今週は、明日(2010年9月11日)リニューアル・オープンします、銀座三越。
そのリニューアルに携わったチームが明かす、Hidden Story。
銀座4丁目の交差点。おそらく日本で最も有名なライオンが座っています。
銀座三越。 まさに、東京を象徴する百貨店です。
その銀座三越がリニューアル。 明日、そのベールをぬぎます。
今回、そのリニューアルを手がけたメンバーの中から、三戸見拓さん、神戸昌子さんのお二人にお話を伺いました。
まずは、このリニューアル、そもそもの始まりは?
計画自体はもうかなり昔から、銀座店の長年の悲願と言いますか、お店があって、その後ろに古いタワーの駐車場がありまして、まわりに地権者さまがいらっしゃって、別館というものもあったんですが「その一帯を再開発しよう」というのが、私が入社するもっと前からあったんですけども、なかなか計画が出てはうまくまとまらなくて、ということで今まで来ていたんですけども。
5年くらい前に、もう一度計画をたてようということが経営のほうで決まりまして。
今から5年前、プロジェクトが立ち上がりました。
チームがこだわったのは、新館を作って、2館体制にするのではなく、今あるお店と新しい建物を一体化させること。
しかし、もともとある三越と、新しい建物のあいだには「道路」があったのです。
「それを妥協しないでやりきろうよ」というのが大きかったと思いますね。
5年前に立ち上がったときに「別館でなくて、一体化増床をいかにするか」というのが出発点。
方、行政の方の力をお借りして、都市再生特別地区という指定を受けまして、道路の機能は保全しつつ、その上に建物をたてることが可能になった。 これは日本でも、あまりない。 稀な話ですね。
既存の本館があって、裏側に区道、道路が走っています。 今の建築の法律でいくと道路の上に建物を建てることができないんですね。 だからみなさんブリッジでつなぐということをやられるんですが、今回、地元の
しかも、全部壊して新しく作り直すのではなく、昭和に建築された既存の本館と、新しい建物を融合させる。
非常に難しい設計が要求されました。 そして、もうひとつの課題は「街にどう貢献するのか?」
「どう地域に貢献するか」というのがあったので「その館のなかに、どのような来街者のための機能を持てるか」というのをひとつひとつ考えていきました。
難しかったですね、これは。
なかなか、百貨店の立場から考えると、売り場をどう作るか?売り場面積をどう増やすかというのが効率論から見るとあると思うんですが、憩いの場であるとか、観光案内所であるとか、本当に来街される方にやさしい百貨店をという事でいくと、ある意味、売り場を割かなければいけないというのがあって、その調整は難しかったんですが「当初のコンセプトを実現させるためにはやらなきゃいけないね」ということで進めてきました。
明日リニューアル・オープンする銀座三越。
リニューアル・コンセプトのひとつは、「街への貢献」です。
一番のポイントは9階の銀座テラスです。
銀座の街を歩くと、非常に回遊するのに楽しい街なんですが、例えば、休む場所がなかったり公園みたいなところがなかったり、ということで、4丁目の交差点の屋上に、既存の本館の屋上と新しく建つ建物の9階が一体化しますので、そこに屋上部分に関しては緑化をしてお子さんに遊んでいただくような芝生の広場ができます、あと農園ができたりですね。
あとは、外国人観光案内所。 街の案内といった機能が実は有楽町にはあるんですが、分かり難い場所にあって、待ち歩きのサポートという意味では、この4丁目に構える我々の店内に必要なんじゃないかということで、今回設置します。
同時に検討されたのは、「どんな商品をラインナップするのか?」
「どういうお店であるべきか?」ということを考えたときに、どういう方に来て頂いて、どういう方に支持していただきたいのかを考える必要があります。
「じゃあ、その方たちってどういう方たちなんだろう?」というのが一番のポイントになっています。データはいろいろあります。何人近隣にお住まいだとか、乗降客数がこれくらいだとか、どういう会社があるとか、いろんなデータはいくらでも調べられるんですが、実際は、来てる人の行動だとか装いだとか、カップルなのか家族なのかは目で見てみないと分からない訳ですね。 「それをやってみよう」ということで、我々も街角に立ちまして、街を歩いている人をじっくり見まして、時には、「この人ここからどこに寄って行くのかな」と街を回遊されていると思うので、ちょっと追っかけてみたり(笑)そういうフィールドワークを重ねました。
地道なフィールドワークで見えて来たもの、それは……
渋谷、新宿などいろんな商業地区がありますが、街ごとに雰囲気があるんですね。 銀座はあらためて大人の街だなというのが分かりました。
やはり「大人の雰囲気が街を包み込んでいて、街の持つ魅力と空気感が大きいな」ということに気づきまして、ファッションとかトレンドとかあるんだけど、それだけじゃない自分らしさをどこで発揮されているのかと、そうすると共通点が見えてきたんですよね。
デニムを履いてらっしゃる方でも革靴をヒールの靴を履いてらっしゃったりとか、みなさん靴がピカピカ。 きれいな靴を履いてらっしゃって「そういう高揚感があるんだろうなぁ」と、銀座には。
じゃあ、その高揚感を商品で表すとどういうものなんだろうと。
ファッションにおいては雑貨づかい、いいものを身につけたいというのが見えてきたんですね。 ですからファッションについては、雑貨を深堀しているわけですけども。
銀座の高揚感を取り込んだ百貨店、銀座三越。
銀座の中央通りから東側。 これまではそれほど目立つ店舗がなかったエリアに、新しい建物を建て、売り場面積は1.5倍に拡大します。
さらに、既存の本館部分も全面的に改装されました。
まったく新しい百貨店が、銀座の街に新しい風を吹き込みます。
最後に、リニューアル・チームの神戸昌子さんの言葉です。
昨今、百貨店は存在そのものが問われていますが、私としては「百貨店って楽しいよね」という部分をどれだけ発揮できるかというのを強く持ってまして、新しい時代を迎えて、次の時代の百貨店像というのを考えて進めて来て、その集大成であったらいいなと思っています。