今週は、サッカー・ジャーナリスト、安藤隆人さんのHidden Story。
安藤さんが追い続ける、香川真司選手のお話をじっくり伺いました。
精力的にユース世代への取材を続けているサッカー・ジャーナリスト、安藤隆人さん。
安藤さんが香川真司選手を最初に見たのは……
一方的な出会いはあいつが中3です。向こうは認識してない、僕が一方的に香川を見たのは彼が中3のときですね。
クラブユースって大会があって、パッと見たときになんか面白い奴がいるなと。まだそのときは面白いなっていうくらいだったんですけど、で、あいつが高1になったときに、日本クラブユース選手権という大会を見た時にもうなんだこいつと。最初見た時より成長してるし、これは将来日本になかなかいない選手になるなと思ったので、そこからですね、香川真司を明確に認識して追いかけはじめたのは。
当時、香川選手が所属していたのは、宮城県のFCみやぎバルセロナ。
そして、高校卒業を待たずにセレッソ大阪へ。
高3卒業を待たずに彼はセレッソに入ったんですけど、高2終了時点でセレッソとFC東京からオファーがあって、彼はセレッソに行くことにしたんですけど、別に律儀に高校卒業を待たなくても行けるうちに行っといたほうがいいんじゃないかなと思っていましたし。
セレッソに入ってから南津守の練習場はかなり行きました。しょっちゅう行ってましたね。
セレッソでの最初のシーズン、香川選手は出場機会に恵まれませんでした。
高3なんでしょうがないというのもあるんでしょうが、彼の場合は自信がなかったんでしょうね。一番年下というのもあって。そのとき彼に言っていたのは、「お前は将来絶対日本を代表する選手になるから、今はセレッソだけど、絶対将来的にはみんなが騒ぐよと。
今は誰もお前のことを見ても誰だ?という感じだけど、そのうちみんなほっとけなくなるよと。プロ1年目のときは会うたびに言ってましたね。そのうち人前で歩けなくなるぜと。本人は「またまた〜」と言ってましたけど、「絶対なるから俺は確信しているから」と 彼が18歳のときに伝えましたね。
その後、2009年、香川選手は セレッソ大阪でJリーグJ2の得点王。
そして、2010年。ワールドカップ・イヤーがやってきます。
2010 FIFA ワールドカップ南アフリカ。
香川真司選手は、代表のサポートメンバーとして大会に参加しました。
サッカー・ジャーナリスト安藤隆人さんはこう振り返ります。
僕はワールドカップのメンバーに入れてもよかったと思ってたんで、なぜ入れないんだっていうくらいだったんで、でもその悔しさは世界で見せつけてやろうと本人にも言って。で、2010年でドルトムントへ移籍ですよね。
行く前にお互い話をしてたら、ドイツのサッカーってあわないんじゃないかって話をしてたんですね。ドイツはフィジカルがちがちで縦に速いからもしかしたら自分は活きないんじゃないかって話をしてたんですけど、その中でもドルトムントはクロップ監督が就任してあのときは3年目で、最初はサイドで起用されると聞いていたらしいんですよ。
ところがトップ下のジダンっていう奴がケガしていなくなって、合流したらトップ下をやらされたと。トップ下だったらいけるんじゃない?お前の能力発揮できるし、行けるじゃないと話したら、本人も俺もそう思うと。
2010 - 2011シーズン前半。香川真司選手はゴールを量産。
快進撃を続けます。
そして、アジアカップでのケガを乗り越えて迎えた2011−2012シーズン。
復調した香川選手に移籍の噂が飛び交い始めました。
ビッグクラブからオファーが来るかもね、という話はしましたね。
ドルトムントで2連覇。MVPはとれませんでしたけど、過去最高の得点をとって、この上ない活躍をしたわけですよ。今じゃない?っていう話をしました。やっぱり、彼は最終的にはバルセロナに行きたいわけですよね。ただ、30なってバルセロナに行くんじゃ遅いんですよ。バルセロナに行くには26、27あたり、脂の乗り切ったときに行くべきなんで、そこから逆算すると、もう23歳。ただバルセロナにドルトムントから行くのは難しいんですよね。どこかをはさまなければいけない。でも はさむとしても、はさむクラブは一流じゃなきゃいけないわけですよ。そこへプレミアのクラブが興味を持っていると。だったらそこで2〜3年で答えを出してバルセロナ!とか。
結局、香川真司選手は、イングランド、プレミアリーグの名門、マンチェスター・ユナイテッドへ移籍しました。
リーグ開幕戦に先発フル出場。2戦目、ホームでの最初の試合では初ゴール!幸先のいいスタートを切りました。
しかし、ポジション争いはこのあとも続きます。
非常に難しい戦いになってくると、すごい厳しい競争が待っている。
それを覚悟の上で彼はユナイテッドにしたので。でも、レギュラーを取れない場合、相当リスクの高い決断になるので、最悪の場合、ドルトムントよりもっと下のチームにレンタルに出されてしまったら、さらに遠のいてしまうので、今回の決断は重要な決断だったんですよね。出れてなんぼなんで。本人も、決して飛びついた移籍じゃないと言ってましたし……ユナイテッドから声がかかった、嬉しいなという決断ではなかった。むしろユナイテッドから声がかかったからこそ迷ったっていう決断だったと思うんですよね。 でも、入った以上、彼は戦う覚悟はできているし、僕は戦えると信じています。
10代のころから香川選手を見つめ続ける安藤隆人さんいわく、「マンチェスター・ユナイテッドは、ゴールではない」。
さらなる夢へ、香川真司選手のさらに熱い挑戦が始まりました。
安藤さんの著書本『走り続ける才能たち - 彼らと僕のサッカー人生』
香川選手のほか、本田選手、岡崎選手との出会いやその後の取材の模様が記されています。
こちらもぜひ。