2012/3/2 AMP MUSICのHidden Story

今週は、アフリカのストリート・ミュージックを世界に広めようと、ふたりの日本人が立ち上げた音楽レーベル「AMP MUSIC」のHidden Story。
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音楽レーベル「AMP MUSIC」を作ったのは、梅本優香里さんと、斉藤隆祐さんです。

斉藤さん:当時、ケニアのナイロビにベースを置いて援助関係の仕事をしていたんですね。
そこの中で人の紹介で、ナイロビにいるんだったら、コッチといういわゆるスラムエリアがあるのを教えてもらって、で、音楽に限らず、若い起業家とコミュニケーションをとる機会があって。

ケニアの首都、ナイロビ。いわゆるスラムが大規模に広がっています。
コッチもそのひとつで、そこに暮らす人は、およそ十万人と言われています。

斉藤:非正規の居住地なので、人の出入りも激しいですし、ほんとにトタン屋根の住むところがずーっと並んでいて、一説によると10万人くらいと言われますし、トータルすると数百万の人がナイロビのスラムに住んでいると言われています。

梅本:だからひとつの街ですね。すごい都会なんですよ、ナイロビって。
人口密度がもともと高いところに、スラムになるともっと高い。ほとんどの人は若い人ですね、スラムの中は。半分くらいは子どもですね。平均寿命が若いので……

梅本さんと斉藤さんは、そんなコッチで、FMラジオ局のスタッフと出会いました。

斉藤:コンテナなんですよ。

梅本:コンテナハウスです、スラムによくあるんですけど、その中に小さなスタジオがあってそこでDJして自分たちで放送しているんです。
で、その合間に地元のインディーズの曲を流しているんです。すごい小さいですよ。
スラムのミュージシャンはナイロビのFM局に持って行っても相手にもされないというか、でも、コッチFMだったらかけてもらえる。

なんかね、CDがいっぱい積んであるんですよ。インディーズのミュージシャンがたくさんいるんですよ、コッチのなかに。インディーズというか、自分の貯金で録音スタジオ代を払ってCDを作っているんだけど、売るあてがなくて、だから、ただCDを持っているという人がいて。

斉藤:実際、聴かせてもらって、ミュージシャンにも会って、基本的に彼らは売りたい気持ちはあるんだけど、実際には、音楽はローカルでは消費されないものというか、お金にかわるものではない。買うだろう人は世界中にいるはずなのにもったいない、「そのギャップを埋められたらいいな」と、ふたりで話していて、こういう形になったんですね。

アフリカ、ケニアのミュージシャン、フィリップ・ノルダン『Hope & Pray』

斉藤:ケニアは、2007年に大統領選挙があって、そのときに、いろんな民族同士の「いがみ合い」があって、実際にかなりの人が亡くなって、ということがあったんですね。彼はそれを嘆いて、そもそも俺たちはひとつだろ、と希望と祈りを捧げる歌なんですね。
彼、なんていうんですかね、器のでかい優しい男なんですけど、彼がやさしいレゲエのリズムで歌うっていうのがですね、コッチのミュージシャンのひとつの象徴だなと思っているんで。

この曲も、アフリカのストリート・ミュージックを世界に広めたいと、梅本優香里さん、斉藤隆祐さんが設立したレーベル、「AMP MUSIC」からリリースされた1曲です。

AMP MUSIC。その名前の由来は?

斉藤:いわゆるスタジオにあるアンプリファイアーからとったのがひとつ。ただそれだけだと面白くないね、と話していて……いろいろ考えていたらAfrican Music Powerの略とこじつけられるね、と発見して(笑)そういうダブルミーニングで、AMPとなりました。

梅本:いろんな国で好きになってくれる人がいるだろうと思ったんですよね。世界を市場にしたいと思って。

聞いてもらいたいんですよね、みんな。
自分の曲をとにかくいろんな人に聞いてもらいたい。だからラジオで流れて、色んな人が聞いてくれるって、考えただけですごく嬉しいみたいです。みんなの頭のなかではいろんな国の人が自分たちの音楽を聴いている様子が思い浮かんでいるんですよ。それで嬉しいんだと思うんです。

「AMP MUSIC」の梅本さんと斉藤さん。
昨年11月にアフリカ、ケニアに赴きました。

斉藤:特に国境付近は干ばつの影響を受けていますし、一番大変なのはソマリアですけど、ソマリアから難民、避難民という形でケニアとの国境付近のキャンプで暮らしているので、それを受け入れるのか受け入れないのか、どういう風に支援していくのかというがケニアでは大きな問題になっていますね。
あとは、もともと干ばつということは食糧が少なくなるっていうことで、食糧の価格も上がっていますし、コッチのみんなも値段が2〜3倍になっているとぼやいていますね。

梅本:そういう食糧や燃料費が値上がりして、最初に困るのは貧しい人たちなんで。

斉藤:そのなかで、コッチの人たちは、政治に文句も言いつつ、音楽で、みんな、難しい状況はあるけれども頑張ろうというメッセージを、コミュニティラジオを通じて発信していますね。

ケニアのスラム。
そこでは、ラジオが生活に根ざし、まだ誰も知らないけれど キラリと光を放つ音が溢れていました。

アフリカのストリート・ミュージックで 世界とUnite!
AMP MUSICの夢は 始まったばかりです。