今週は、ソチ・オリンピック、スキー・ジャンプの日本代表、高梨沙羅選手を支えるトレーナー、牧野講平さんの Hidden Story。
現地時間2月11日、日本時間翌12日未明に行われるソチ・オリンピック、スキー・ジャンプの女子ノーマルヒル個人決勝。 金メダルの期待がかかる高梨沙羅選手を支えるチームのひとりが、牧野講平さんです。
牧野さんの所属は、森永製菓株式会社のウイダートレーニングラボ。
名刺には、「ヘッド・パフォーマンスコーチ」とあります。
スポーツする上で「体に負担がかからないのは、どういう動きなのか」とか、「力を発揮するのに、どういう体の使い方をすれば一番発揮できるのか」とか、そういうことを教える職業ですね。
そもそもスタートは、体力要素に着目したトレーニングコーチからスタートして、経験を積むうちに、体力だけではアスリートは指導できないということに、ここ6〜7年の間に気づいて、動きに着目して指導するようになって、「パフォーマンスコーチ」という名前は存在しないんですけど、我々が作ってですね……例えば、前田健太投手とか、太田雄貴選手だったり、高梨沙羅選手を担当しています。
牧野さんと高梨選手が出会ったのは、2012年の春。
海外遠征の帰りに寄っていただいて東京でお会いして、最初に相談されたのが、「長いシーズンを戦っていく上で、コンディションをいかにキープしていくのに苦労しています」というご相談だったので、本来ならばトレーナーがついてしっかりケアしてあげられればいいんですけど、そうもいかないので、自分でできるセルフのコンディショニングのエクササイズを指導していったのが最初です。
高梨沙羅選手と牧野コーチのトレーニングは、徐々に、競技の核心へと踏み込んでいきます。
シーズン半ばくらいになってきて、テレマークっていう姿勢がとれないがために、飛型点というポイントが稼げなくて、試合で1位になれない、というパターンが何度か続いたときに、「それを改善するために、何か陸上でできることはないですか?」というところがトレーニングの始まりで。
スキーのジャンプは、より遠くへ飛ぶだけでなく、着地も含めた「飛型点」もあわせたポイントで競います。
「テレマーク」という姿勢をとるために、試行錯誤が始まりました。
高梨選手が抱えていた、「着地のときにテレマークをしっかり入れる」という課題。
これを解決すべく、牧野さんは動きました。
自分が動作を教えるのを得意にしているので、テレマークの姿勢は「どういう姿勢が一番体に負担がないのか」とか、「どういう姿勢になれば一番力が出るんだろう」とか、そういうのを話し合いながら、「こうはできる?」とか「もうちょっと前に体重のっけられる?」とか、「今、足のうら、どこにのってる感じがする?」とか微妙なところを調整していきながら……
まずは形を作って、それでも最終的には「ジャンプで入るかどうか」というところが問題なので、去年の春くらいからは、
「どんなジャンプをしても、テレマークを入れる練習をしていこう」と、で、またフィードバックもらって……そういう繰り返しでつくっていきました。
陸上で着地の姿勢についてのトレーニングをし、今度はスキーをはいて 実際にジャンプをして確かめる。
繰り返すことが結果につながりました。
昨シーズンは、ワールドカップ16戦8勝で、個人総合優勝。
今シーズンは、ここまで、13戦10勝。世界ジュニアは史上初の3連覇。
その強さの秘密はどこにあるのか?牧野さんはこう考えています。
彼女の特徴的に、例えば体の動きにしても、一度覚えた動きを一年間通してずーっと続けるっていうのは難しいんです。
「疲れがたまってきて、体が動かなくなったり」というのがあるんですけど、彼女の武器だと思うんですけど、一度覚えた動きを忘れないでおく、そういう感覚が彼女の中にあって、僕らは再現性と呼んでいるんですが、再現する能力が抜群に高いですね。
トレーニングも、一度教えたことは、よほどのことがないと限り崩れない、というのはすごく感じてます。
僕もかなりトップアスリートを見てきますが、彼女くらいのレベルの選手というのはほんとに一握りだと思いますね。
パフォーマンスコーチ、牧野講平さんに最後にうかがいました。
高梨選手を支えているものとは?
ひとつは、「いいジャンプを飛びたい」という想いだと思うんです。
「いいジャンプを飛びたい」という想いだけで日々鍛錬できているんじゃないかなと思います。もうひとつは、やっぱり彼女はまだ17歳ですから、家族の支えがなければ当然、不安要素は大きくなってしまいます。
お兄さんがいるんですが、ご両親とお兄さんが、絶妙なキャラクターで彼女をサポートして、その関係が「すごく上手くいっているな」と僕は感じています。ディレクター:メダルのために高梨さんに必要なのはどういうことですか?
いつも通りやることだと思います。
いつも練習でやってることが本番で出来るかということと、あとは気象条件にあわせて、どういう風に調整するかだと思いますので、普段持っている実力をちゃんと発揮できれば、いちばん高いところにいけるんじゃないかと考えています。
身長152センチ。17歳の高梨沙羅選手。
さまざまな人の想いをのせ、ソチの空へと 飛び立ちます。