愛媛県松山市。朝6時の太鼓の音とともに営業を開始した、道後温泉本館の前で、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。湯上がりにはフルーツにしよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
周辺の地層から、およそ3,000年前の縄文時代中期の土器が見つかり日本書紀にも登場するので、日本最古の温泉ともいわれています。街のシンボルともいえる3階建ての共同浴場「道後温泉本館」は、重要文化財に指定され、ミシュランガイドにも観光地として星つきで紹介されています。そのため国内はもとより、海外からも多くの観光客が訪れます。営業時間は朝6時から。地元に住む方々はもちろん、近隣のホテルや旅館からも、浴衣姿で手ぬぐいをぶら下げた宿泊客が朝風呂に入るためにやってきます。小説「坊ちゃん」にも取り上げられているのはおなじみですね。作者の夏目漱石が松山中学の英語教師として赴任したのは、この「道後温泉本館」完成の次の年のこと。1階の男湯の浴室には、小説の主人公が湯船で泳いで注意されたことにちなんだ「坊っちゃん泳ぐべからず」の札があります。まさに文学と歴史の由緒ある重要文化財にふさわしい温泉です。
愛媛県は瀬戸内海に面した温暖な気候のおかげで、温州みかん、いよかん、甘夏をはじめとして多くの種類の柑橘系の果物が獲れ、一年中いずれかを楽しむ事ができます。また、かけ合せによる品種改良や、県内の限られた地域のみで収穫されるオリジナル品種なども人気。なかなか首都圏ではお目にかかれないものもあります。それらの中でもこれからの季節が旬なのは、「美生柑」という愛媛県の南にある地域からその名が付いたもの。大きさや果実の色など見た目はグレープフルーツに似ていますが、特有の苦味がなく甘酸っぱくて食べやすい果物です。ジューシーな果肉だけでなく、皮を砂糖漬けにしたものをヨーグルトと共に、どうぞ。
旬のシーズンが遅く、越冬する必要があるので、霜がおりることなく、一定条件の気温の場所でしか栽培できません。
地元でも知る人ぞ知る、という存在のようです。