今週は、渋谷ヒカリエにまもなくオープンする劇場、東急シアター・オーブのHidden Story。
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シアター・オーブがオープンするのは、渋谷ヒカリエの中。
このヒカリエ、渋谷駅周辺の大規模な再開発の最初の一歩でした。
ヒカリエだけじゃなくてですね、渋谷の駅前を中心にして渋谷駅周辺を大々的に再開発しようという構想があったんですね。
その第一弾がヒカリエなんですけど、もともと東急文化会館という建物が建ってましたけど、東急文化会館は昭和28年くらいにできて、当時は、渋谷のここにくれば生活の全てがある。娯楽であったり、買い物であったり、プラネタリウムもありましたし、ゴールデンホールという結婚式場もあったし。
渋谷から文化を発信する。
かつてヒカリエの場所にあった東急文化会館のDNAを引き継ぐのが「シアター・オーブ」。
ビルの11階から16階の部分を使った大きな劇場です。
しかし、この劇場を作るには、大きな壁がありました。
東急シアターオーブの仁田雅士さんはこう振り返ります。
劇場というのはパフォーマンスをやるわけですから、いろんな舞台装置だとかいろんなものを持ち込まないといけないわけですね。そのために、エレベーターで上階にある劇場に運ばなければならない。
その道具の搬入だとか搬出のための設備が他の劇場に比べるとコストが高いというんですか、計画もきっちりやらなきゃいけないし、ですからここは、11トントラックの荷台がすっぽり入る大きさのエレベーターを設置しました。
1階から13階まで上がっていきます。それからその11トン車で搬入しますので、それが通れる道幅も確保しなきゃいけない。それからそのローディングでトラックが動ける範囲も確保しなきゃいけない。
さらに、高層ビルを支える柱は動かすことができません。
音や振動が上下の階にもれることも許されません。
そういうことが最初の条件に出てくるわけですね。
それから普通の劇場を作るような設計をしなければならない。そういう条件のなかでやるわけですから、設計の方たちは苦労されたと思います。
我々も、「こうじゃなきゃ劇場と言えないよ」とか好き勝手なことを言わせていただきながら。とにかく劇場ですから、見やすくなくちゃいけない。PAを使ってスピーカーから聞こえる音なんですけど、それが客席のなかで心地いい豊かな音にならなきゃいけないし。
それから、いま、ミュージカルは演出が多様になってまして、昔は舞台道具やなんかも、センターから上手にはけるとか、上手から出てくるとかそういう感じでしたが、人も含めてですね、上から降ってきたり、下から出てきたりという演出が多いですから、そういう多様性に応えられるように、舞台の設備を工夫をこらしたり、そういったことを設計の方と議論を重ねながら、やっとこういう劇場ができたということですね。
僕らの最初の公演、こけら落としはウエストサイドストーリーですね。
この作品は、いわゆる近代ミュージカルの最初の作品ということで、新しい劇場の船出にふさわしいと思いました。ウエストサイドストーリーは、映画でも有名ですが、ブロードウェイでやった作品がそのままの形で来るのは30何年ぶりなんですね。
今回はアーサー・ローレンツという台本作者が残念ながら去年亡くなられたんですが、彼が、ブロードウェイで最初に上演しものをもう1回再現したいという強い想いを実現したプロダクションですね。
渋谷ヒカリエにオープンするシアター・オーブ。
舞台設備には、こんなHidden Srtoyが。
日本の劇場の多くは舞台上に照明機材をつり下げる、照明ブリッジと呼んでいますが、そういうものが固定でつり下っているんですね。
そこには美術的な装置はその部分にはつれないし、飾れないということなんですが、今回、照明の会社の方に無理をいって、そのブリッジを軽量化と分割することで、どこにでもつれる、というものを開発してもらって、これは日本の劇場でもそうはやってないです。
いろいろ問題あるんですよ。照明の電気のケーブルは重いしたくさんあるので、それをどう収納するのかとか問題はあったんですが、それを頑張って解決していただいて。
今回の取材の終わりに、東急シアター・オーブの仁田雅士さんはスタッフを劇場の中へ案内してくださいました。
そして実は、劇場でミュージカルを堪能した後、さらなるお楽しみが観客を待っているということですが……
さあ終演しました、家路につきますというときに、ここからこう出て行ったところが、この非常に開放的な空間になるわけですよね。
ディレクター:すごい!
これ西側なので、天気がよければ富士山が見えますけどね。
夜だったら夜景が広がっているので、閉鎖された空間から出て来たときの解放感。このギャップが魅力になるかなという感じがしますけどね。「わ〜」って思うような。たぶん、他にはない劇場とホワイエの空間を総合的に見たら世界にもこんな劇場はないだろうと思いますね。こういう劇場の特徴がね、広がっていけば、今までミュージカルに行ったことのない人も「あ、そういう劇場行ってみたいな」と思っていただいて、観客の輪が広がっていけば、これもまた意味があるんじゃないかなと思いますね。
観客を楽しませるアイディアが幾重にも仕掛けられたシアター・オーブ。
2012年7月18日、いよいよその幕が上がります。