2010/7/30 心地よい睡眠を追求して開発された「枕」のHidden Story

今週は、心地よい睡眠を追求して開発された「枕」。
その誕生にたずさわった、ひとりの営業マンの物語。

その会社はそもそも、呉服の帯の芯を扱っていました。
やがて、シーツやタオルケットなど 寝具の販売を開始。 枕を大規模に扱うようになったのは、90年代になってからのことでした。
会社の名前は、ロフテー株式会社。
快眠枕という名前の枕を大ヒットさせた会社です。
ロフテーが枕に注目したきっかけ。 それは……

社内にショールームがありまして、そこにお客様がいらしてたんですね。百貨店にご紹介いただいて、月に一度、お客さんを連れて来てもらって枕相談会をやっていたんですね。 最初は月に一度だったのが二度になり毎週になり、月に4回5回となっていたんで、これは枕を欲している人がいるだろうと。 ひとつマーケットがあるだろうということで、百貨店で枕専門ショップをやろうと。

取材にお答えいただいたのは、当時、百貨店の営業を担当されていた、杉田篤司さん。
「枕にビジネス・チャンスあり」
ロフテーは、枕専門ショップの開店準備を進めます。
でも、社内には反対意見もありました。

寝具の歴史を考えてみると分かるんですが、寝具の中心は布団なんですね。
今でも、寝具の中心です。羽毛布団ですよね。 寝具と言えば、軽くてあたたかい羽毛布団、次は敷き布団。 枕というと寝具のおまけみたいな感じでしたから「それを何個売って、いくら売れるんだ?」と。

当時、ロフテーの主力商品は、シーツやタオルケットなどギフトとして贈られる商品でした。
枕の売り上げは、わずか数パーセント。
しかし、予想に反して、枕を専門に扱うショップは、大きなセールスをあげることになります。

1996年、ロフテー株式会社は、新宿 小田急百貨店に枕を専門に扱うショップ「枕工房」の一号店をオープンしました。
特徴は、ひとりひとり、首のうしろを測定し、それぞれにあう厚さの枕を その場で試してもらう、というシステムでした。

目安になる「測る」ということと、お客様に実際にあてていただく、これがそれまでにはないことでした。
立って、自然体という力を抜いた姿勢。そのときに体がカーブを描くので、それを横にして、マットレスとの間、首のうしろ、腰、ヒザの下って、すき間があきますから、特に首と頭の後ろがあきますからそこを埋めるのが枕ですよね。
人によって当然厚さが違いますから。

独自の計測器を開発。 自然体で立ったときに、首のうしろにできるすき間をはかり、それによって枕の厚さを調整します。
そして、売り場にはベッドがあって、早速そこで 枕を試すのです。
オープンからしばらくすると、メディアで取り上げられたこともあり、人気が加速していきます。

ゴールデンウィーク、百貨店10時オープンですけど、準備もあるので、9時くらいに百貨店に行くんですね。 「そうか、物産展かなにかあるのかな」と思っていたんです。
そしたら、開店したら、そのご婦人がダダダダっと来るわけですよ。「え、うち? そんなに並んでたの?」って、それは嬉しかったですね。

寝具に行列なんて想像もつきませんでしたから。 だいたい1時間半から2時間くらいお待ちいただくと。 ですから、ベッド3台でやっていたんですけど、プラス、となりがベッド売り場でしたので、そのベッドも借りて、4つとか5つで対応していました。

それまでは、脇役に過ぎなかった枕が、主役となりました。

一番はですね、枕というのはそれまでは付属物だったんですね。 例えば婚礼用の寝具と言いますと、掛け布団と敷き布団があって枕が2つのってると思うんですが、そういうときに、ふわ〜っとはりがあるほうが綺麗に見えますよね。 付属品ですから、使って気持ちいいとかどうとか考えずに、一番、商品としては遅れていたものだと思います。

今の方、特に女性は、首のうしろのすき間がすごく少ないんですね。 そうしますと、つぶれた座布団くらいでちょうどいい、という方が多いと思うんです。 今までお売りしていた枕では基本的に、厚さがありすぎる、という方がほとんどでした。 だから、寝ても疲れがとれないとか、枕を使わないとう方も多くて……極端に言えば「女性が使う枕は売ってなかった」という状態だったと思います。

人生のうち、かなりの割合を占める「睡眠の時間」。
その大切な時間を、より心地よく。
売り場では今日も、首のうしろの測定が行われています。

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