2012/6/29 ミドリムシのHidden Story

今週は、豊富な栄養素を含むことで注目を集める「ミドリムシ」。
食糧問題や環境問題を解決する可能性を秘めた、その生物に迫ります。

出雲充さん

ミドリムシ。
よく間違えられるのは、蝶の幼虫、アオムシです。
しかし、アオムシとは似ても似つかぬミドリムシ。
どんな生物なのか?
株式会社ユーグレナの代表取締役社長出雲充さんに教えていただきました。
» 株式会社ユーグレナ

ミドリムシは名前こそ虫がつきますが、昆虫ではありません。

ミドリムシはワカメや昆布の親戚なんですね。ワカメや昆布がすごく小さくなって、0.1ミリくらいの大きさのワカメがミドリムシだと思っていただければ問題ないんですけど、ひとつだけワカメや昆布と違うところは、当然植物なので光合成をするんですが、ワカメや昆布は歩いて動かないじゃないですか。ミドリムシだけは、動くことができる。植物でもあり動物でもある微生物、これがミドリムシなわけです。最大の特徴は、植物なので光合成をするんですけど動く。動物なのに、光合成ができる。植物の栄養素も動物の栄養素も59種類全部含まれているのは、ミドリムシだけですよ。

出雲さんがミドリムシに注目するきっかけは、学生時代にバングラデシュを旅したことでした。
そこで、食べ物は十分にあるものの、肉、野菜、フルーツなどに含まれる「栄養素」が不足している、ということに気づいたのです。

私、鳥山明さんのドラゴンボールが大好きで、そのマンガのなかで猫が豆をくれるんですよ。
その豆を食べていると他のものを食べなくても、人間が必要な栄養素がすべて入っている豆なので健康に生きていける。マンガにそういう仙豆という豆が出て来ていたので、そのイメージが強くてですね、そういう豆をいろいろ探したんですけど、豆は植物じゃないですか、植物にはビタミンとかは入っているんですけど、肉や魚の栄養素は入ってないじゃないですか。逆に肉にビタミンCが入っているかというと、動物が自分で使っちゃうので野菜の栄養素は入ってない。これだけ食べていれば全部の栄養素が入っている豆とか植物とか、なくてですね、やっぱりそういう食べ物ってないのかなって思っていたときに、分類の話が授業がありまして……ミドリムシは植物だから光合成をします。だけど動きます。
動くということは動物ですねと。だから両方なんです、ミドリムシは!

実は以前から世界の研究者によって、ミドリムシについての研究は進められていました。
しかし……

実はミドリムシは培養できませんと。

増やす方法がないと。だからもしミドリムシを培養して育てることができるようになったら、人類は健康になれます。
でも、まだミドリムシを培養する方法はありません。
それが2000年の私が大学3年生のときで、ガーンとショックを受けましたけどね。

ここで引き下がるわけにはいかない!
出雲さんの挑戦が始まりました。

ミドリムシを培養するために、それまで取られてきたのは「非常にクリーンな状態を作って外敵を侵入させずに培養する方法」。
しかし、これではどうしてもうまくいきません。発想の転換が必要でした。

ミドリムシは水たまりとか海とか池とか水の中で生活しているわけですが、その培養液を工夫して、ミドリムシはまったく困らない気持ちいい培養液なんですけど、ミドリムシを食べる悪い奴が入ってこようとすると、ミドリムシを食べたいけど、ここに入ったら自分も溶けて死んじゃうよというような酸性の液体だったら、他の天敵が入ってこれなくなるじゃないですか。そういう培養液を開発しようと、ガラっとやり方を変えて、育てることができるようになったんですね。

2005年12月16日。
ミドリムシを育てることができる培養液がついに完成しました。

その後、食品として商品化に成功。
今や、「ミドリムシ・ラーメン」を出すお店もあります。
さらに……

実はミドリムシは100種類くらいいて、バイオ燃料を作るミドリムシも発見して、今、実際ミドリムシでバイオ燃料を作る研究を続けているところなんですけど、そうこうしているうちに発電所からじゃんじゃん電話がかかってきて、ミドリムシで発電所の排気ガスのCO2を減らしたいと。

大気中の350倍の濃度の二酸化炭素が発電所の排気ガスには含まれているんですが、その二酸化炭素も、モグモグと光合成してくれて、そういうミドリムシがいてですね、そういうミドリムシは発電所で頑張ってますし、今度はですね、東京都がですね、水をきれいにするミドリムシを持って来なさいと。いま水処理場の水をきれいにするプロセスに、ミドリムシを導入して、都民のみなさんの役にたてましょう、ミドリムシを。そういう研究もやってるんですけど。

食糧問題、二酸化炭素の削減、水の浄化、さらには、エネルギー問題までをも 解決できるかもしれない。
出雲さんの名刺の裏には、こんな言葉がありました。
「ミドリムシが 地球を救う」。