2012/9/28 フルッタフルッタのHidden Story

今週は、アサイーをはじめとするアマゾンのフルーツを扱う、株式会社フルッタフルッタのHidden Story。
» 株式会社フルッタフルッタ

豊富な栄養素を持つことで知られるフルーツ「アサイー」。
そのアサイーに、フルッタフルッタの長澤誠さんが出会ったのは、2000年のこと。
当時、食品メーカーに勤務していた長澤さんは、あるフルーツを探すためブラジルのアマゾンを調査していました。訪れたのは、日本からの移民がつくった村。

たまたま、今僕たちのサプライヤーであるトメアス農協というんですが、この方々が私たちの探しているフルーツを作っていると聞きつけて訪れたんです。
だから僕のイメージはそのフルーツを大量生産している姿を連想していたんだけど、行ってみるとジャングルみたいな森しかなかった。

最初は本当に失望しちゃって「まじめに仕事していないでしょ」という印象だったんです。
というのは、僕らは習慣的に生産風景というか、畑がいかに整然と運営されているかというのを見てだいたい判断してましたからね。

大きな畑が展開されているかと思いきや、そこにあるのは、ジャングルだけ。

最初移民の話を聞かされて、わかりましたと。それでも僕は仕事をしに来たので「とにかく畑を見せてくれ」ということで、出発したんですね、車に乗って走り出しました。10分くらい走りましたかね、だけど、どこまで行ってもプランテーションらしきものは見えてこない。で、疑いだしたんですね……「もういい」と。「どこまで行っても畑がないじゃないか」と。「畑がないんなら帰ろうかな」と思ったんですね。

そういう話をしましたら、「何を言ってるだ」と。
「あなたは私たちの畑の前をずっと通ってきたんだ」と、こういう答えが返ってくるわけですよ。

実は、そこで行われていたのは、「アグロ・フォレストリー」という農業でした。
それは日本からの移民が、失敗の末に見いだした方法だったのです。

大規模プランテーションを目指してやるんですけども、しかし上手くいかない。
一時的には上手くいくんだけど、持続しないんですね。

それで、ヒントを森の中から見いだそうとするんですね。
それは「多様なものが、ひとつの土地に混成している」これが自然の仕組みだったんですね。
それで結局、彼らは、いろんな作物、農林作物というんですが、それを畑にたくさん植えだしたんです。それも無造作に植えてるんじゃなく、商売になるものを選定して、だけどレイアウトはジャングルにできるだけ近づけた。

アマゾンのジャングルは同じ高さのものが生い茂ってるわけじゃないんですね。高い木もあれば、中間の木もあれば低い木もある。それをできるだけ農作物で模倣しながら置き換えて行く。だから最終的には見た目はジャングルに見えるんです。

農業を自然の仕組みに則ってやったところ、森ができた。
これがアグロ・フォレストリーなんです。

食品メーカーに所属していたときに、森を作る農業「アグロ・フォレストリー」と出会った長澤誠さん。
心が動きました。

最初は「見つけたぞ」という、浮かれた気持ちでね、ただ喜んでいたんですけど、よくよく仕組みを理解していくと、「多様性」がキーワードだと思うんですね。

いろんな種類の物を畑に植え込んでいる。確かに経済活動で森を再生させている。
「それを維持拡大させるためには、我々がそれを売ればいいじゃないか」と、ワクワクしていたんですけど、でも、もうちょっと深く考えるとその「多様性」が問題なんですね。

今の経済活動はモノカルチャーなんです。

1つヒット商品を作ろうとする。企業は。
ひとつの作物を極めようとする。農業は。
でも、自然の仕組みは真逆なんですよね。ですから、そういう想いで「なんとか、これを市場側で受け入れる仕組みを作れないか」と考えている最中にですね……

今までとは逆のことをやるわけですから、専門の会社が必要じゃないかと。
それが私がこのフルッタフルッタを作った動機なんです。

今までのセオリーと違うことをやる自信は何もなかった。
でも、誰かがやらなくちゃ、こんなに良いものなのに、持続も発展もしないんじゃないかと。

長澤さんは、2002年の暮れ、フルッタフルッタを設立。
まずは、アマゾンの珍しいフルーツを紹介するためにジュースバーを展開しました。
当時は誰も知らなかった「アサイー」をメインに、アマゾンの多様なフルーツを輸入。
さらに、他の企業への提供も始めました。

今や、年間1,000トン以上がブラジルから日本へと運ばれています。

僕たちはもっとスケールを大きく持っていかないと、私がいまアグロ・フォレストリーの畑を活性化している量よりも、アマゾンで荒廃地が進むスピードが速い。
「今後は、ますますサプライヤーとしての事業を大きく発展させる必要がある」と感じているんですね。

そのために「どうしてアグロ・フォレストリーの原料を使うことに意義があるのか」を説明していかなくちゃいけない。
企業の協力でアグロ・フォレストリー原料が多様性を保ちながらバランスよく消費する仕組みができれば、いまアマゾンの小さなエリアで行われていることが安定します。で、次は、こういったプログラムを世界で。

今、環境問題の中心的な問題は森林伐採ですよね。そういうエリアはいくらでもある。
で、どの場所でもこのプログラムは適用可能だと思うんです。

熱帯雨林を守るために、世界の他の場所でもこのプログラムを活用できるのではないか?
夢は広がります。

僕は理屈上は必ず上手くいくと思いますね。ただ、それに賛同していただく企業が鍵だと思いますね。

なぜなら、誰もが認めることは、経済活動が環境を犠牲にした。これは誰も否定できません。それだけ大きなエネルギーが環境を犠牲にしたのなら、同じだけ大きなエネルギーが再生するためには必要だ。やはり経済活動に匹敵するエネルギー、それは経済活動だと思うんです。
そこに再生のメカニズムがあれば、今まで潰してきた自然資本を再生することができるだろうと。

問題は企業がちゃんとそれを理解してくれるかどうかです。

環境の再生と経済を両立させる。
かつてブラジルへ移民の船が旅立った街、神戸出身の長澤誠さん。挑戦の日々が続きます。