今週は、1907年に作られたメリーゴーラウンドのストーリー。
実は、その回転木馬「カルーセル・エルドラド」は、現在、『としまえん』にあります。
はたして、どんな歴史を持っているのか?
時代を超えるメリーゴーラウンド物語です。
としまえんにあるメリーゴーラウンド。
生まれたのは、1907年ですが……としまえんにやって来たのは1971年のことでした。
そもそも、どのように誕生したのか?
そして、その後、どんな道のりをたどったのか?
としまえんの中村真二さんに教えていただきました。
このメリーゴーラウンドは、1907年にドイツでヒューゴ・ハッセという方が作られました。
そのあと、当時は、回遊型の遊園地というか、カーニバルを回っていた遊園地のなかで巡業していたんですが、だんだんヨーロッパで第一次世界大戦が始まる前で不穏な動きがあって……何とかメリーゴーランドを守りたい、ということで、アメリカに移すことをヒューゴ・ハッセさんが思いついてですね。 1911年からは、ニューヨークのコニーアイランドにあるスティープルチェース遊園地に移りました。 そちらが1964年に閉園されるまで、ニューヨークでみんなに愛された回転木馬だったと。
一説では、セオドア・ルーズベルト大統領だとか、エディ・キャンターだとか、そういう人が乗ったと書いてある本もありますね。
戦火をのがれ、ヨーロッパからアメリカへ。
ニューヨークの遊園地で長年 親しまれました。
1964年、その遊園地が閉園になり、回転木馬は解体され倉庫に保管されることになります。
それが東京に来ることになったきっかけとは?
「アメリカでそういう伝説的な回転木馬が売りに出されている」という情報を聞いて、買おうとしたらしいのですが……当時は、今のように情報網が発達していないので、なにかすごくいいものが倉庫に眠っていて、世界一のメリーゴーラウンドだ……ということを聞いて購入したようですね。
解体された状態……つまりバラバラのメリーゴーラウンドが東京へ。
誰も見たことがない回転木馬。 組み立てはスムーズには進みませんでした。
運んできたときは、コンテナにバラバラの状態で運んできたので、どれがどの部品か分からない状態だったらしいですね。
作る過程で、バラバラだったものを組み立てていくなかで、どういう乗り物だったのかを研究しつつ組み立てていったので、当初はもっと早く営業したかったのですが、結局2年かかって修復をして営業を開始した、ということですね。
1907年にドイツで生まれたメリーゴーランド「カルーセル・エルドラド」。
大きさは、高さ10メートル、直径30メートル。 ほとんどの部分が「木」で出来ています。 全体にほどこされたのは、アールヌーヴォー様式の彫刻。
古き良きヨーロッパの回転木馬です。
1971年4月3日。
ついに、伝説のメリーゴーラウンド「カルーセル・エルドラド」がとしまえんで営業を開始しました。
しかし、さすがに長い年月を経て、塗装がはげる部分が目立つようになりました。 誕生から100年となる2007年、大規模な修復が行われました。
としまえんの遊戯施設課長、佐藤誠さんはそのときのことをこう振り返ります。
エルドラに関しては、芸術的な価値もあるので……
例えば、馬とか塗装がはげちゃったりしても、日本に来たときに塗られて、つい3年くらい前までは塗装すらするのも怖くて、色があせたり剥げたりしてもそのまま使ってきたんですね。 それは「色を塗ることで芸術的な価値をそこなうんじゃないか」ということで、ずっと手をつけずにきて……でもあんまりにもひどくなりすぎて……100年、誕生100年目を迎えるにあたって塗装させてもらったと。
馬も、白で塗ってしまえばキレイになるんですが、白ではなくてトーンを落として、どのくらいの色合いにすればいいのかと打ち合わせをして、この色に塗っているということです。 気は使いますね。
もともとはどんな色だったのか?
カラーの写真が残っておらず、白黒の写真をあてに塗装作業が進められました。
さらに、古い機械であるために、こんな問題も。
古すぎて、部品が手に入りにくいんですね。
モーターにしても、もうメーカーでは製造されていませんので、いざ壊れてしまうと、その部品を作ってもらうところから始めると。
他の乗り物であればメーカーに声をかければ手に入るんですが、エルドラに関してはそれができない。 最近ではモーターのなかのある部品が壊れてしまって、もうメーカーにはないと。作ってくれるところもないと。
しばらく、モーターではない方面から探していたら見つかって、たまたま同じようなものを作ってくれるところがあって、これは代用できるなということで、作ってもらったことがありますね。 これはモーターのなかのスプリング部分なんですが、スプリングを作っている会社ということですね。
ヨーロッパ、アメリカ、そして、日本。
多くの人々を乗せて回り続けるメリーゴーラウンド「カルーセル・エルドラド」。
今年、社団法人日本機械学会が選ぶ「機械遺産」に認定されました。