今週は、アメリカのメジャーリーグサッカー、MLSのコロラド・ラビッツの選手として、チームの優勝に貢献した日本人。木村光佑さんの情熱物語。
木村光佑さんのアメリカ挑戦物語、始まりは2002年。
当時、高校生だった木村さんは、川崎フロンターレのユースに所属していました。しかし、高校2年のときにケガ。その後、目立った活躍ができず、プロへの道は閉ざされたかのように見えました。そのとき……
僕のすごく仲のいい友達で、一緒に川崎フロンターレユースでやってた子なんですけど、彼はインターナショナルハイスクールに行っていまして、彼は、こっちでは無理だからアメリカに行って奨学金をもらってサッカーをやろうと。4年間大学頑張ってプロになるのがアメリカでは主流だと聞いたので、もうこれしかないと。
友人、マホロ・イッセイさんから教えてもらった「アメリカへの道」。
しかし……
簡単に考えすぎてまして……結局は、大学に合格しても、英語もしゃべれないと授業取れないじゃないですか。入ったとしてもですね、ある程度成績がよくないと大学にも置いてくれないし、サッカーチームにも置いてくれないんですよ。 そういうのが分かりまして……はたしてどうするかと。
西イリノイ大学への入学を目指し、木村さんはアメリカへ。
ただし、サッカーボールにはしばらく触れることすらありませんでした。
大学で授業を受けるために、語学学校で英語を学ぶ日々。努力のかいあって、なんとか大学には入学できましたが、壁はそれだけで終わりませんでした。
大学入ったのはいいんですけど、最初の2学期、先生の言っていること、まったく分からなかったんですよ。
で、これはヤバイぞと。成績が落ちたら、すぐ監督のところにいくんですよ。
で、どうやったら点数取れるのかと考えて、もう教科書を1冊丸覚えするという……それに気付いたわけですよ。そういうことで最初の2学期は全クラス、テキスト丸覚えですね。
それでアメリカの教科書って高いんですね。だいたい図書館においてあるんで毎日図書館行って、山のように積んで、毎日読んで読んで読んで。なんとか、勉強はやったんですけど、もっと笑えるのが、サッカーはディヴィション1にはいるんだけど、過去の歴が最下位25位だったんですよ。
250チームくらいあるんだけど、最下位25位ですよ。こっからどうやってプロになるんだと??
西イリノイ大学は、全国大会に出たことのない弱小チーム。 ここからどうやってプロになるのか??
木村光佑さんの挑戦物語はさらに続きます。
西イリノイ大学のサッカーチームに所属してプロを目指していた木村光佑さん。弱小チームのキャプテンに就任し、熱くチームを鼓舞します。西イリノイ大学サッカー部は初の全国大会出場を 果たしました。そして4年生のときの全国大会、そのプレーをプロの目が見ていたのです。
だからもう、そこまで行くまで、すごいあれでしたよね。本当にもうどん底ばっかりで。
メジャーリーグサッカーのコロラド・ラピッズがドラフトで指名。
ドラフトに入ってもですね、それはただ、プリシーズンキャンプに呼ばれるだけなんですよ。サインはしてくれないんですよ。で、行ったら、「君たちいるけど、でもこのプリシーズンでダメだったらサインもしないから」と。
もういっぱい切られるわけですよ。みんな上手いんですよ。名門の大学でやってた奴ばっかりで、僕くらいなんですよ、大したことない大学で、たまたま全国大会行ったことがあるみたいな。まあ、それで何とか入ったんですけど……
コロラド・ラピッズに入団。念願のプロ選手となりました。
ミッドフィールダーだった木村選手……転機となったのは、右サイドバックにチャレンジしたことでした。そして2007年9月、たまたま右サイドバックのレギュラーがケガをして木村選手が起用されたのです。
わずかなチャンス……がっちり掴みました。
2010年。コロラド・ラピッズは優勝を果たします。
深く印象に残るのは、MLSカップ決勝進出をかけたサンホゼ戦。
試合前にですね、うちの監督、いつもすごい神経質なんですね。たまたまミーティングルームにひとり座っていたんですよ。そしたら監督がすごい険しい顔してやってきて、「お前がきょうやる相手、誰か分かってるか」と。「サンホゼです」。「ちがうよ」と。「相手の左サイドだよ、あいつニューヨーク相手に2ゴール1アシストだぞ」と。
もう「負けんじゃないか」くらいの顔してるわけですよ。で、僕は寄って行って「大丈夫だと、俺が決めてやるから」と。そしたら、監督はすごい顔して「いやいやいや、お前は今日は1回も上がんないでくれ」と。だからダメんなんだと。俺はどんどん上がるよって……そしたら「おうお前とは話しても無駄だ」って出て行って……で僕がゴール決めて勝ったじゃないですか。終わって監督のそばに行って「だから俺が決めるって言っただろ」って。そしたら泣きそうな顔して……(笑)
MLSカップFinalは、ダラスを相手に2-1で勝利して、コロラド・ラピッズ初優勝。
何度も崖っぷちにたった男がつかんだ栄冠でした。