今週は、J-WAVEのMUSIC TIMELINEを彩ったアーティスト。
デスティニーズ・チャイルド、ケリー・ローランド、ブランディー、NAS、そして、ビヨンセ。
そうそうたるミュージシャン達のアート・ディレクションを担当する日本人、fukoさんのHidden Story。
東京の広告代理店に勤務していたfukoさんが、アメリカ、ニューヨークに渡ったのは、2002年1月のことでした。
fukoさんが決めていたのは「1年で仕事を見つけられなかったら日本に帰る」ということ。
語学を学びながら、fukoさんは、いわゆる「飛び込みで」売り込みを始めました。
悪戦苦闘の末、ニューヨークのレコード会社で仕事を得たfukoさん。
そこでもアピールを続けた結果、大きな仕事が舞い込みます。
ブルース・スプリングスティーンのベスト・アルバムのアートワーク。
ブルース・スプリングスティーンを知らなくて(笑)、誰このおじさんというイメージで……
でも、アメリカ人の友達とかすごく興奮してて、「すごいじゃん」とか、その時に「すごいんだ」と分かって。
実際ブルースとかも会ったんですけど、あんまり興奮もせず、よく知らなくって。でも、それが最初の仕事だったんですね。
大きなターニング・ポイントとなったのは、デスティニーズ・チャイルドのアルバム『#1’s』。
ここで評価を獲得したfukoさんは、ビヨンセのセカンド・ソロ・アルバム『B’day』のアート・ディレクションを1から担当することになりました。
コンセプトから、録音中のスタジオで、ビヨンセと打ち合わせをして、ちょっと、それは私も緊張しましたね。
その時は、「フォトグラファーのオプションをビヨンセに見せる」というミーティングだったんで、フォトグラファーのポートフォリオのブックを10冊くらい持って行ったのかな? 10冊くらい持ってスタジオに行って、ビヨンセと1時間くらい、1ページずつ写真を見て、どのフォトグラファーにするかをその場で決めましたね。
フォトグラファーが決まったら、次にやることはヘアメイクのディレクション。
彼女はあれ、50年代風のブリジッド・バルドーみたいなイメージにしたいと。昔のブリジッド・バルドーの写真集を買ったり、映画を観たりして、ブリジッド・バルドーのDVDを買って何度も観て「このシーンの、このポーズと、この雰囲気が良い」とか、「こういう色が良い」とか、ルックブックを作って進めていった感じですかね。
撮影は、ニューオリンズで行われました。
アルバム・ジャケットのHidden Story。
タイトルとビヨンセの名前のロゴは、どうやって決まったのか?
この文字は、1枚目の『Dangerously In Love』が、わりと無機質なテッキーな感じのアルバムだったので、最先端なイメージじゃないですか、今回はまったく逆にいきたいと。オーガニックという言葉をよく使っていたんですね。
で、たまたま、ブルックリンかどこかのレストランの看板がめちゃくちゃかわいくて、ああいう感じの看板のレストランがあったんですよ。
「こういう感じにしない?」と、最初のミーティングで言ったら、「あ、イイね。イイね」となって。
そして、もうひとつ。
ブックレットには、ビヨンセが2匹のワニをリーシュでつないでいる写真が掲載されています。
『B’day』につづく、ビヨンセのソロ・アルバム『I Am…. Sasha Fierce』。
このアート・ディレクションも、fukoさんが担当されました。
写真を撮影したのは、世界のトップ・フォトグラファー、ピーター・リンドバーグ。
「ステージにいるときがSashaで、普段のビヨンセはビヨンセ。その2面性を表すアルバムにしたい」
というコンセプトを伝えられたんですね。スタジオとビーチで撮影したんですけど、1日目が『Sasha』の撮影で、ニューヨークのスタジオで撮影したんですけど、突飛な衣装と、強いイメージで撮影しましたね。メイクもフューチャーリスティックな強い女風にして。
次の日がビーチで『I Am』のほうの撮影だったので、ナチュラルで、ほとんどノーメイクですね。このころまで、写真の加工がヘビーな時代だったんですよね、デジタルの。それがビヨンセは嫌で「出来るだけナチュラルに見せたい」というのをいつも言っていたので、ほとんどリタッチ作業とかせずに、素のままで。
アートディレクター、fukoさん。
ちなみに、最初は飛び込みで仕事を探していた頃、暗記していた英語は
「Everything happens first in New York(すべてはニューヨークで始まる)」
それから11年。
ニューヨークでほとばしる情熱は音楽に乗って、世界中に広がっていきます。
そして! fukoさんの新しいチャレンジ!
『HEAPS』という電子マガジンを、2013年6月3日に、創刊されました!
「ニューヨークのクリエイティブでインスパイリングな話を、電子マガジンならではの音や動きで見せて行く」というもの。
fukoさんが編集長兼アートディレクターを担当されています。
この『HEAPS』は、隔週で配信。 iPadまたは、iPad miniの無料アプリでご覧いただけます。
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