2014/3/14 JR東日本テクノハート TESSEI の Hidden Story

今週は、JR東日本の、東北、上越、山形、秋田、そして長野新幹線の清掃を手がける、JR東日本テクノハートTESSEIのHidden Story。


JR東京駅。
ホームに長野新幹線のあさまが滑り込みます。
新幹線は、東京で折り返して、ふたたび長野へ向かいます。

到着から出発までの時間は10分と少し。
その間に車内の清掃が行われるのですが、乗客が降りるのに2分、乗るのに3分かかるので残された時間は7分ほど。 その作業に取り組むのが、「新幹線お掃除の天使たち」と呼ばれるチームです。

吉田和子:まず、最初私はパートで入ったんですね。
その時は7分間の清掃で「できるかな?」という不安で。
でも、チームで作業をしますので、だんだん慣れてきました。

滝沢なつき:私も一緒で最初はこの仕事できるかなという不安のもとに、自信がつくまで1年くらいかかりました。

そう語るのは、吉田和子さんと滝沢なつきさん。
お仕事のあと、赤いユニフォーム姿でお答えいただきました。

全部で840人、という こうしたスタッフのみなさんをまとめているのが、JR東日本テクノハートTESSEI、おもてなし創造部の部長、矢部輝夫さんです。

東京の場合は1チーム22名です。 それが11チームあります。
だから新幹線のホームだっけで250人が働いています。

私どもJR東日本の新幹線、クリーニングしているのは1日平均120本です。
だいたい1チームがですね、お掃除するのは20本くらい。 座席数、1日に12万座席です。
全部テーブルふくんですよ。転換して。
年間5,000万座席くらいになるでしょう。

クレームがどのくらいか?
年間5件くらいです。

年間およそ5000万座席を手がけて、クレームはわずか5件。
しかも、わずか7分間で、ごみをとり、座席の方向転換をし、テーブルをふき、さらに トイレの清掃も行います。
今や、日本国内だけではく、世界からも取材や視察が相次ぐこの会社。
素晴らしい仕事ができるようになった理由は、意識改革に成功したこと。

私が来たのは8年前なんですけど、8年前に来た時に、今までね、私たちの仕事は清掃業だと思っていたんですよね。

でもね、よくよく考えてみたらサービス業なんだよね。で、何が商品かと思ったら、昔は清掃業だと思っていたから、おそうじだと思っていたんです。 でも、新幹線のホームに清掃を買いに来る人はいないでしょ? そしたら、何が商品なのかな、で、何を商品に決めたかというと、「思い出」に決めたんです。

多くのお客様との出会いがあるでしょ。 250人もいるわけですから。
JR東日本の新幹線、1日にだいたい13万人がご利用になる。 東京駅だけで。

そういう人たちとの出会いがある。
旅の思い出、私たちとの出会いの思い出をおみやげとしてお持ち帰りいただこう、ということにしたんです。

スタッフをまとめるJR東日本テクノハートTESSEIの矢部輝夫さんが大事にしたのは、働く人の心でした。

まず最初やったのは、コメント・スーパーバイザーというチームを作ったんです。
それは、お掃除をしながら、お客様をどんどん、どんどんサポートするチーム。

で、やってるうちに新聞の記事にしてくれたりね。
そしたら、みんなその気になるわけ。

そのあと制服を代えたんです。
それまでは、お掃除のおじちゃん・おばちゃんだなという感じだった。
じゃあ制服を代えようと。
今着ている真っ赤なブルゾン、それに代えたんです。

今まで、たとえば、制服を見て、「お掃除のおばんさんだから、分からないわね」と行かれたのが、どんどん聞かれてきた。

「山の手線はどこですか?」「お手洗いはどこですか?」あらゆる事をやってきたわけですね。
ひとつの方法としては、アロハだよね。 それも社員の提案だよね。


ある時はアロハシャツで、また、ある時は浴衣で。
アイディアを口にしやすい環境が、チームを活性化しました。

その成果のひとつ。
スタッフからの意見が、「ベビー休憩室」を生みました。

ベビー休憩室の話はね、コメント・スーパーバイザーという人たちがね、「すいません、お乳をあげたいんだけど、授乳室ありませんか?」と本当に結構、聞かれたそうなんですね。

中にはね、若いお母さんがお手洗いに行きたいと。
多機能トイレ、ベビーを置くところの、ありませんか?ありませんと。
私がだっこしていてあげるから、その間に行ってきてください、というようなことをやっていたんですね。

じゃあ、JR東日本と議論をする場をつくろうとしていたんでね、その場に連れて行って話してもらったんです。
そしたら、JR東日本が、「それは作りましょう」となって、作ってもらった。

JR東日本の人たちが、新幹線のホームに何人いるか。 10何人しかいないでしょ。
私たちのスタッフは250人いますから、お客様が困っていることとか、こうだったら良いなと思っていること、それを聞いたら、どんどんJR東日本に伝えていこうということですね。

乗客のすぐそばにいるから、困っていることがよく分かる。
そこには まさに「おもてなし」の心がありました。

吉田:お客様にきれいな車両を提供して喜んでいただくのが一番のやりがいです。

滝沢:じっとご覧になってる方もいらっしゃって、出た時に、「早くてすごいですね」とか言われるので、一生懸命やって良かったなと感じます。

到着から10分と少し。新幹線は ふたたび旅人をのせて出発しました。


およそ7分で、すべてのテーブルをふいて、席の方向を変えて、トイレ清掃も完了させる。
その素早い仕事の秘密は、スタッフのみなさん「1人1人の意識の高さ」だったんですね。

「思い出を持って帰ってもらおう」と意識が変わったことでサービスが一段と向上した、というお話がありました。

車内の準備が終わったあと、列車の前に整列して一礼されるんですが、最近は、その際に拍手が起こる事もあるそうです。
新幹線ご利用の際、その仕事ぶり、注目してみてください!