今週は、『東京蚤の市』『パンフェス』『もみじ市』など人気のイベントを手がける手紙社のHidden Story。
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京王線のつつじヶ丘駅から歩いて10分ほど。昭和40年代にできた団地のなかに、カフェと古本と雑誌のお店があります。
そこは、手紙社の運営するお店。
今月上旬、その店内で、手紙社の北島勲さんにお話をうかがいました。
まずは、イベントを手がけるようになったきっかけについて。
2006年の、ちょうど6年前の11月上旬に『もみじ市』というイベントをやったんですけど、それは自分たちが好きな作り手さんですよね、陶芸家さんですとか、写真家さんですとか、いろんなジャンルの作り手さんを集めて、2日間のイベントをやったんですけど、それが最初ですね。
そのときは、僕は出版社の社員として、『自給自足』という雑誌と『カメラ日和』という雑誌の両方、編集長をやっていたんですが、その雑誌で出会った作り手の方が多かったんですけど、やっぱり2誌、編集長をやってて、かなり忙しかったんですね。
で、まあ、雑誌の仕事って案外作ってはみたものの「どういう反応があるのか」というのは結構分からなくて、そのときに何かやりたかったんでしょうね。手応えのある、雑誌以外のものをやりたかったと思うんですけど、それで「自分たちのまわりにいる作り手さんたちを集めて、お祭りをやったら楽しいんじゃないかな」と思って始めたのが最初のきっかけですね。
当時、3人のメンバーで企画したイベントが『もみじ市』。
調布市にある、一軒家のギャラリーでの開催でした。
その後、春は『花市』、秋に『もみじ市』。
さまざまなジャンルの作り手さんとのイベントが続きました。
そして、北島さんは2008年に「手紙社」を設立し、独立。
手紙社は、僕も編集者だったので、当初は本の編集をやるチームとして立ち上げたんですよね。
たまたまパートナーが同じ雑誌の編集者だったので、ふたりで「本づくりをしていこう」という想いで立ち上げたんですけど、で、2009年にですね、今の調布市のつつじヶ丘にあるカフェを立ち上げることにしまして、で まぁ、自分たちのそういうカフェという場所を持ったことによって、やはりいろいろな発信をできるようになったので、カフェを使ったイベントも増えてきましたし、自分たちがやりたいこと、表現するという部分では、本じゃなくても全然いいなと途中から思いだして。
去年は、味の素スタジアムで『カフェ&ミュージック・フェスティバル』、さらに……
今年の5月にですね、『東京蚤の市』というイベントを初めて開催しました。
今、カフェ「手紙舎」でもですね、これ、小学校から譲り受けた技術室にあったテーブルなんですけど、自分たちも古道具とか古家具、古雑貨が好きなんですね。で、カフェフェスがカフェに特化したイベントであるのなら、古道具とか古本に特化したイベントがあってもいいよね、ということで……
よくフランスでですね、週末ごとに蚤の市が行われていますが、自分たちもフランスに行ったときに、すごくおしゃれで、楽しくて、生活に溶け込んでいて、そういうものが「すごく、うらやましいな」と思っていたんですね。
「日本でもできないかな」というのを思っていたところがありまして、何年か前から考えていたことを、実現してみようかということで。
5月に開催された『東京蚤の市』。
このイベント。会場は、意外な場所です。
たまたま『京王閣』さんという競輪場なんですけど、かつては一大レジャー施設だった場所で、その頃の名残が、ちょっとレトロな雰囲気が残っているんですね。
大きな木がいっぱいあったり、遊園地みたいな雰囲気が残っていたり、そこを見た時に、これは『東京蚤の市』……古道具や古本を扱うイベントに「ぴったりなんじゃないかな」と思って。
やっぱり自分たちが好きなお店っていうのは、センスのいいお店を選ばせていただいて、そういうお店の方が持ち寄った古き良きものをディスプレイしただけで会場がものすごくいい雰囲気になって、途中でステージがあってライヴもおこなうんですけど、途中でミュージシャンの方に会場をパレードしてもらったりして。
1日目はモダンアイリッシュプロジェクト、2日目がニューオリンズのジャズをベースにしたハチャトリアン楽団。
古き良きものを愛でて、新しい命を吹き込む。
『東京蚤の市』には、そんな想いが込められていますが、手紙社の手がけるイベントにはどれも、そうした「ぬくもり」があります。
なかなか理由を説明するのは難しいんですけど、例えば、何十年前の使い古された椅子と、新しく売っている椅子が並んでいたときに、自分たちとしては、その古い椅子のほうに食指が動くというか、興味を持つというのがあるので、いろんな新しい商品っていうのが生まれている世の中ではありますけれど、時を経た物の魅力というのは、新しい商品にはない魅力が宿っていると思うんですよね。
いろんな使い手の人の手を経て、自分のところにやってくれる物語性みたいなものも味わえると思うので、そうしたこともみなさんに楽しんでもらえたらいいなと思うんですけど。
ちなみに、どのイベントも会場の場所は、調布。
地元を愛する気持ちが、イベントにあたたかな色を加えています。