スペイン国土の丁度真ん中あたりの都市トレド。
旧市街にそびえ立つ、大聖堂の前で、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。地元のスープにしよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
今月は毎週、世界のスープをめぐる旅をお送りしています。
首都マドリードの南、70kmあまり。スペインの国土の真ん中にあるカスティーリャ=ラ・マンチャ州の中心となる都市がトレドです。古代から人々が生活を営み「町全体が博物館」と言われるほど、遺跡や、古い建造物、そして美術品が残っています。中世にはキリスト教をはじめ、イスラム教、ユダヤ教の文化がクロスオーバーしたことで、独特の雰囲気があって、旧市街の全域が世界遺産にも登録されているのがトレド。ルネサンス時代には画家のエル・グレコが住んだ街として知られています。
最近東京でもよく見かけるようになった「バル」。
仕事帰りに軽いおつまみと一緒にお酒を飲む日本の「バル」とは違い、本場スペインの「バル」は、朝早くから夜遅くまで一日中軽い食べ物と飲み物を出す場所。
起き抜けに、コーヒーとパンだけで済ます朝食の他、お昼までのあいだに、もう一度お腹を満たすために、スペインの人々は「バル」にやってきます。トレドでは、地元カスティーリャ地方の「ソパ・デ・アホ」、つまり「ニンニクスープ」というメニューがポピュラーです。ニンニクをたっぷりのオリーブオイルで炒めたフライパンに硬くなったフランスパンと、生ハムをちぎって入れ、水を足してひと煮立ちした後、塩と胡椒で味を整え、そこに溶き卵をまわしかけたらできあがり。
フランスパンが、にんにくと生ハムの「だし」を吸い込んで、しっとりと柔らかくなった食感がたまりません。スプーンでゆっくりとすくって、どうぞ。
風邪をひいたりして「体調がすぐれない」という時にはこの、熱々のスープが元気の源になるのです。