2013/7/19 機械式地下駐輪場「エコサイクル」のHidden Story

今週は、機械式地下駐輪場「エコサイクル」のHidden Story。

JR品川駅を出てすぐ、こうなん星の公園に薄いグリーンの小さな建物がいくつか建っています。
自転車に乗った人が、そこに近づき、自転車を閉じた扉の前に置きました。

すると、あっという間に自転車が中に吸い込まれました。
地下につくられた円筒形のスペースに、自動で運ばれたのです。

これが、機械式地下駐輪場「エコサイクル」。
この駐輪場を開発した、株式会社技研製作所、高知本社の池田敏夫さんに電話でお話を伺いました。

騒音を出さず、振動も起こさずに杭を打つことができる技術。
これを使って、杭を円の形に打ちこみます。
すると、グルっと丸い壁が出来上がるのです。
その中を掘って空洞を作り、そこを駐車場や駐輪場として利用する。
これが、技研製作所のアイディアでした。

では、素早く自転車を格納する仕組みはどうやって生まれたのでしょうか?

とにかく待ち時間が長いとイライラしますので、「速く入れて、速く出す」ということに一番のポイントを置いて機械は設計されています。

当社の駐輪場はですね、自転車を搬送するのに、前輪を掴んでちょっと持ち上げて、後輪はレールに沿って転がしながら搬送しているんですけど、実を言うと、自転車は自立しませんので「どうやって安定して搬送できるか」という事のアイディアですね、これを前輪を掴むというところに辿り着くには、ちょっと時間がかかりましたね。

もうひとつ、重視されたのは、安全面。

駐車場の場合だとですね「車が機械の中に乗り入れて、人が扉の外に出たら、扉が閉まって車を搬送する」という形で、機械の中に車と人が入っていくんですよね。 そうなると人の安全というのは難しくて、駐輪場だと、搬送する自転車自体が非常に小さいものですから、搬送装置のところまで人が自転車を持って行くと安全性の確保が難しい、ということで、扉のなかに人が入らずに自転車を預けられる構造を考えていて、中に人が入ったりしないような構造にしたりと、そこを工夫をしたのが大きいと思います。

98年、高知工科大学に設置されたのを皮切りに2001年には東京、世田谷区の成城。
ほかに東京では、三鷹、自由が丘、八王子。
さらに、香川県、和歌山県、大阪府。
エコサイクルは、各地に広がっていきました。

自動で格納され、もちろん、搬出も自動。
出てくるまでにかかる時間は、平均13秒。
この駐輪場について、利用者から寄せられる声について、技研製作所の池田敏夫さんはこう語ります。

よく、平置きの駐輪場を利用されている方は、その不便さをかなり体感して知っておられてですね、自分が預けようと思ってもなかなか空いているところがなくて、狭い通路を自転車を押して、回りの自転車を気にしながら、やっと目的のところに行っても、自転車を置くのにも、隣の自転車をちょっとよけたりとかやってまして、今度、帰ってきたときも、探すにもどこに置いたか忘れたり、やっと見つけても倒れていたり、隣りの自転車が邪魔だったりとか、かなり苦労されていると思うんですね。

それが機械で搬送してくれますので、かなり便利だという意見をいただきますね。

エコサイクル 一基あたり、収納できる自転車は、204台。
スタッフが取材にうかがった、品川駅前のこうなん星の公園には、五基の地下駐輪場「エコサイクル」がありました。 つまり、1,020台の自転車が地下に置かれているのです。
技研製作所、東京本社の矢野昌太郎さんにも、現場でお話を伺いました。

5基ありますので、入れる場所は特定しておりません。 今日は2号機、明日は3号機でも構いません。

で、場所を特定していないんで、順番順番で回転していきますので、かなり集中して入って来られても、まず並んでいるというところは見たことがないですね。

これが、2010年に完成しておりますけど、できる前はですね、ちょうど1,000台くらいの放置自転車がこの通り沿いにありましてですね、それが今は一台も見当たらないくらいキレイになっておりますので、放置自転車の対策として非常に効果があったと言われています。

騒音や振動を出さずに杭を打つ技術を応用して作られた地下駐輪場。
それは、放置自転車をなくし、安全な通行にも大きく貢献しました。
しかも、利用者にとって、非常に便利で快適なものだったのです。

その存在に、全国から熱い視線が送られています。

取材のなかで、技研製作所がおっしゃっていたのが「いい自転車を持っている人にとっては、盗難の恐れがないので、とても喜ばれています」、ということでした。 機械によって 地下に収納されるので、安全なんですね! これは確かに嬉しいかも。