西アフリカのセネガル。
その昔、首都だったサン・ルイの街に向かう、木でできた長い橋の上で、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました、地元の朝ごはんにしよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
首都ダカールから車で北へ3時間あまり。モーリタニアとの国境地帯にあり、川と海にはさまれた小さな島が街になっているサン・ルイに到着します。バナナの葉で出来た屋根などの家が連なる、いかにもアフリカらしい雰囲気の集落が多い中、この街だけは違います。水色やピンクなど、パステルカラーでカラフルな壁の小さな家が立ち並び、いかにもフランス人中心の居住区によくある、コロニアル様式の街並み。ここは『星の王子さま』の作者サン・テグジュペリゆかりの土地なのです。
サン・テグジュペリがサン・ルイを訪れていたのは、20世紀はじめ。郵便を運ぶ飛行機のパイロットだった彼は、体験をもとに『星の王子さま』『南方郵便機』、そして『夜間飛行』などの名作をしたためました。フランスからこの地を経由して南米に向かう。そんな重要な中継地点のサン・ルイには、航空郵便を扱う会社があり、パイロットたちはその会社が経営するホテルに宿泊していました。
その名も『オテル・ドゥ・ラ・ポスト』。
今なお残る古い建物の小さなそのホテルの中は、飛行機をモチーフに、当時をしのばせるポスターや地図などで装飾が施され、サン・テグジュペリが宿泊した部屋がそのまま保存されています。
ホテルではフランス人を中心とした旅行者向けにパンとコーヒーの朝食が中心ですが、この街では「チェブジェン」と呼ばれる、パエリアのようなごはんが名物で、現地の人々の日常食です。まず大量のピーナッツ・オイルで、ニシンの一種の魚とにんにく、タマネギを素揚げするように煮込みます。そしてトマトソースを入れてさらに煮込みます。そこにナスやカボチャなどの野菜を水と共に入れて、鍋がぐつぐつと煮えてきたら野菜と魚を引き上げます。砕いてクスクスのようになったお米を、その残りのスープで炊いて、最後に取っておいた具材を炊き上がった米の上にかけて出来上がり。暖かいうちに召し上がれ。
アフリカのお米は、日本のお米よりも細長くて堅いインディカ米が主流です。
だから白米で食べるのではなく、ピラフやパエリアのような料理が合うのかも知れません。