2012/9/14 世界の9.11事情

9月11日のアメリカでの同時多発テロ事件から11年が経ちました。
10年という区切りを終えた11年目、世界のあの国では、どのようにその日を迎えたのでしょうか。
今日も2カ国をコネクトしてお送りします。

9.11には何か動きはありましたか?

アメリカ、ニューヨーク。中村英雄さん
「グラウンドゼロで犠牲者追悼祭が行われましたがいつになく地味でした」

どのような様子でしたか?

ブルームバーグ市長の一喝で、政治家の参加は一切禁止。
音楽やパフォーマンスの披露もなく、壇上の遺族がただ淡々と犠牲者の名前を読み上げるのみでした。かつてのテロ現場から凄惨な印象はほとんど消え、周囲には高層ビルが計画通りに立ち並び、NYはよく言えば「見事に再生」、悪く言えば「テロのことなどとうに昔のこととして葬り去った」という感があります。

主要メディアで9.11ネタをやらないので、一般市民もすっかり忘れています。
テロとの戦争に「勝った」ということすら忘れている。
追悼式参加の遺族からは「忘れてはならない。(テロリストを)許してはならない」との痛切な叫びが聞かれました。一方で式典参加をかたくなに拒む遺族もいます。以前取材した夫婦は息子をテロで失いながらも、決して、テロリストや反米諸国を恨むこともなく、ただ「報復だけはしてはならない」との立場を貫いています。

何もないままに1日が過ぎたのでしょうか?

オバマ大統領も、職務の合間に短めにホワイトハウス庭で追悼の儀式を行ったのみ。
ロムニー共和党大統領候補も「テロの首謀者どもよ、アメリカは神のご加護のもと頑強な一枚岩ぞ。汝らのいかなる攻撃をもはばみ、この国と世界のために敢然と立ち上がらん」というコメントを発しましたが、反響は特にありませんでした。

そんな中、通勤電車の車内放送で車掌が突然『ゴッド・ブレス・アメリカ』を歌いだした時だけは乗客全員、手を休め、膝の上の本から目を外し、イヤホンを取り、一瞬喪に服しました。やはり「あの曲」が流れるといやおうなく2001年の9月に引き戻されます。と同時にあの時あったNY市民の一体感を再び感じます。条件反射、でしょうか不思議なものです。

ただ『ゴッド・ブレス・アメリカ』。テロ事件で振って湧いたようなナショナリズムは、やっぱり本質的には安っぽく形骸化してしまいました。

9.11には何か動きはありましたか?

イスラエルにお住まいで、JICA(国際協力機構)のパレスチナ事務所にお勤めの田中泉さん
「イスラエル、パレスチナ共に特段動きはありませんでした」

JICAのパレスチナでの活動はどうなっているのでしょう?

治安の関係もあり、日本人スタッフはイスラエルのテルアビブ事務所を拠点として、パレスチナのガザ事務所を遠隔操作しつつ、西岸域も含めたパレスチナ全体をカバーしています。

市民の皆さんの様子などいかがでしょうか?

イスラエルは相変わらずイランへの核攻撃に関して米国と議論しているようです。テルアビブに住んでいますが大きな動きはありませんでした。

パレスチナ(西岸)の物価高騰に対するデモ等は継続しています。路上でタイヤを燃やす、投石を行う等の過激な行為も散見されています。昨年来懸案の国連への正式加盟も、どのような対応を行うのか不明です。またパレスチナ(ガザ)に11日に行ったのですが、相変わらず閉塞状況、貧困状況は出口が見えません。イスラエルによる空爆や、ガザからのロケット弾の発射も相変わらず小規模ながら続いています。

リビアのアメリカ領事館襲撃事件など、反米デモが中東に飛び火しているといいますが

9.11以降、パレスチナ問題についての根本的な解決は全く進んでいないようです。テロの撲滅を考えるときにその原因に対処する必要があると思いますが……アメリカの中東での存在感が低下しているかもしれません。