今週は、多摩美術大学のゼミから始まったプロジェクト、「クールシェア」のHidden Story。
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涼しさを分かち合う、クールシェア。
「冷房の効いたカフェや公共施設に集まって過ごすことで電力消費を抑えよう」というアイディアです。
提案しているのは、多摩美術大学の堀内正弘教授のゼミ。
昨年、東日本大震災が発生して、夏の電力が心配されている中、その発想は生まれました。
テーマとしては「家庭のエアコンを、いかに『つけないで』暮らすか」と。まあ、止めればいいと。
でも、止めると熱中症になる恐れがあるというのはみんな常識的に知っていたので「じゃあ、涼しいところに行きましょう」と。では、都会で涼しいところはどこかと。公園とか自然の中が出てきまして、もうひとつは街中で涼しいところ。「電気代もったいないから、カフェで過ごしているよ」という子がいて、僕もそういう傾向があって「なるほどなるほど。カフェで過ごせば家でエアコンをつけなくていい」という話が出ました。
多摩美術大学のすぐ近くにある等々力の商店街、そして、東急電鉄のショッピングセンターがすぐに「クールシェア」に参加しました。
ショッピングセンターというのは必ず休憩所があります。そういったところを「クールシェア・スポットとして登録していただけないか」とお願いをしたら、許可をいただきまして、もともとある休憩所のなかで、特に長くいても居心地がいい場所を。それを選ばせてもらいました。
別に長時間いても良いはずなんだけども、日本人は遠慮するじゃないですか。それはショッピングセンターでも飲食店で席があいててもね。でも、その辺を、「クールシェアしに来ました」、お店も「あ、クールシェアですか」とそういう了解事項があると、お互い気兼ねせずに、「ああ、どうぞどうぞ閉店までいらしてください」とか、そういうことが一言で出来上がっちゃう。そうじゃないと「エアコン止めてきたんだけど、いさせてください」とか言うと格好悪いじゃないですか。
それを「クールシェアしに来ました」ということで了解事項にしたいと。これをみんなの常識にしたいと思っています。
ちなみに、堀内教授は、このクールシェアに、もうひとつの意味を込めています。
何年前でしたかね? ニューヨークで突然、大規模停電が起こったことがあって、その時に、みんな家に帰れなくなって「ろうそくの光のなかで、みんなが盛り上がって仲良くなった」ということを思い出しましてね、電気が消えたけど、逆に仲良くなっちゃうとか楽しむとか、そういう発想が出てきまして、だから、エアコンを消すだけじゃなくて、消えて、そして、みんなが仲良くなるというのを、同時に提案するのがクールシェアのユニークなところだと思います。
実際、お店はどんな風に参加しているのか?
堀内正弘教授に伺いました。
クールシェアっていうことで「お客さんにたくさん来てもらうために、お店としても優遇措置を出してくれないかな」という話がゼミであって、お店の人に相談したんです。そしたら「コーヒーならいいんじゃない?」ということになって、コーヒーなら100円引きで良いと。そういうお店が最初だったんですよね。
で、注目したのは、アイドルタイムっていうのがあって、ランチタイムが終わって夕方のオーダーが入るまで、お客さんが引いちゃう時間だと。個人商店だと閉めちゃうわけですが、ショッピングセンターのお店なんかは物理的に閉められない。それがもったいないと思ってね。アイドルタイムを使わせてもらって、その時間に来るお客さん、ドリンクだけでも安くしてもらう、ということで……そういったアイドルタイムを活用させてもらうという展開になりました。
はっきりしたところもあって、無理だよっていうお店は、クールシェアしに来ましたという人を長居させてくれるだけでも良いと思いまして、無理のない範囲でクールシェア対応を謳ってくださいと。
「クールシェア」を提案して2年目の今年。
堀内さんは混んでいるカフェにもクールシェアを導入して欲しいと考えています。
混んでる喫茶店ね、チェーン店はこれはクールシェアまずお断りなんですよね。
去年アタックしてダメだったんだけど「混んでるからそれどころじゃない」「割引とかはまず無理だ」と。そこで、クールシェアをやる方法を思いつきました。
おひとりさまが多いんですよ。そうすると席はふたりとか4人じゃないですか。ひとり座ると残りの席は誰も座らないんですよ。でも、実は、座ってもいい人もいる。嫌な人もいると思うんですけどね。
座ってもいい人は、そこに「クールシェアのサイン」を出すと、席をシェアする。
お店としても稼働率を上げられる。
クールシェア席とか、あるいはクールシェアの何かを示すと相席オッケーですよというサインになると。いいでしょ、これ(笑)
ちょっとしたステッカーとか共通のものをテーブルに置いておくだけでいい。
気温が高いことで知られる埼玉県の熊谷市をはじめ、東京都世田谷区、長野県、さらには福岡県の福岡市、北九州市なども「クールシェア」に賛同。
プロジェクトは全国へ広がりを見せています。
全国だけではなく、全世界的に広がるのではないかと考えてまして、私はグリーンマップという環境情報地図を作る活動をやってまして、そこのシステムを使ってまして、グリーンマップは情報を世界的に情報を普及させる仕組みができてますので「暑いところでこそやって欲しい」と思っています。
エネルギーは、工夫次第で消費量を十分に抑えることができる。
そして、涼しさをシェアする事で人と人とのつながりも生まれる。
こうした智恵こそが、世界に誇ることができる、日本のアイディアです。