今週は、生ゴミを使って発電する、という事業を展開しているバイオエナジー株式会社のHidden Story。
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生ゴミを使って発電する。
そもそも、それはどういう仕組みなのか?
バイオエナジー株式会社の代表取締役社長、岸本悦也さんに教えていただきました。
もともと地中、自然界にはメタン菌という非常に数の多い菌が存在していまして、それが有機物、特に腐敗したものを消化活動するとメタンガスが出てくるんですね。
これは古くから確認されている技術で、例えばモンゴルであると馬糞だとかヤギの糞だとかそういう糞尿を腐敗させたものからガスを取り出すと、まあ、昔からある技術なんです。ただ、その昔からある技術を生ゴミ専用にして大量にメタンガスを取り出そう、というのは今まで誰もチャレレンジしたことがないんですね。そういう古い古い技術を有効利用して大量にメタンガスを取り出して、そのメタンガスを燃料にして発電機を動かして電気を作る、というのが我々の事業の根本ですね。
古くからある技術を、現代の生ゴミに活用する。
そのアイディアは どこから生まれたのでしょうか?
食品リサイクル法という法律が平成13年にできまして、18年から本格的に施行が始まったんですね。
これによって、食品の製造、流通、食事を提供する外食産業まですべてが国が決めた基準に従って再利用しなければならない。
ところがそれまでどう再利用していたかというとほとんどが堆肥、肥料なんですね。一部が家畜の飼料に回っていると。だけど、堆肥や家畜の飼料にするには、生ゴミが出てくる現場で相当厳しい分別が要求される。でもそういう分別がスーパーの裏でできるかというと、場所もありませんし、夏は腐敗するとにおいがしますので冷蔵設備も必要だと。そういう手間ひまをかけずに再利用できないか、というのがお客様から寄せられていた声で、で、ある程度分別が不十分でも再利用ができるということでいくと、このメタンガスの技術が対応できると。それがこの技術に着目した原点ですね。
生ゴミを集めて、ガスを取り出し、発電する。
これを大規模に事業化したのは、バイオエナジー株式会社が日本初。
そこには、予期せぬ展開が待っていました。
都会の生ゴミというのは、いかにカロリーが高いかと。カロリーが高いものですから、ガスの出方が我々が想像していた以上に出たんですね。
スタートして1年たったところで計画より3割以上多くガスが出る。
せっかくのバイオエネルギーですから、燃やして捨ててしまうのはもったいない。だから今はそれを東京ガスに都市ガスとして送る施設を入れて、東京ガスさんにガスを送っていますけど。生ゴミを原料にして電気とガス、2つのエネルギーを送る、という珍しい事業になっちゃいましたけどね。
発電に必要不可欠なのは、メタンガスを生み出してくれる「メタン菌」。
しかし、メタン菌については、研究がほとんど進んでいなかったのです。
いろんな生物学系の大学の先生にうかがっても、ちゃんとしたお答えをもらえることはあまりないんですよね。
メタン菌がどんな状況で活動してくれるのかというデータがないんですね。やってみなきゃわかんない。自然界の生き物を相手にしている、という。振り回されましたよね、最初は。
例えば、夏場に非常に高温の気象になると。外気温が40度をこすと、消化活動の能力は落ちてしまう。能力をよみがえらせなければならない、ということで、いろんなことをやりましたけど、結果的には冷やすのが一番いい、ということで、今は冷水で冷やしながらやっていますけどね。
事業開始から7年目。
試行錯誤の末、今や、毎日およそ110トンの生ゴミを処理して2,400世帯分の電力と、2,000世帯分の都市ガスを供給しています。
さらに、バイオエナジー株式会社の岸本悦也さんにはこんなビジョンが。
ここでこれだけ苦労しましたから、この工場だけで終わってしまってはもったいないし、まだその生ゴミという資源は世の中でいっぱい燃やされているんですね。
特に家庭から出る生ゴミはほとんどが燃やされています。ご存じのように生ゴミは水分が多いですから、燃やそうとしてもすぐには燃えないんです。一度乾燥させるためにエネルギーが余計にかかります。結果的に家庭の生ゴミはほとんどが燃やされているんですけれど、焼却施設の負担を重くしている、ということはあると思います。だから未利用の生ゴミがたくさんあるなかで、これから先、全国の主要都市に作ろうと思えば、作る余地はあると思います。
事業者からの生ゴミだけでなく、家庭の生ゴミも再利用したい。
そしてそれが全国に広がれば、捨てざるを得ないものから、大きな電力を作り出すことができるかもしれない。
古くからある技術が、新しい仕組みを生み出そうとしています。