2011/2/18 石井ゆかりさんのHidden Story

今週は、2010年に発売した占いの本『12星座シリーズ』の発行部数が61万部という、石井ゆかりさんのHidden Story。

近頃、特に若い女性に人気の「筋トレ」があると聞きました。
でも、それは、筋肉をきたえるトレーニングのことではありません。

» 筋トレ

ライター、石井ゆかりさんが主宰する星占いを中心としたウェブサイトの名前なのです。
一風変わったタイトルを掲げる石井さん。 星占いも昔から興味があったわけではありませんでした。

「ちっちゃいころから好きだったんじゃないか」と思われるんですけど、全然そうではなくて、22、23歳のころまでは興味がなくきて、そのころにずっと付き合っていた人にふられたんですね。 そのときのふり方が「他に好きな女の人ができた」というふり方だったんです。 その女の人って誰なんだろうと思って……詳しくは分からなかったんですが、噂で「星占いができるらしい」と聞いて。 「星占いができるってどういうことだろう」と。なので、本屋さんに行ったら、たまたまそこに星占いの入門書があって。その人にできるなら私にもできるじゃないかと。なかば逆切れ的な感じで始めたんですね。

IT系の会社に入った石井さんは、その技術を使ってウェブサイトを立ち上げます。それが「筋トレ」。

最初、サイトを作るときに、きらきら星占いみたいなのにするとかっこわるいかなと思って、あと私もともと文章を書きたいと思っていたので、その修行になればというか、占いっていろんな人の悩みとか人間関係のつらさとかを生で見られるメディアなので、そういうのを見たり、一緒に考えたりすることで、文章に深みが出たり、書きたいことが生まれたりするんじゃないかなと思いがあって、筋トレとつけました。
でも間違えてくる人もいて(笑)掲示板も筋トレ掲示板っていうのにしたので、間違ってきた男の子がどういうプロテインを飲めばいいですかとか、そういうのもあって結構面白かったです(笑)

やがて、1週間の星占いを各星座ごとに解説する「筋トレ週報」がスタート。
無料でアクセスできることもあって、口コミでじわじわその存在が知られていきます。

無料だからこそ、得るものが大きかったんだろうなと思います。そのフィードバックっていうことは。別に統計的に情報をとっているわけではないんですが、日々、こういう風に占いをしたらみんながこういう風に反応をしてきた、というのが、それは嬉しいものでもちょっとつらいものでも、そのフィードバックによって私が私のコンテンツをまたブラッシュアップしたり、っていうことを無意識にまわしてこれたんじゃないかなと思うんですよね。やっぱりそれは読み手の善意というのがすごくあって、それに対してある意味、私はお礼をするような形で週報を書いているという面があると思います。

お互いに与え合っているというか、お礼をし合っているような関係なんじゃないかなと思うんですけどね。

石井ゆかりさんの星占い。
人気のもうひとつの理由は、その文体にあります。
たとえば、今年のさそり座については……

「貴方が、自分の心の中心に果実の種を硬く強く膨らませるように育んできたその「芯」は、ここから大いにその威力を発揮することになるのです」

» 石井ゆかり12星座シリーズ WAVE出版公式サイト

この文章はどうやって生まれるのか……?

去年発売した占いの本が61万部発行。
彼女が書く占いの文章は、表現にさまざまな工夫が織り込まれていて、それが多くの人を惹きつけています。

意識して美しく書こうとかそういう感じではないんですが、ただ誰が読んでもいいように書こうというのはいつもあります。

おばあちゃんと一緒に読んでいますという中学生の女の子とか結構いるんですね、あと今おなかが大きい女性もいれば、婚活中の方もいるし、裏切られたばかりという女性もいれば、男性もいるし、いろんな立場の方がいらっしゃって、そういう方が読んだときに、誰が読んでもどこか自分に引きつけて読めるようにしたいなと思っています。

星占いの体系自体が女の子向けにできているわけではないので、人間の心にあるものがそこにはあるので。

「人間の心にあるものがそこにはある」。
喜び、期待、不安、裏切り、嫉妬。
それぞれの人が、それぞれの想いをのせて、彼女の言葉を読むのです。

基本的なスタンスとしては、私は星占いをやってますが、本当はそんなものなんかないほうがよくて、自分で自分の問題と正面から立ち向かっていったほうがいいと思うんです。 でも、昔から星占いはあって、全然なくならないのは、やっぱり人間の心がどうしてもそれが必要だと思っちゃってるからだろうなと思うんです。 で、そういうメディアを使ったときに、どういういいことがあるか、私には分からないんですが、でも、みんな状況が悪いときって状況が変わらないと思ってますよね。 ふられたら、そのつらい状況が変わらないと思うんですよね。 でも、占いを見ると「変わる」って書いてあるんです。 そのいつかは変わるということを「思える」ということに、占いのわずかに良いところがあるんじゃないかなと思います。

週間星占い「筋トレ週報」の読者は、およそ15万。
さらにtwitterでも毎朝、その日の12星座の占いを発信されています。

よく「毎朝続きますね」と言われるんですが、これは体験すれば誰でもそうだと私は想像するんですが、何千人だか何万人だか、全員じゃないかもしれなけど半分くらいは待ってると思うと起きますね、二日酔いでも(笑)。二日酔いのときは漢字一文字とかになっちゃうんですけど(笑)。とりあえずやめないという。

「本当は占いなんて、ないほうがいいのかもしれない」と言う石井さん。
占い師とは名乗らず、ライターであるという立場を崩しません。 でも、待っている人がいるから、毎朝、毎週、占いを書く。 人間の心が求めている何かが そこにはきっとあるはずだから。

「筋トレ」は明日も続くのです。