長野県の南部の飯田市。
南信州の要所となるこの地を流れる天竜川のほとりで、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。地元のフルーツを食べよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
右手に南アルプス、左手に中央アルプスがそびえる谷間にある飯田市は、江戸と京の都のほぼ真ん中に位置し、江戸時代から交通の要所として栄えてきました。そのため、人形劇や食文化などが、独自の形で培われ、地元文化に対する高い意識が現在に受け継がれています。諏訪湖から流れる天竜川流域には豊かな土地が広がっていて、一日の寒暖の差がとても大きい事から、甘みの成分が多いりんご、梨、桃、ぶどうなどの果物類で有名な飯田市。中でも「市田柿」という地元ブランドの「干し柿」は500年以上にわたって栽培されてきたこの土地の名産品。渋柿の渋味を丁寧な行程で甘く変身させていきます。秋の終わりには、盆地特有の朝晩の冷え込みが厳しさを増し、そこに天竜川から立ちのぼる霧が湿り気をもたらします。それなのでゆっくりと干し上がり、甘みが増すのです。農家の軒先に干し柿がつるされた「柿すだれ」は、まさに今のシーズンの風物詩といえるでしょう。
一般的にはいわゆる「ドライフルーツ」としてそのまま食べたり、お茶菓子などの材料になったりする「市田柿」。羊羹のようなねっとりした食感で、噛めば噛むほど甘みが増していき、食物繊維やビタミンも豊富に含まれています。朝食では濃厚なジャムにした「市田柿」や細かく割いたものをヨーグルトに入れていただきます。また和食の朝ご飯では、柚子の皮と一緒に大根のなますでヘルシーな一品としてどうぞ。
地元では元日の朝一番の食べ物に、歯を丈夫にし長寿を祈る「歯固め」という儀式として、この「市田柿」を食べるという特別な風習があります。