2011年 最後にお届けするのは、今年、日本に元気をくれたあの瞬間。
なでしこジャパン、FIFA女子ワールドカップ優勝の軌跡を、ディフェンダー、岩清水梓選手の言葉と共に辿ります。
今年6月終わりから7月にかけて、ドイツ開催されたFIFA女子ワールドカップ。
日本はまず、ニュージーランド、メキシコ、イングランドとグループステージを戦いました。
初戦の相手は、ニュージーランド。いわば、格下のチームでした。
しかし……
「やっぱ初戦だな」というか、「難しいな」という印象はありましたね。
本来だったら苦戦する相手ではないかもしれないですけど、ワールドカップという舞台で戦う、そして相手も真剣に勝ちにくる、というなかでやると……ん〜、私ディフェンダーなんで、ミスから失点したりそういうのがあったんで……やっぱ、観客に飲み込まれたりとか、雰囲気に飲み込まれたりとか、まあ、ちょっとずつね。
前半はかなり緊張しましたよね。声が聞こえないんですよ、思っていたより。言ってみればドイツのカードじゃないじゃないですか。日本とニュージーランド、地元のカードじゃないのにすごい応援が聞こえてきて、それでコミュニケーションがとれなったのは予想外でしたね。聞こえづらかったですね。
予想外の苦戦を強いられたニュージーランド戦、宮間あや選手のフリーキックで何とか勝ち越して、2-1で勝利。
2戦目、メキシコ戦は、澤穂希選手のハットトリックなどで、4-0と快勝して、グループステージ突破を決めます。
3戦目は、イングランド戦。0-2で敗れました。
まあ、そこで「負けて良い」とは言いませんけど、負けた事でいろいろ話し合うこともできたし、チームも引き締まりましたし、あれがあっての優勝とは、今なら思いますけど。
(ディレクター:試合のあと、あらためて話し合いを持ったんですか?)
そうですね、次がドイツって決まってから、私たちディフェンスとキーパーで話し合ったりとかそういうのはありますね。
相手が高さを使ってクロスボールで攻撃してくると予測して、そこって身長差が出たりウィークポイントなので、「そこを、どう対応するか」っていうのは話し合いましたね。やっぱ人を捕まえて、相手を捕まえておなかいと、その間にボールが落ちて来たときにやられちゃう、というのがあるので、だったら1対1で相手を捕まえて、自分がボールに触れなくても相手も触れない、体寄せて、クリアできれば一番良いですけど、体寄せてシュートを打たせないという方に切り替えて、それで対応しましたね。
ベスト8。対戦相手は、開催国、ドイツ。
あれはすごかったですね……てか、一番小さな会場でよかったなと。
確か2万5千人とかだったと思うんですけど、ほかは4万人とかだったので。それでもお客さんがみんなドイツ応援じゃないですか、すごかったんですけど、でもまあこれで良かったのかなと。でもまあ、耐えて耐えてでしたね、最初は。でも、相手のイライラも見えてきて、焦りみたいなものも相手の顔に出始めて。いつか点がくると信じてたんで、それがあの時間でくるとは思いませんでしたけどね。
若干、自分の中ではPK戦かなとチラついてたんですけど、ああ、PK戦やるのかなと思ってたときに、桂里奈ちゃんが……あれは超嬉しかったですね。
0−0で迎えた、延長後半。丸山桂里奈選手が決勝ゴール!
日本はドイツに勝って、ベスト4進出を決めたのです。
(ディレクター:決まった瞬間どういう行動を?)
ちょっと遠かったんですよね。
自分たちも疲れちゃってラインが上がらなくて。
「入ったの?」みたいな。すっごい遠くって「うわ〜」と思って、走って輪に入りに行って。
それも遠かった気がする(笑
FIFA女子ワールドカップ、準決勝は、スウェーデンに3-1で勝利。
なでしこジャパンは、決勝へと駒を進めました。
優勝をかけた対戦相手は、これまで勝ったことがない相手、アメリカ。
ディフェンダー、岩清水梓選手はこう振り返ります。
「楽しもう」と思って試合に入ったんですよ。
けど、キックオフ早々の猛攻で「そんなこと考えてられない」と思いました(笑。
楽しんでられないというか、楽しむ前に抑えなきゃというか。最初、ヤバかったです。「うわ〜、決勝でアメリカだ」って、そこで身をもって感じました(笑。
それまでは決勝だ、最後だ、楽しもう、勝てたらいいなとか、いいことばかりしか考えてなかったんですが、笛がなった瞬間、変わりました。
69分。先制したのは、アメリカでした。
81分。日本は、宮間あや選手のゴールで追いつきます。
1-1。試合は延長へともつれます。
勝ち越したのは、アメリカでした。
しかもエースのワンバク選手のゴール。
あれは、がっくりきましたね。
延長で先に取られるって。あ〜〜って思って。2回……2回追いついたことってないよね、過去に、アメリカに。ああ、もうヤバい!と思った。そんときかも。澤さんが声かけてたの。本当に自分が、がっかりしたときに、澤さんを見た。自分の近くにいたから、澤さんを見たら声をかけてたので、また顔が上がったというか。
キャプテン澤穂希選手の声が、チームに再び力を与えました。
そして、終了間際。日本、コーナーキックのチャンス。
岩清水選手も最終ラインから攻撃に参加していました。
澤さんと、夢穂と、あやで合図してたと思うんですけど、まあ、ニアのほうに、ゴール近めにボールが飛んで行ったら、その「こぼれ」があるかもと思っていたので、ニアにいけ、と思っていたら、そこで入ったから。
あ、ニアに行ったと思って、こぼれ球を狙おうと思っていたらそこで入ったので。あれ逃したらもうなかったと思います。そのあとは「もう、守らなきゃ」という感じでしたね。
このあと、岩清水選手はレッドカードで退場。
PK戦はピッチの外で見守るしかありませんでした。
海堀と仲いいんですけど、あいつがPK得意なのも知ってたし、「頼む!」と思って。
「あいつ1本は止めるだろう」という、なんかこう、ありましたね。
現地時間7月17日。
なでしこジャパン、FIFA女子ワールドカップ優勝。
喜びの輪は、ドイツフランクフルトのスタジアムから早朝の日本へ。
久しぶりに、列島に笑顔があふれた朝でした。