2010/10/29 六本木サウンド・クルージングのHidden Story

今週は、六本木周辺のジャズクラブ10数軒が共同開催する音楽イベント「六本木サウンド・クルージング」。
それはどんな想いを込めて始まったイベントなのか? 仕掛人にお話を伺いました。

扉を開けるとそこから流れてくるメロディ。 琥珀色のお酒に氷が溶ける音。 少しネクタイをゆるめた人の笑い声。 東京、六本木。
世界でも有数の忙しい街だからこそ、ストレスフルな街だからこそ、こうした場所が必要なのです。 ジャズクラブ。

11月1日から1週間、六本木にある12軒、そして赤坂の3軒が「六本木サウンド・クルージング」というイベントを行います。

» Roppongi Akasaka Sound Cruising

11年前、1999年に最初4軒か5軒だったかと思うんですが、1週間やりました。 1万円のチケットで1週間何度でも行けるというので始まりました。
そのときは、『ジャズクルージング』という名前で始まりました。

もう大人になってくると、新しい店のドアを開ける挑戦をしなくなりますよね。
僕がこれの発案者なんですが、ライブハウスの仲間達と飲み会がありましてね、次のお店もう1軒行ってもらうにはどうしたらいいだろうと。
クルージングという名前も途中で浮かんできまして「1週間何度でも使ってもらいましょうよ」と決まったんですね。

取材にお答えいただいたのは、「All Of Me」、「My Scotch」、そして 「IZUMI」という3軒のジャズクラブを持つ、金城純一さん。
ジャズクラブを経営するようになって30年以上。 六本木の夜を知り尽くした人物です。

金城さんは、『六本木サウンド・クルージング』最初の年をこう振り返ります。

人数は少なかったんですが、全店に行くお客様、毎日お越しいただくお客様、今以上に多かったですね。 全国的に見て、そういうイベントがなかったんですよね。
だいたいジャズのそういうイベントだと1日か2日、あとは大きいコンサートしかなかったですから、いくつかのお店を回るという発想は、その当時は少なかったですね。

最初は4〜5軒で始めましたけれど、1回2回続くうちに、お客さんの喜ぶ顔を見てるうちに参加するお店も増えてきて、もう11年経ってしまいましたけど。

ジャズをもっと身近に感じてほしい。
1軒だけではなく、もう1軒ドアを開けてほしい。
そんな想いに ジャズクラブの仲間たちが共鳴しました。
回を重ねるごとに参加するお店が増え、今年は合計15軒。
ジャズを愛する人が心待ちにする1週間が、まもなく始まります。

六本木周辺のジャズクラブが共同で開催する「六本木サウンド・クルージング」。
5,000円のチケットを買えば、参加する15軒には何度でも入場でき、ワンドリンクをオーダーすれば、ライヴを楽しむことができます。
そこに集うミュージシャンは総勢127名。
ステージの数は、132回。
さらに今年は……

今回は特別にバー・クージング、9店参加していただいていますが、ミュージシャンがバーを回る。
これはタイムスケジュールは作らないんですが、バイオリンないしアコーディオンがバーに行って演奏する。
今回初めてやるんですが、楽しみにしています。

この「六本木サウンド・クルージング」。
仕掛人の金城純一さんには、ひとつ、大事にしていることがあります。

毎回毎回、参加店をまわって、いろんな話をするんですが、参加する店に4回は行くと思うんですね。 15軒ということは、60軒ですよね。
印刷物を出すだけでは、心が、話が見えないので、顔出す部分で、50〜60回は行きますよね。 特に今年の夏は暑かったですからね、汗びしょで。
でもやはり、お店に行ってしゃべるっていうのが大事でね。 知り合いでもメールのやりとりだけじゃ参加してくれないんですよ。 顔見て説明して、参加していただく。
毎回これは大事だと思ってやってますけど。

メールだけではなく、直接足を運んで話す。 顔を見て話す。
生のコミュニケーションを大切にする姿勢。 それは、金城さんが、長年、ジャズの「ライヴ」を間近で見て来たことと関係しているのかもしれません。

生演奏は聴いたことのない人も多いと思いますが、CD、どんないい音で聴くよりも、生の演奏の魅力というのは、汗だったり、まわりの人間関係のあたたかさ。
ライブハウスのドアを開けづらいという方、多いと思うんですが、そういう方のためにこのサウンドクルージングはあるんですね。

知らないお店のドアを開けやすい。

触れたことのない音楽との出会い、しかもライヴという、一度きり、一夜だけの出会い。
あなたも、人生の新しいドアを開けてみませんか?