2012/10/19 HASUNAのHidden Story

今週は、エシカル・ジュエリー。
鉱山労働者や、採掘が環境に与える影響などに配慮したジュエリーを扱うブランド、『HASUNA』のHidden Story。
» HASUNA

レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ブラッド・ダイヤモンド』。
強制労働、少年兵士、ダイヤの密輸、先進国で富をむさぼる宝石商。
アフリカのシエラレオネで繰り広げられた内戦と、武器の対価として先進国へ運ばれた、いわゆる「血塗られたダイヤモンド」について、真実に基づいて作られた映画です。

白木夏子さんがエシカル・ジュエリーのブランド『HASUNA』を立ち上げた背景には、そんな 宝石や鉱物をめぐる 不都合な真実がありました。

今から10年くらい前、私が大学生のときにインドの貧困層の問題についてリサーチをしていたんですね。
南インドのチェンナイという街から徒歩とバスで5・6時間くらい行ったところにある村に2カ月くらい住み込んだんです。

そこの南インドの村に住み込んでいるときに、いくつかの村を回ったんですけど、その村のひとつに鉱山労働者が住んでいる村があったんですね。

そこの鉱山は、携帯電話だとかカメラに使われる工業用の鉱物だったりとか大理石を採っていたんですけど、そこで働いている人たちがあまりにもひどい状況でびっくりして。
「ひどい」というのはどういうことかと言うと、村に一歩足を踏み入れた段階で、「ズシーッ」とすごく重い雰囲気がして。
子どもたちもいっぱい働いていましたし、大人たちも表情が暗いんですね。
一日すごく一生懸命働いてもわずかのお金しか手に入らないし、食糧もほとんどないし、井戸も枯渇しちゃってという中で働いていて、「素足でグローブとかマスクもない状態で、鉱山で働かなければならない」という状況があったりとか。

子どもたちも死んじゃったり、病気になったりとか、すごく深刻な状況だったんですね。

このとき感じた、ずしっと重く、暗い空気。
それがすべての出発点でした。

で、まさかビジネスで、会社を自分で立ち上げるとか思ってなかったんですけど、考えれば考えるほど、鉱山でボロボロになって働く貧困層が生まれる理由って、企業に問題があるんじゃないかと思って、だから、あまりにも利益を追求しすぎる鉱山の会社だとかジュエリーの会社だとか、そういうところが、それがあまりにも行き過ぎて、貧困層、末端の人たちから搾取をしている構造になっているのが問題で、ひとつひとつの企業が倫理観を持って、自分たちの素材がどこから来ているかをちゃんと分かったうえで素材の調達を行えばこういうことは起こらないのに、多分、それができていないからこうなっているのかなと思ったんですよね。

問題はもちろん、ダイヤモンドだけではありませんでした。

問題がすごく複雑なので、例えばマリ共和国では、すごく小さな金の鉱山が無数にあって、子どもが働いていて、で、そこで採掘した金って、国内の中間業者が買い取って、いろんなところから集められた金と一緒になって、いろんなところに販売されるわけですが、いろんなところから一緒になった金に、「これは児童労働が関わっています」とか分からないですよね。

それってすごく問題だなと思っていて。

世界各地の鉱山で貧困層が厳しい状況に置かれていることを知った白木夏子さんは、自分でブランドを立ち上げることを決意します。
しかし……

一般のジュエリーの会社がやらないことをやろうとしていたので、いろんな人にそれは止められましたね。
「そんなダイヤモンドの調達ができるわけがない」とか、「金の調達にしても鉱山まで辿れるようなものは一切ない」と言われて……

最初、やっぱり、日本って御徒町に宝石の卸問屋さんがいっぱいあるんですけど、そこに行って、一軒一軒、この宝石はどこの鉱山から来たんですか?とか、どこの人達が磨いているんですか?とか、その鉱山まで行けますか?とか、変な質問をしながら一軒一軒回って行ったんですけど、なんか、あいまいな答えしか返ってこないんですよ。
「多分インドとか」「研磨されているのはブラジルだけど、鉱山はどこか分からない」とか、国とかは分かる物はあっても、誰が運んで、どこから来てというのが分かる宝石がなかったんですよ。あったとしても、「じゃあ、私そこに行けますか?」と聞くと、「いや、それは無理」みたいな。

途方に暮れた白木さんを助けてくれたのは、国連や、青年海外協力隊で働く友人たちでした。
彼らの紹介で、カナダ、中米のベリーズ、アフリカのルワンダ、南米コロンビア。
様々な国との取り引きが始まりました。

これ、私が今つけているリングなんですけど、自分の婚約指輪として作ったものなんですが、このゴールドがコロンビアでとれているゴールドで、ジャングルの中で採掘をしているんですけど、そこに住んでいる人たち、少数民族の方もたくさんいるんですが、その人たちが児童労働もなく搾取されることもなく、そして環境も痛めないように配慮しながら採掘しているんですが、そこのゴールドを使って、で、ダイヤモンドに関してはカナダのものと、あとアフリカのナミビアのものを使っているんですが、現地の方たちが採掘をして研磨とカットをしてフェアトレードで輸入しているものなんです。

やっぱり指輪ひとつを見ても、「どこから来たのかな」というのが分かると、「小さな指輪の中に世界があるんだな」っていうことを感じることができるので、「これが世界の人たちの笑顔につながっていると思うと、すごくワクワクするな」って。

白木夏子さんの左手。薬指。
エシカル・ジュエリーのリングがやさしく輝いていました。