今週は、世界で活躍する日本人!
ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアという、いわゆるグランツールに参戦したサイクルロードレース選手、新城幸也さんのThe Hidden Story。
今や、世界最高峰の自転車レースに参加する新城幸也さんですが、自転車の世界への扉をひらくきっかけは、意外なことでした。
僕は高校卒業後、大学進学を希望していました。
高校時代ハンドボールをやっていたので、それを大学でもやりたいと思って大学進学を目指していたんですね。でも大学受験を失敗しまして、で、じゃあ何やろうかというときに、父親の友人の福島晋一選手がフランスに来て自転車をやらないかと誘ってくれて、その誘いにあまえてというか、誘いにのってフランスで自転車に乗り始めました。
中学高校では、ハンドボールをやっていた新城さん。
自転車レースに参加したのは、たった一度、高校3年のときのツール・ド・沖縄。
しかし、その一度だけの走りを見た福島晋一選手が新城さんをフランスに誘ったのです。
1ヶ月後。 早くも 新城幸也さんは フランスにいました。
2002年の春。 新しい生活が始まりました。
まずは福島晋一選手、弟の康二選手もいて、ふたりが農家の一角に部屋を借りていて、そこに僕も3人目の兄弟として入れてもらって、衣食住をともにさせてもらいました。
フランスノルマンディー地方。
農家の片隅で暮らしながら、地元のチームに所属して年間およそ40の自転車レースに参加。
ノルマンディーで2年、その後、トゥールーズに活動拠点を移します。
2006年、プロとして チームと契約を果たしました。
最初はもうレースの速さ、あと200キロ近い距離に苦しめられましたけど、人間の適応力はすごいもので、数をこなすうちに適応していったというか、成績も出るようになりましたね。
ステージレースといって、毎日1週間走るレースも増えたので、イタリアも行きましたし、スペインも行って、ベルギーも行きましたね。
転機が訪れたのは、2008年のシーズンが終わるころ。
フランスのBbox Bouygues Telecomというチームへの移籍が決まったのです。
ツール・ド・フランス出場へ向け、新城幸也選手は、いよいよ大きな一歩を踏み出しました。
2009年。 フランスのBbox Bouygues Telecomというチームでツール・ド・フランスへの出場が決まります。
チームメイト25人のなかから9人のメンバーに選ばれたのです。
もうドキドキで、でもいつもと変わらないレースという感じでしたね。
スタッフだったりメンバーは一緒なので、いつも参加するレースと変わんないなと思ったんですけど、いざ始まってみると、お客さんの数だったり、レースの規模があまりにも大きくて、それには驚きでしたね。
初めて体験する3週間におよぶレース。
新城選手いわく、「思ったような走りはできなかった」。
しかし、その経験を活かし、今年は、もうひとつのビッグレース、ジロ・デ・イタリアにも参加。
さらに、2度目のツール・ド・フランスにも出場しました。
全体的には最初のほう、僕らのチームはいい走りはなかったんですが、僕はチームメイトを助けることをしたり、あとは中盤からは、山岳賞というツールドフランスの山岳王を決定する、登りに強い選手が着るジャージがあるんですが、そのジャージを着る選手がチームから出たので、そのお手伝いをしたりとか……最後のほうではチーム名とふたりが優勝するという、僕らのチームとしては最高の結果でしたね。
やっぱりエースのために走るというのは、自転車レースの醍醐味というか、アシストも評価してもらえるので、自分が勝てなくてもチームメイトが勝てば、自分も評価されますし、そういう面では、自分の結果はなかったですけど、すごい楽しいレースでしたね。
チームメイトの喜びは、自分の喜びである。
お互いがお互いを助けるのが、自転車レースなのです。
毎日21日間いつも元気なわけじゃないんで「今日は誰かが誰かを助け、今日は僕が誰かを助け」という、持ちつ持たれつですね。
その日、コースによって得意な選手、不得意な選手があるので、監督が「今日は彼が調子がいので、彼のために走ろう」と、そういうことになりますね。
新城幸也選手、26歳。
最後に、これまでに直面した「壁」について伺いました。
僕は、壁だったことは思いつかないですね。
僕はもちろん、フランスに来ることは、福島選手が助けてくれて、回りの人に助けられてここまで来たので、僕が苦労したなっていうのは特にないんですよね。回りの人に恵まれたということですかね。
もう本当に人間くさい競技なんで、エースのために働いて働いて働くというのが自転車競技なので、僕は回りの人に助けられてここまできました。
「回りの人に助けられてここまできた」 そう語る新城選手。
誰かのために走るのが、自転車競技。 回りを活かし、自分を活かす。
それは、チームのつながりが大きな力となる競技なのです。