今週は、街のデッドスペースに注目してビジネスを展開中、「軒先.com」のHidden Story。
軒先.com。代表を務めるのは、西浦明子さん。
まずは、どんなビジネスを行っているのか、教えていただきました。
軒先.comは、非常に平たく言えば、不動産の仲介業に非常に近いビジネスなんですけど、一番違うのは、不動産業が扱っていない物件ばかりを扱っていて、そういう場所を貸してくださる方と使ってくださる方をマッチングするというサービスをインターネット上で展開しています。
不動産業者さんが扱っていない物件というのはどういうものかといいますと、例えば使っていないご自宅の駐車場ですとか、ビルのデッドスペース、例えば軒先ですとか、ビルの屋上ですとか、そういういわゆるデッドスペース。 あとは、通常の不動産取引の物件でも長期の契約が決まるまでですとか、あとはテナントさんがつくまでのアイドルタイムですね、そういう使っていない時間を仲介させていただくビジネスをしています。
西浦さんがこのアイディアをひらめいたのは、2007年の夏。
ご自身の体験がきっかけでした。
それまでは私は会社勤めをしていまして、2007年に子どもを妊娠したのをきっかけに会社勤めをやめました。 出産後は自分のペースで仕事をしていきたいなと思っていて、海外から雑貨を輸入して販売するネットショップをひらこうかなと思っていました。 で、その商品というのが日本では馴染みのない商品を販売したかったので、そのテスト販売的な場所、お客様の反応を見るための場所を探したいなと思っていた時期があったんですね。
そういう場所を具体的に探し始めたんですけど、残念ながらモノを販売できる、いわゆる店舗として短期で借りられる場所がその当時ほとんどなくてですね。
商品のテスト販売のために ちょっとしたスペースを借りたい。
ショッピングセンターのエスカレーターの下。 商業施設のエントランス脇。 そして、定休日のお店の軒先。
西浦さんの目には、そうした場所が輝いて見えました。
私と同じようにこれから何かを始めたいとか、テストしたいとか、短期的に何かトライしてみたいという方は世の中に大勢いらっしゃるんじゃないかなと想定ですが思ったんですね。
そういう方が気軽に使える場所を提供をすれば、もっと多くのニーズがあるじゃないかなと思ったのが最初です。
西浦さんの心は固まりました。
ビジネス・チャンスあり。
開業の準備がスタートします。
2008年4月、ウェブサイト、オープン。
最初は物件集めに苦労しました。
その当時は、物件数、1ケタでしたね。 8軒とか9軒とかでサイトをオープンしました。
難しかったです。 今も苦労しているのは、物件の確保がまだまだなんですよね。
というのも不動産を持っている方ご自身が、そもそも「自分の持っている不動産を一日単位で貸したり運用できる」というのをご存じないので、行動を起こされないんですよね。
しかし、思わぬことがきっかけで風向きが変わります。
2008年の秋にリーマンショックがありまして、不動産を巡る状況が一変したんですね。
不動産の市況自体が悪くなってしまって、持ってらっしゃる不動産物件が売却できないとかテナントがつかないということになりまして、それまでは不動産を持ってらっしゃる方も、「いやいや軒先なんて貸さなくても大丈夫」とか、「一日単位とか、一週間単位で貸さなくても大丈夫」という声が多かったんですけども……ちょうど割と大手の不動産会社さんからですね、「売却予定のビルを3〜4棟持っているんだけど、買い手がつかないので、わずかでも収入がつくのなら貸し出したい」ということで登録いただいたんですよね。
売却予定となっていた、四谷三丁目にある4階建てのビル。
この物件を貸し出したことが大きな事例となり、これ以後、ビジネスが加速します。
最初は本当に軒先という言葉から連想されるような小さな場所で一時的に、というのを想定していたんですが、使われていない不動産っていろんなパターンがあって、大小問わずいろんな不動産が対象になるなというのをやりながら気づいてきました。
軒先.comの代表、西浦明子さんに、最後に伺いました。
今後の目標はどんなことですか?
実はこのサービスを海外で展開したいと思っています。
今、Shareという言葉が世界的にもポピュラーになって、シェアビジネスというのがすごく盛んだと思うんですが、いわゆるこういう商業目的で使うスペースをシェアするというサービス。
それから「軒先」という言葉を海外でも広めたいなと思っていて、日本発の軒先ビジネスを海外でも……国によって状況は違うでしょうが、試してみたいと思っています。
物理的な「軒先」だけじゃないですよね、日本の場合の軒先って。 雨宿りをしたりとか、一時的な、Temporaryという意味も含まれている気がして。海外でも軒先ビジネスというのが可能性としてあるのかなというのを探ってみたいと思っています。
軒先だからこそ、できること。軒先だからこそ、出会える人。
流動的な空間をシェアするビジネスが新たな可能性の扉を開きます。