今週は、携帯できる電動ハブラシ。パナソニック 「ポケットDoltz」の開発秘話。
今や大人気商品となっている 電動ハブラシ「ポケットDoltz」。
開発が始まったのは、2009年の春。
パナソニック株式会社の石橋絵里さんは、当時をこう振り返ります。
女の方にオーラル意識が高まっているという背景がありまして、女性に電動ハブラシを普及できるんじゃないかという想いはあったんですね。そのときに、例えば、家電メーカーじゃないですか。お昼ごはん食べたあとは歯磨きというのはたいていの方が、特に女性はトイレの中にロッカーがあって、そこにハブラシも常備してあって、ハブラシだったり化粧なおしの道具だったりとか、食事のあとに手入れをする道具が入ってるんですね。そのひとつがハブラシなんですけど、、、でも、家電メーカーのパナソニックの女性の社員であっても、そのハブラシというのは電動じゃなく、手動なんですね。
ランチタイムの歯磨きに電動ハブラシが使われない理由はどこにあるのか?
その答えにこそ、新商品のヒントがありました。
その理由は何だと聞いていったら、電動ハブラシ特有の音だったり、重さだったり、かさばる、あとやっぱり、本格的な器具という意識が強かったみたいで、電動ハブラシの歯垢がよくとれそうとか良さは知っていても、外出先で使うものの対象にはなってなかったんですね。
だったら、重い、かさばる、音がうるさい、という電動ハブラシのデメッリトを払拭することができたら、電動ハブラシに新しい風じゃないですけど、何か可能性があるんじゃないかなというのが発端でどんどん開発が進んでいった流れになります。
重い、かさばる、音がうるさい。
ここを改めれば、ランチタイム磨きに使ってもらえる。
しかし、それを実現するには、従来の電動ハブラシを作ってきた技術スタッフを説得する必要がありました。
携帯用の電動ハブラシというのは開発の方にも頭のなかにはなんとなくあったとしても、そこに需要とかニーズがちゃんと見られていない状態で、何となく構想はありながら、でもそこに進むのではなく、今ある電動ハブラシにいかに付加価値をつけて、より高度な歯垢除去だったりとかパナソニックがこだわっている歯茎へのやさしさとか、技術的なところの向上にいかに注力できるかということに開発の方も含めて目が向いていたんですけど……
とにかく技術からしたら、技術の方のプライドもあるじゃないですか。だから、いかに技術力でお客様への価値向上ができるかというところをずっとやってきた方ばかりだったので、その方たちからしたら、電動ハブラシを電動ハブラシらしくないものにしてください、っていうマーケティングの想いとは相反するところにあったんですよね。
石橋絵里さんは、滋賀県の彦根にいる開発スタッフのもとをたびたび訪ねました。
本当に今、雑貨屋さんに行っても、ハブラシ専用のポーチが売っていたり、携帯するようなオーラルグッズがどんどん出て来ていて、そういうのを1個1個説明したりとか、ハブラシポーチを私も商品担当になってから買ったんですけど、それを水戸黄門じゃないんですけど、こんなんだ!と見せながら説得して、へえこんなんあるんだと新しい気づきがあって。そこでかたくなに「でも技術を」というのではなく、やはりずっと市場が低迷していて厳しいというのはお互い認識があったので、もし可能性があるんなら一緒にやっていこうと理解してもらえたので、それは助かったと思っています。
商品がターゲットとするのは、女性のランチタイム磨き。
そこには徹底的にこだわりました。
電動ハブラシって言ったらハブラシ売り場に置かれるのが当たり前だと思うんですが、今回は特に、ランチタイム磨きをしているOLさんを手動から電動にスイッチさせたかったので、じゃあそのOLさんがどこでハブラシ買うの?って言ったら、今まで家電量販店てわけじゃなくて、ドラッグストアとかホームセンターとか身近なお店だったりするわけですね。
だからとにかく「家電量販店だけでなくそのほかのルートにどれだけ広げられるか」ということころでいろいろ考えたくて。
例えばドラッグストアの化粧品売り場だったりとか、ホームセンターだったらランチボックスとかランチのボトルの売り場だったりとか。
家電の売り場だけでなく、違うジャンルの売り場にも置いてほしい。
切り札は、デザインの中心コンセプトともなる、ひとつのキーワード、「マスカラのような電動ハブラシ」。
じゃあ、ごはんを食べたあとに女性はどういう行動をするの?っていったら、化粧ポーチを持ってトイレで化粧なおしをすると。そのときに、ポケットDoltzを持って行ってほしかったので、まずポーチに入るサイズであること。そして、ポーチに入っていても違和感がないこと。だから、電動ハブラシらしくない電動ハブラシにこだわりたかったので、マスカラのような電動ハブラシを目指した、というのが本当のところですね。
「マスカラのような電動ハブラシ」。
このアイディアが生まれた秘密。 石橋絵里さんはこう語ります。
ポーチのなかに入っているものを見ていったなかで、まず女の人って目を何とかしたいって思いが強いんですよね。目元が何とかなったら意外とスッピンでも何とかなったりするので(笑)。OLにとって必需品というところでマスカラというアイディアがあったのと、、まあそこですね、どんな人でもマスカラは入っていたりするので、まず必須アイテムであり一番身近なアイテムなのでまずそこを目指そうという話になっていましたね。
2010年4月21日、「ポケットDoltz」は5色で発売開始。
マスカラで目元を、そして、お口は電動ハブラシで。
ヒット商品を生んだのは、若き女性社員のアイディアでした。