東日本大震災発生からまもなく2年。
今朝は、福島県いわき市から生まれた『モダンデザイン神棚』。
そこに込められた想いに迫ります。
一見しただけでは、それは神棚だとは思えません。
縦28センチ、横12センチ、厚さ4センチ弱の細長い箱。
でも、その箱の表面に刻まれているのは、伊勢神宮をモチーフにした模様。
そして、箱をあけると、そこにはお札を入れるスペースが現れます。
モダンデザイン神棚。
作ったのは、福島県いわき市の木工職人集団、moconocoです。
いわき市内の木工業者が有志で集まって何かをやろうというのは、震災前からやっていまして、そのグループ、木工業者ですとか材木屋ですとか、木にまつわる業者が集まっているものです。
取材にお答えいただいたのは、いわき市で大正時代から続く、正木屋材木店の取締役、大平祐子さん。
木工職人集団、moconocoの事務局も運営されています。
仮設住宅に、ちゃぶ台を届けるなか、「神棚を作ろう」という発想が生まれました。震災の後にmoconocoで集まって、その頃、みんな、仕事がどうなるか分からないし、ちょっと直すような仕事はあったんですけど、これからどうなるか分からないけど、自分たちにできることは、木工で何かできないかということで、ひとりが、「ちゃぶ台を仮設住宅に届けよう」ということで、それを仮設住宅に、家族の団らんの象徴的なものじゃないですか、それは折りたたみ式で簡単にしまえるので、狭い仮設でも使いやすいんじゃなかな?ということで。1,000台、仮設住宅に届けることができたんです。
一台一台、仮設に届けるなかで、すごく喜ばれたんですけど、「神棚とか仏壇とか位牌は持って来たけど、仏壇がない」というようなお話を聞いて、やっぱりそういうものも作れないかな?とまず思ったという事と、moconocoで、しばらく落ち着いてから、福島から何かを世に出して、「福島は頑張って生きているんだぞ」というのをアピールしたい、何かものを世に出したいというのがありまして。
で、メンバーの中から「神棚はどうか」っていう意見が出て、神棚を作ることにしました。
震災のときに、自分たちも、自然の猛威にやられた訳で、そういう祈りの場とか自然に感謝する場が神棚だと思うんですけど、「そういうのが、自分たちにも無かったな」という、そういうのって、日々の祈りだったり心のよりどころが欲しいね。という事で神棚になりました。
『モダンデザイン神棚』を手がけた、福島県いわき市の木工職人集団、moconoco。
大平祐子さんへのインタビューは続きます。
震災があるまでは、福島とか、いわきとか、それほどでもなかったんですけど、ああいう事があると、「ふるさとが、このままでは」という気持ちにはなりますよね。
「なんかしたいな」「できないかな?」って。うちの父、今、75で、もう60年くらい材木屋をやっていて、戦時中は材料統制で材木が売れなかった時期とか、色々あったみたいなんですけど、で、普段あまりしゃべらない父なんですけど、震災は今までの中では原発事故っていうのは、一番ひどいって言ってましたね。戦争も経験した中で。
売れなくても何とかなったけど、先が何とも言えないっていう部分ですかね?
あんまり普段そういうこと言わないので。でも、「ここで生きていくからには」っていうことですよね。
東京デザイナーズ・ウィークで知り合った、東京のデザイナー。水野憲司さんとの共同作業で出来上がった「神棚」。
moconocoは、これをきっかけに、世界を見据えたモノづくりを加速させたいと考えています。
最初に何かものを作ろうと思った時点で「世界を目指そう」という気持ちはあって、福島というのはネガティヴなイメージがついてしまった部分があるんですけど、ネガティヴだけど、それだけ知名度が上がったんなら、福島から良いものを出せば、あの、こう、ポジティヴに変換できるんじゃないかな?という気持ちがありました。
ただ、漠然とですけどね、はい。
今回、大平さんには、J-WAVEにお越しいただいてお話を伺いました。
取材の最後に、大平さんは、J-WAVEのエントランスに飾られた、オノヨーコさんがしたためた言葉、ジョン・レノン「イマジン」の一節を指差しました。そこには、ヨーコさんの直筆でこうあります。
「ひとりで見る夢はただの夢。みんなで一緒に見る夢は現実になる」
そして、一言、「大変だけど、みんなでやると楽しいですよ」
福島県いわき市の木工職人集団、moconoco。
今日も、力を合わせたモノづくりが続きます。
明後日、2013年3月10日(日)に、下北沢にある「ピリカタント書店」で開催されている『やびな市』というイベントで「モダンデザイン神棚」を見ることができるそうです。
実物を見てみたい!ですよね? このイベントでは、他にも、いわき市にゆかりのある品々が並ぶそうですので、お出かけになってみてはいかがでしょう?
『やびな市とうきょう』
場所:下北沢ピリカタント書店
日程:2013年3月1日(金)から3月10日(日)
時間:13:00から23:00
» やびな市