シンガポールの高層ビルの影にある小さな公園。
朝日が差して、蒸し暑い空気の中で、彼女は大きく深呼吸。
そして心に決めました。今朝は屋台の朝食にしよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
東京23区とほぼ同じ面積の国土に、およそ500万人が住むシンガポール。
赤道直下に位置するモンスーン気候のため、一年を通して蒸し暑い印象がありますが、ここ数日に限って言えば熱帯夜と猛暑日が続く東京の方が暑いかも知れません。 ゴミをポイ捨てすると罰金を取られることもあって、整備された美しい町並みには定評があります。
そんなシンガポールでも、観光客が多い、目抜き通りのオーチャードロード周辺は、めざましい開発が進んでいますがMRTという地下鉄に乗って、地元の人々が住むエリアに足を踏み入れると、中国系、マレーシア系、インドネシア系、インド系などの様々な人種の、多様なライフスタイルをかいま見る事が出来ます。 朝から人々がやってくるのは、緑ゆたかな公園。その近くでは、飲食店が軒先にイスを並べ、屋台が軒を連ねる、即席のフードコートがあるのです。
「ホーカーズ」と呼ばれるこうした「屋台村」はシンガポールのあちこちで見られます。 都心のニュートン・サーカスのように、公園内に常設となって観光客で夜遅くまでにぎわう所とは違い、地元住民向けの小さなフードコートには、日本人の姿はあまり見受けられません。
漢字で「肉骨茶」と書いて「バクテー」。
骨付きの豚肉を薬膳のようなスパイスで煮込んだスープの事です。
中国醤油をベースに八角、桂皮、丁子などを入れて甘辛く仕上げ、少量のレタスやきのこ、揚げ豆腐に味がしみわたるように鍋でじっくりと煮込んだこの熱いスープ。
漢字で書くと「茶」という字が入っていますが、お茶の葉は全く使いません。湿気と熱気でバテそうな体にやさしく活力を与えてくれるスープ。
飲みすぎて水分が欲しい朝などでも、すっと飲めて胃に収まるやわらかい豚肉や野菜類がうれしいもの。 鉄観音などの中国茶と一緒にいただくことも多いようです。 さっと暖かい水分を摂って勤め先に出かけていく。 共働きも多いせいか、外食が多いこの国ならではの風景といえるかも知れません。
看板に「肉骨茶」と大きくかかれた専門店もあれば、コーヒーショップのフードメニューになっていたり、はたまた薬屋さんでは、バクテーの素がパックで売られていたり。
まさに国民的な朝のメニューといえるでしょう。