までは、ぱっぱというところで火力をおさえていたのが、蒸気が外に出ないので、吹きこぼれる心配がなくなりました。

そうすると、常にアクセルをふみっぱなし、火力をあげなから炊き続けるという。
「ぱっぱのところを強い火力で炊き上げよう」と。 これが今回の蒸気レスIHジャー炊飯器の大きな特徴です。

吹きこぼれないのであれば、火力をあげることができる。
つまり、昔から伝わる「はじめちょろちょろなかぱっぱ」この炊き方を家庭用の炊飯器で実現できたのです。

2009年2月、初代の「蒸気レスIHジャー炊飯器」、発売スタート。
8万円前後という 高い価格にもかかわらず、予想を大きく上回る売り上げを記録しました。
ヒットのひとつの要因は、炊飯器の色。

最終的に決定したのが、20代の女性デザイナーが提案してくれた「赤」だったんですが、実はこれは、通常のコーティングよりもさらにもう1層上塗りをして深みを出す赤で、コストとしては上がってしまうわけで、従来の炊飯器よりも価格が上がってしまう。
ということで、開発の終盤にくるまで、コストが上がるので、2度塗りはやめて1度塗りでできないかとチャレンジをし、実は決定もしたんですね。
でも、最終的にデザイナーさんに見せますと、自分が提案した赤ではないと。
そこで相当意見を交換して、最終的には開発スタッフが折れた形で、この深みのある赤を世に出そうといことで決断したんです。

三菱電機ホーム機器株式会社で、18年に渡って営業にたずさわってきた赤石都良さんが、「これまでのキャリアのなかでも、特に印象に残る商品」、という蒸気レスIHジャー炊飯器。
開発チームの願いは、やはり、この1点。
「より美味しいご飯を食卓に」。

今、こういう不況のなか「外で食べていたのが家でごはんを食べる」ということが多くなっているじゃないですか。
そのときに、主婦の方からすると、だんなさんが早く帰って来てご飯を食べるということになると、手抜きもできないですよね。
でも、おかずというのは例えばデパ地下に行けば美味しいものが買えたりしますよね。
だけど、ご飯はというと、ご飯は売られているかもしれませんが、温めなおしても、炊きたてに比べるとごはんの味は落ちるんですよね。
だから、家庭では、高価でも美味しく炊ける炊飯器のニーズが上がってきてるんじゃないかな、と。
それと、男性でキッチンに立つ方が相当増えてきていて、男性がキッチンにたつと、どうしてもこだわる方が増えていて、そうすると、こういう高い炊飯器は、主婦の方も憧れだとは思いますが、そこに男性の方もからんでくるケースもあって、蒸気レスであるとか、本炭窯のものを選ぶ方が増えているんじゃないかなと思いますね。

» 蒸気レスIHジャー炊飯器