2012/10/5 世界の書店事情

読書の秋。あなたはネットで本を買っていますか、それとも本屋さん?
書店の動向に詳しい『アルメディア』という出版社の調査によると、「今年5月現在、全国の自治体の17%にあたる317市町村に書店がないのだそうです。書店の大規模チェーンの統合もすすんでいます。
さてあの国ではどうなのでしょうか?
今日も2カ国をコネクト。

小さな街の本屋さんは減っていますか?

オランダ、ベメル。大橋杏子さん
「チェーン店が中心で、利益を追わない小さな本屋さんが細々と残っています」

残っているのはどんなお店ですか?

現在あるのはセレクシス(Selexyz)という名前の大型チェーン店。
ブレーナ(Brena)というキヨスク程度の簡単な大衆向け本や雑誌、文具店をかねた中・小規模のチェーン店。そして、個性を持って個人経営の小規模の店の3種類です。

世界一美しいと言われている本屋さんがあるとか

それが大型チェーンのセレクシスがマーストリヒトに開いた本屋さんです。
14世紀に起源を持つドミニコ会修道院の教会が教会として使われなくなっていたところを、2006年に本屋さんとして開店。
基本的に本来の構造をいじっていないので、もとの教会に戻れるようなインテリアの改造で、床、本棚等がすべて家具のように設置されています。
奥の祭壇の部分がカフェになっていて、そこではちょうど最後の晩餐のような構図で、中央に十字形の大きなテーブルを置いてあり、それを囲むように丸いスルーツが配置されています。
建物が大きく、天井が大変に高い大きな空間なので、「ごったがえして」いても混んでいるという感じがしません。

街の小さな本屋さんはどうなのでしょうか?

私の住むベメルという村はナイメーヘンとアーネムというオランダの中ではそれなりに大きな二つの町に挟まれた小さな村で、人口は12,000人。
ここには「プルマン」という個人の経営する本屋が有ります。

50代の夫婦が11年前から経営していて、いろんな工夫をしています。
村の人たちがよく顔を出す、オアシスのようなところで個人個人を良く覚えています。それぞれの客のニーズにきめ細やかに答えるサービスがモットーで、中でも子供の本に着いては良いものをおいてあると、定評が有ります。
コーナーは子供用のイスとテーブルがあり、また、店の中央のテーブルがあって、サービスのコーヒーを呑みながら本を読んでいる姿が有ります。

この本屋は学校や図書館ともいい関係を持っていて、学校の中に昼休みに本の移動店を持って行って、親が昼休みや下校時に送り迎えに来た時に子供と一緒日本を選ぶことができます。図書館にも良い本の情報を送って、図書館がこの本屋の顧客にもなっています。

小さな街の本屋さんは減っていますか?

イギリス、ロンドン。小林紀美さん
「小さくても個性的な本屋さんはまだまだ健在です」

インターネットで本を買う人は増えているんですよね?

イギリス人は本が大好き。
電車の中で電子書籍を読んでいるロンドナーも少なくありません。
ここ数年の出版業界は電子書籍に切り替え、Amazonで本を買う人たちも増えてます。

一方で、日本の神田神保町みたいな、本屋ストリートも利用されています。
レスタースクエア駅の周辺は古本屋から新書、建築、文学、歴史、ガーデニング、考古学、児童書、イタリア語やフランス語、南米に関する本まで、ありとあらゆる本を手に入れることができるエリアで、創業1797年、200年以上の老舗書店も。もっと古いところで、ロンドンから電車で1時間30分の場所にあるルイスという町には、15世紀から続いている本屋さんもあります。その名も「15世紀の本屋さん(The Fifteenth Century Bookshop)」。

時代に流されない本屋さんがあるんですね?

不便でも本屋さんへ足を運び、その時の気分に合った本を探す。
本のために時間を作る、なんとも贅沢なこうした手法はロンドンで「Slow book selling」と呼ばれています。

例えばロンドンには運河が流れているんですが、ナローボートと呼ばれる小舟で運河を移動します。西洋風な屋形船を小さくしたイメージ。
その中に、本屋さんになっているナローボードがあるんです。
『Word on the water』という名前の本屋さんで開店して1年4カ月。
カムデン、エンジェル、ハックニーとロンドンのイーストエリアを移動していて、1箇所に2週間ほど停留しています。
もちろん行っても本屋さんがないときがあるので、あらかじめTwitterで彼らの場所を追跡してわざわざ行く人もいます。