2011/4/8 本屋大賞の誕生秘話

今週は、まもなく、今年の大賞が発表になります、本屋大賞の誕生秘話。
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本屋大賞。
誕生のきっかけは、2003年の初めに発表された第128回直木賞でした。

直木賞がきっかけで、そのときの候補作が6作くらいあったんですが、どれもすごい作家のすごい作品ばかりだったんですね。
おひとかた、横山秀夫さん以外は後にみんな直木賞作家になられたくらいすごい候補作で、現場の書店員としては「どれが獲ってもかなりの売り上げが見込める」と、ものすごく楽しみに待っていたんですが、結果は「該当作なし」と、なってしまって、それで文芸作品の売り上げが打撃を受けてしまったんですね。

文学賞の結果に売り上げを頼る。
「書店員として、それでいいのか?」
関東近郊の本屋さん、出版関係者など10人ほどが集まって話し合いを持ちました。
オリオン書房の白川浩介さんは、当時をこう振り返ります。

とにかく祭りがないと業界が盛り上がらない。

祭りにして、本屋のヘビーユーザーではなくて普段本屋に足を運ばない方でも、ちょっと話題になったから読んでみようというお客様を本屋に足を運んでもらう工夫をしよう。そのためには祭りだと。
それには小学校の時「よくがんばったで賞」みたいなのがありましたが、本屋がやるんだから本屋大賞にしよう、というくらいの安直なネーミングで始めたものなので。

「本屋大賞」、第一回の開催が決まりました。
本屋さんが選ぶ、お客さんに読んでほしい本とは?
投票が始まりました。

最初は100人くらいじゃなかったかと記憶してます。
日本人作家がその年に発表した新作というしばりしかないんですね。まず、そのなかで上位3作品をおのおのに選んでいただきます。それをポイント制にして集約して上位10作品を2次ノミネート作品とさせていただいています。2次選考に参加する書店員はその10作品をすべて読んで再投票します。もう一度それでポイントをとりなおしてその上位1位が大賞ということにしてきました。第一回目も実は2次投票の前は別の作品が1位だったんですけど、2次投票の結果、1位が『博士の愛した数式』。

2004年4月。最初の本屋大賞が発表されました。
大賞に輝いたのは、小川洋子さんの『博士の愛した数式』でした。

オリオン書房の白川浩介さんは、その売り上げの推移をドキドキしながら見つめていました。

新潮社さんの『博士の愛した数式』という本が大賞だったんですが、新潮社さんも全く海のものとも山のものとも知れないところから「本屋大賞になったんで増刷してください」と言われて、どのくらい作っていいか分からないと言われて、それでも作っていただいたんですね。で、それが売れないと本当に迷惑をかけてしまうので、まあ何とかこのくらいは売れて欲しいなと、結果、それでは全然追いつかなかったんですけど、発表会が終わってホッとしたんですけど、次の日からはデータとにらめっこする日々でした。

当初、出版社は、大賞受賞に際し5千部の増刷で対応しましたが、結果、『博士の愛した数式』は単行本が50万部、文庫本で120万部という 大ベストセラーに。
本屋大賞の知名度も一気に上昇しました。
以後、回を重ねるごとに投票者も増え、去年は全国の300以上の本屋さんが参加しました。

私もまったく存じ上げないような本屋さんから投票いただいたり、あと、第一回第二回の投票になんとか書房の経理の方が参加いただいて、私は経理担当なんだけどこの賞は書店員であればどんな立場でも投票できるということで本が好きで参加しました、でもその本屋さんが出版不況のなかで閉店すると、私はもう参加できないんだけど頑張ってくださいとメールいただいたときは、もう本当にみんな、涙でしたね。

オリオン書房の白川浩介さんは、最後にこんな話をしてくれました。

確かに文学作品は、読んだからと言ってすぐに電気が通るわけではないですし、水が通るわけでもないし、その、個人の心の中での現実とかリアルって何だろうと考えたときにやっぱり物語の持つ力というのは大きいなと。フィクションだと分かったうえでもリアルの世界に大きな影響を及ぼすのが物語の素晴らしいところだと思うので、震災は大きな出来事ではあるんですけども、我々も及ばずながらそれを読者に届ける一助をこれからも続けるつもりで、そのための一つの工夫として本屋大賞はあると思いますので。

今だからこそ、心に響く物語を。
第8回の本屋大賞は、来週火曜日に発表されます。

今年で8回目を迎える、ということですが、今や、全都道府県の本屋さんが投票に参加。
大きな広がりを持つ賞となりました。
授賞式は、来週火曜日、東京で開催されるんですが、毎回、大賞を受賞した作家さんにはあるプレゼントが贈られます。
それは、「授賞式に出席する本屋さんが書いたポップ」。
受賞作品を売る時に書いたポップ、さまざまな言葉がつづられたポップが贈られるそうです。

はたして、今年(2011年)、それを受け取るのは どなたなのか?
第8回本屋大賞は、4月12日(火)に発表されます。