宮城県の気仙沼市。
海と山が入り組んだリアス式海岸を横目に太平洋から登る朝日を眺めて、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。体が温まるご飯にしよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
太平洋に面した地域は、変化に富んだリアス式海岸。しかし気仙沼湾の入り口には大島という島があるため、波は穏やか。黒潮の影響で比較的温暖なため、古くから船が出入りしやすい港で近海漁業と遠洋漁業の両方の基地として栄えてきました。
カツオ、サメ、メカジキ、サンマなど、日本有数の水揚げ実績を誇り、養殖も盛んで、カキ、ホタテ、ホヤなどの貝類が名物です。いつも市場には活気があり、にぎわっています。「気仙沼スローフード都市宣言」というものを議会で決めるくらい地産地消の意識が高い土地といえるでしょう。
濃厚な味で、ご飯がすすむ「あざら」と呼ばれるおかずがあります。朝はみそ汁のかわりにもなる「あざら」は、酸味のある白菜の古漬、メヌケと呼ばれる深海魚のあらの部分を、酒粕で煮込んだという、いたってシンプルなもの。発酵が進んで、そのままでは酸っぱい白菜漬けによって、魚のあらのエグミを消し、酒粕と共にうま味を演出するというこの食べ物は、「もったいない」の精神からきています。…というのも3つの食材はいずれも、残り物ともいえるもので、わざわざ調達するものではありません。だからこそ究極の家庭料理、家によって調理方法や味付けが微妙に異なります。独特の味と香りが“やみつき”になる。なかなか気仙沼以外ではお目にかかれない、そんな食べ物です。あつあつのご飯とともにいただきましょうか。