今週は、青山の国連大学前で毎週末開催されています、ファーマーズ・マーケットのHidden Story。
青山の国連大学前広場。普段は何もない空間に、毎週土曜日と日曜日、野菜などを販売するマーケットが出現します。
「ファーマーズ・マーケット」。
その始まりを、メディア・サーフ・コミュニケーションズ株式会社の田中佑資さんに伺いました。
うちの会社は、『TOKYO DESING FLOW』というプロジェクトをずっとやっていて、「都市での生活、都市におけるデザインというのは、どういう役割なのか」とか、「(どういう)流れ(なのか)」をイベントとかフリーペーパーに表現してきたんですけど、東京っていう街は食べることに関して、いろんな食が集まっているんですけど、生産する現場との距離があって、乖離(かいり)がすごくあって。「食べ物とかって身近な自然だと思うので、そういうものに触れ合える場所を作りたいよね」というのは、みんなの意識にあって。
最初にマーケットが開催されたのは、2008年の秋。
会場は、表参道にある商業施設の前でした。
田中さん、そして、竹田潤平さんは当時をこう振り返ります。
ジャイルっていう表参道にある商業施設というかファッションビル、ちょうど表参道とキャットストリートがぶつかるところにあるビルの1階だったんですけど、シャネルとかブルガリが1階に入ってて、「おっ」というところの下で野菜を売り始めたんですね。
ディレクター:そこに農家さんというのはギャップがありましたね。
それがでも面白かったのかなとは思いますよね。
だから、今でこそ広がってますけど、表参道界隈ではそこでしかやってなかった。
今はいろんなところでやってるじゃないですか、全然なかったですよね。
まずは月1回のペースで開催。
しかし、チームにはもっと高い目標がありました。
月1回・2回というのはイベントじゃないですか。
やっぱり日常には、なり得ないので「毎週やりたいな」と思っていたんですね。そしたら、農林水産省が「マルシェ・ジャポンっていう、対面型の市場に対する助成事業をやります」というのがあって、そこに応募して、それに選ばれることができて、国連大学前で毎週始まることになったんですね。だから、相当な急ピッチで成長した。1年後には毎週やることになったわけですから。しかも、毎週やるのが立ち上がりのときに、30軒。一気に。
ジャイルが6店舗だったんで、5倍に。
5倍になってペースが2倍になったんで、10倍くらいですよね。だから、果たして、出展してくれる人が毎週集まるのかと。
大変でしたね。本当に大変でした。
土曜日の朝6時半。スタッフの朝はこんな風に始まります。
重りを降ろす。トラックにいろいろモノが乗ってるんで、テントとか机とか。朝5人くらいですね。20キロのおもりだけでも200個あるんで。4トンを毎日動かしてるんですよ。
テントを広げて、テントの足におもりをつけて、テーブル並べて。
普通のイベントだったらイベント会社が入ってやると思うんですけど、僕らはそういうことはせずに、出来なかったっていうのもあるんですけど(笑)。でも、そこをやり続けているのも間違いなく自信につながっているというか、基本的には朝、自分たちの手でハンドメイドで会場を作ってるんで、それが自信になってるよね。うん。
屋外でのマーケット。
最も問題となるのは、風。
天候のチェックをかなりするようになりましたね。風速も含めて。
雨雲レーダーまで見てますからね。「こっちから雨雲来てるかな〜」とか(笑)それはね、やっぱり密接に。自然と密接にやってる感じはありますね、マーケットは。
そこは、バッチリ決まってる商業施設でやってるんじゃないという。畑に近いというか。
田中佑資さんと竹田潤平さん。
最後にこんなエピソードを教えてくれました。
僕らも、「毎週続ける」「毎週開催するんだ」と覚悟したというか、思ったきっかけがあって、それは1年前の地震があったとき、3月11日。
あれって金曜日だったんですよ。
僕らのマーケットは土日なので、前日にああいうことが起きて、「どうする?どうする?」となって、結局開催したんですけど……あれは考えるきっかけになったよね。
ファーマーズ・マーケットって、必要なものって、ほとんど何もないんですね。基本、「良い農家さんがいて、獲れた野菜を持って来てもらって販売する」っていうそれだけの場。ほんとシンプルなんですけど、「そういうものを、こういうときにやらないで何のためにやってんだ」という話になって。
結果的にはやって良かったなと、「すごく非日常なときに、日常的なマーケットが開いていて安心した」という声もあったし、「お互いに顔を見合わせて安心できる」というのもあったし、あの時は。「ただ、ものを売るためだけにマーケットを開催してる訳じゃない」というのを改めて感じたというか。
農家のみなさん、そして農産物に直接触れ合う場を東京に作りたい。
そんな想いで始まったファーマーズ・マーケットは、今や心と心が触れ合う場所となったのです。