今週は、アメリカのミュージカル、演劇のアウォード『トニー賞』を受賞した日本人、川名康浩さんのHidden Story。
シンディ・ローパーが音楽を手がけたブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』が栄冠に輝くまでの情熱物語。
2013年6月に発表された今年の『トニー賞』で、ベスト・ミュージカルに輝いた『キンキーブーツ』。
このプロデュ―スを手がけたのが、川名康浩さんです。
まずは、川名さんがニューヨークへ渡った理由から伺いました。
ブロードウェイに渡ったのは93年ですね。 日本では俳優をやってまして、ま、足をケガしたものあるんだけど、俳優だけでは満足できなくなって、プロデューサーになるためにブロードウェイに渡りました。本当に奇跡的な、猫の額ほどの地域に40軒の劇場があって、毎晩、およそ5万人の人がショーが楽しんでる。それもブロードウェイに上がってきたファーストクラスのショーばっかりのなかの競い合いがあるから本当にレベルが高いし、そこに才能も集まるんですね。
まあ、そういう場所は地球上にあそこしかないですね。
川名さんは、2007年、「リーガリー・ブロンド」でプロデューサー・デビュー。
そして、いくつかの作品を手がけたあと、ミュージカル『キンキーブーツ』の制作が始まりました。
最初にね、プリンシパルのプロデューサー、ダリル・ロスさんって人がいるんだけど、彼女がサンダンスで映画を見たときに、「この映画をミュージカルにしたい」という企画を立てたんですね。 そこの段階で、誰に演出家を頼もう、誰に楽曲を頼もう、誰に脚本を書いてもらおうって彼女も考えてる段階から僕も参加して。で、まずはリーダーを決めたんです、ジェリー・ミッチェルっていう演出家を。
彼の意向で、楽曲はシンディ・ローパーに書いて欲しい。脚本はハーヴェイ・ファイアスタインに書いてほしい。というのが決まっていったんです。
楽曲づくりをシンディ・ローパーに依頼した理由とは?
やはり、この作品がテーマとして持っているのは、「偏見」だったり、「アクセプタンス=受け入れることの重要性」だったり、その偏見もゲイに対する偏見っていうのも、すごく、この作品に込められているんで。 ゲイライツに関しても、シンディ・ローパーは、音楽シーンでもリーダーシップを立ってゲイパレードの先頭に立ってやってみたり、すごく彼女がエネルギーを注いでいたのも知っているし。 もちろん、彼女の作曲能力も高く評価したし。でも、彼女はブロードウェイの作品を書いたこともないし、そこで、「でも、その化学反応を試したい」というのがジェリーにもあったし……ま、彼女もニューヨークのクイーンズっていう地域の出身でね、小さいころ、お母さんがブロードウェイのアルバムを買ってくれて歌を覚えたり、たまにブロードウェイのショーも連れて行ってもらったり、彼女、ニューヨーカーだし、それで彼女は18でマンハッタンに出るわけだけど、そこから頑張ってスターになっていったんだけど、ずっとブロードウェイへの憧れは持ち続けていたんですよね。
ブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ』。
そのストーリーは……
4代続いている靴の工場の、4代目が家を継ぎたくなくて「自分はロンドンに出てマーケティングの仕事をしたい」と、ロンドンに出て行っちゃう。 で、ロンドンで新しい仕事を始めようとした矢先に電話が鳴って、それがお父さんの訃報なんですよね。お父さんが亡くなって工場に帰ってみたら、ふたを開けてみたら工場は赤字で火の車だったことが判明する。
で、それと同時に、ロンドンで、ドラッグクイーンが町で襲われているとこに出くわして、彼女を助けようと思ったら、彼女の振り回したブーツで頭を打って自分が倒れて、気がついたら彼女のドレッシングルーム、楽屋にいたと。
それで、彼女によくよく話を聞いたら「ブーツがすぐ壊れるの」と。
「私は男で女性ものを履いている」「これはあなたの体重を支えられるわけない」。それで、男性が履く、ドラッグクイーンが履くブーツを作ろうというアイディアが出てきて……っていう話なんですけどね。
2013年6月、トニー賞で、ベスト・ミュージカルに輝いた『キンキーブーツ』。
プロデューサーの川名康浩さんはこの作品について、こう語ります。
ブロードウェイ・ミュージカルだから、大衆性がなくちゃいけないんだけど、それと同時に、大切なメッセージ・テーマはそこに込められる。 この2つのバランスがあって、キンキーブーツって今回評価されたと思う。偏見もそうだし、偏見に潰されないアクセプタンス、「偏見が行われている、この世の中自体、自分が受け入れなきゃいけない」というメッセージも入っているし、「自分のマインドを変えれば、世界を変えることができる」というメッセージが入っている。
それは、大切なメッセージとして台詞にもなっているし、曲にもなっているんだけど……ブロードウェイは、世界中の観光客が、あそこでショーを観に来て、楽しんで帰る。
ただ、楽しんで帰ってもらうんじゃなくて、大切なメッセージをそれぞれの国に持ち帰ってもらって、「実は、ブロードウェイでこういうミュージカルを見て来たんだ。こういうこと大切だよね。あらためて思うんだよね。」っていう話が、どんどん伝わっていけば、僕は地球レベルで平和になると思うんですよ。
それをやっぱり、目指したいからね。
川名さんいわく、
「地球上に、奇跡的に存在する素敵な場所、ニューヨーク、ブロードウェイ」。
そこで上演されるミュージカルに込めた 大切なメッセージ。
それについて、異なる国の、異なる文化の、異なる人種の人々が、それぞれの国で話してほしい。
熱い想いとともに、今夜も劇場の幕が上がります。
もし、ニューヨークに旅行される方、いらっしゃいましたら、ぜひ!