兵庫県の明石市、明石駅の南口からすぐの商店街。
アーケードの真ん中で、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。 しっかりと食堂で食べよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
神戸市内から電車で20分あまり西にある「明石」。
瀬戸内海の明石海峡に面し、東に大阪湾、西には播磨灘があり、速い潮の流れと複雑な地形の近くにある漁港の街。 明石城が建築された江戸時代、城下町に魚市場ができ、「魚棚」という名前で今もなお市民に親しまれています。
主に沿岸漁業で獲れた新鮮な魚介類は、目の前の港で水揚げされ、それらは「前もの」と呼ばれ、活きの良さが売り物。
なかでも「明石の鯛」「明石の蛸」は地元のみならず関西圏の食卓では高級ブランドとして特別な扱いを受けています。
「魚棚」の商店街は、買い付けにやってくる料理人などで朝早くから賑わっていますが、そのピークが過ぎたあとに今度は一般の買い物客や観光客が訪れ、人通りは絶えません。
まな板ぐらいの大きさの板の上に並んだ、黄色くて丸い食べ物。
たこ焼きの原形ともいわれ、「明石焼」として全国的に知られますが、地元では「玉子焼」という名前で呼ばれています。
出来立てで熱い、黄色くて丸い「明石焼」を箸で持ち上げ、薄口醤油がベースのダシにつけて丸ごと頬張ると、ふんわりとしていて、口の中で溶けそうなくらい……噛みしめると歯ごたえのあるタコから「じわり」と広がります。
朝ごはんの定番メニューは、おやつ感覚の「明石焼」ではなく、大ぶりのお皿からはみ出しそうな「だし巻き玉子」です。
「明石焼」と同じく「沈粉」という種類の小麦粉を使うことで、魚からとった出し汁と玉子がうまく馴染むのです。
港に近い食堂では「明石の蛸」が入っているものもあり、これをメインに、小鉢、みそ汁、漬物がついた定食も人気です。
あたたかいゴハンとともに、どうぞ。
「魚棚」の商店街では、今年も年末年始の恒例行事として「大漁旗」が飾り付けられ、一年で最も華やかな季節です。