黒海の北西部にある、モルドバ共和国。凍てつく丘陵地帯にあるブドウ畑の真ん中で、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。温かいスープにしよう。だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
西にルーマニア、そしてそれ以外はウクライナと国境を接している内陸国のモルドバ。九州よりもやや小さいくらいの国土に、およそ360万人の人口という小さな国家です。寒暖の差が激しく、紀元前からブドウやリンゴの栽培が盛んです。
そのためワイン作りの歴史は古く、紀元前500年にはすでにローマ人がモルドバ・ワインを飲んでいたとされています。そして中世にはヨーロッパの王侯貴族たちが、この地のワインを好んで飲み、1878年のパリ万博ではワイン部門のグランプリに輝きました。
50年ほど前、石炭の採掘場の跡地を利用して作られた国営の地下貯蔵庫には、150万本以上のストックがあり、その長さは何と全長55kmにも及びます。世界中のワインが輸入される日本でもモルドバ・ワインはそれほどポピュラーではありません。しかし銘醸ワインは、かつては一部の人々しか味わう事が出来ず東西の冷戦が終わって、ようやく知られはじめたといえるでしょう。
骨付きの鶏肉を丸ごとのタマネギ、そして卵と小麦粉を混ぜた生パスタのような生地と一緒に煮込み、スライスしたニンジン、タマネギをさらに鍋に入れて作るスープの「ザーマー」。ブイヨンのような「ザーマーの素」がスーパーでも売られているモルドバの伝統的な料理です。
あっさりした鶏ガラスープという味で、野菜も摂れるヘルシーなスープで朝のスタート。パセリをまぶして、さあ召し上がれ。
モルドバのもうひとつの名産物であるリンゴも国民食で、1日に何個もリンゴを食べ、1人当たりの消費量は世界でもトップレベル。朝ごはんには「プラチンタ」というパイにして食します。